【Norichika Horie】音楽を通して描く「死のある薄暗い風景」
今日は、The Cureのクラブイベント、『The Cure Night』で知り合った堀江さんの音楽をご紹介します。
「The Cure好きな方に、聴いて欲しい」とのことですので、キュアー好きな方は見て行ってくださいませ。
◆堀江さんは東大教授兼ミュージシャン
堀江 宗正(ほりえ のりちか、1969年- )は、日本の宗教学者、東京大学教授。専攻は、死生学、スピリチュアリティ研究、田中正造研究、宗教心理学など。
◆「キュアー好きの方に」とお薦めしていただいた1曲
Nightmare
「キュアー好きの方に」という形で教えてもらった曲だったので
「どのあたりがだろう?」と思いながら聴いたとき、
一番納得したのがギターリフの薄暗さ、重さと湿度のある存在感でした。
ギターの音作りに興味がある方はきっと刺さるのではないかなと思います。
ギターリフの音をランプの明かりにして、真っ暗な森の中を歩いている時のような曲だなあというのが、個人的な感想です。
Ah, you will never say hello
Because you’re here to bid farewell
Give me a kiss and let me take you away
You only need to be alone for a certain time
ああ、君はハローと言ってはくれないだろう
別れを告げる必要があってここにきたのだから
僕にキスをして、僕が君を連れ去るのを許してくれたら
君はしばらくの間ひとりになる必要があるだけ
The night owl you saw flew off the tree
The nightmare you had flew off the shelf
Time after time you will learn to be alone
Life after life you will learn to be on your own for ever and ever
夜のフクロウは木から飛び去った
君が見た悪夢は飛ぶように棚から消えた
時を重ねるうちに、ひとりでいることを学ぶのだろう
生を重ねるうちに、永遠に永遠にひとりぼっちでいることを学ぶのだろう
歌詞の目線や、モチーフへの角度もロバートスミスさんのよくやる
印象と感情を中央において、具体的なエピソードの言及はしない詩作と
共通項があるような気がします。
◆アルバム『Life After Life』より
① Summon Your Ghost
Why don’t you summon it up?
Why don’t you summon your ghost inside?
If you try, it comes up
なぜそれを召喚しない?
なぜお前の内なるゴーストを召喚しない?
やってみろよ、出てくるぞ
歌詞を読まずに聴いてたら、こういう内容の曲だと思い至らなかったと思います。
淡々としたメロディーと曲世界なので、詞を見た時に意外に感じた印象が残っています。
私の中の「ghost」、呼び出せるとしたら何が出てくるんだろうと発想させてもらえて楽しく聴けました。
② Satisfaction
You will take your way
Coming back soon totally mad
Turn your face into another side
You slip away into a crowd
And gain control before they know
Strike out some fairy sparks of life
君はわがままにやろうとするが、
どうせ怒り狂って戻ってくる
顔をもう一方に転じよ
群衆の中に滑り込み、
人々が気づく前に主導権を握れ
きらめく生の火花を散らして
Your satisfaction continues on
As long as your life goes on
It dominates you
君の満足は続く
生きている限り
それが君を支配する
命令口調の二人称の歌詞って、あまり出会わないので新鮮です。
曲そのものは、シンプルな内容の詞に対して
緩急や表情が多く付けられていて
面白いなと思って聴かせていただきました。
メッセージの形にすると、メッセージとしては明確になる半面で
「歌っている人が何を考えているのか」が
見えにくくなるかもしれないなとも思いました。
遠いところを見て、演奏をしているような曲というのが個人的な印象です。
③ Lyre
Lyre, I play the lyre
It’s made of my iron tears
Lyre, I play the lyre
It blows off your iron fears
リラ、リラの竪琴を私は弾く
それは私の鉄の涙でできている
リラ、リラの竪琴を私は弾く
それはあなたの鉄の涙をはじく
「リラ」を「ラ・イラ」と歌うところの意外性がとても新鮮でした。
Do you wonder if you’re gonna see a wonder?
Knowledge from blindness, glory from darkness
Do you wanna see a ladybird of wonder?
Life-giving sadness
Believe it or not, it’s a sign of the times
あなたは自分が不思議なものを見るのか疑っている?
知は瞑目から、栄光は無明から
あなたは不思議なテントウムシ(恋人)を見たい?
生を与える悲しみ
信じようと信じまいと、それは時の兆し
上記のフレーズの緩急、メロディーふくめ、めちゃくちゃ良かったです。
④ Nightmare
最初に貼った曲です。
1曲だけで聴くのと、別の曲と合わせて聴くのとで、印象が変わるなと思います。
⑤ Another Mourning
He never sold his time
As we lose our time in time
Who knows he’s a sanctuary in my lifetime?
彼は時勢に迎合しなかった
私たちが時間通りに時間を無にするのに
私の人生のなかで彼が聖域だと誰が知る?
生き方と、他人の「死」がテーマなのかなと思います。
薄曇りの景色というような音像風景です。
タイトルの「mourning」は「追悼」ですが、
Another mourning とすることで、morning(朝)と
掛けてあるのかなとも思いました。
⑥ This is the Memory.
タイトなリズムが秒針の様に在り、
歌詞の中の「戻ろう」「来る」「列車」という時間経過の現在性を
補強しているように思えました。
I know you disappeared in cosmic rays
I thought you were tired of the love parade
But you dived into the cold river to save
A girl drowning in outer space
I don’t know why you did so
あなたは宇宙線のなかで姿を消したはずだ
ラブ・パレードに飽きたのだろうと思った
でもあなたは冷たい川に飛び込んでいた
外宇宙で溺れている女の子を救うために
あなたがなぜそうしたのか分からない
ここ、銀河鉄道の夜のカンパネルラですね。
その前の部分にも「going across the Milky Way(銀河鉄道)」とあり
死への旅を描く宮沢賢治の作品をモチーフに、音楽化したのかなと思います。
◆
アルバム全体を通じて、冷ややかな「死」が視界に入り
「死」と対比されることでの、現在の「生」が浮き彫りになる点が
特筆かなと思いました。
音作りの点でキュアーと共通点はあると思うのですが
音楽を通して描く風景の薄曇り感は
どちらかというと、個人的にはバウハウスを想起しました。
思い出したのはこのあたり。
◆堀江さんの活動
ミュージシャンであり、死生学の学術研究者であり、本も書かれています。
