67『夏昼や 嘘と約束 男の美学』僕の座右の迷
真夏の昼下がり、ぼんやり高校野球を観ている時、昔の自分を思い出していた。
「嘘はつくけど、約束は守る」
若い頃、テレビの向こうで誰かが言っていたその言葉が、今も胸に居座り続けている。64歳になった今でも、俺はその流儀を捨てていない。乗らない飲みの誘いは「用事がある」と嘘をついて逃げるが、一度「行く」と決めた約束は絶対だ。時間通りに足を運ぶ。
結局のところ、信用なんてものはそういう愚直な積み重ねでしか作れない。一番いけないのは、時間へのルーズさと土壇場のキャンセルだ。遅れる奴、飛ばす奴というのはいつも決まっていて、気がつけば静かに人が離れていく。
酒場の与太話ついでに言えば、聞かれてもいない余計な手札は見せないのが野暮を避けるコツである。昔、野球好きの女にこんな殺し文句を口にしたことがある。「いい男が見つかるまでの間、俺とリリーフで付き合わないか」。そんなふざけた球でも、思いのほか心地よくバットを振ってくれる娘がいたものだ。
逆に僕はワンバンでもフルスイングして、ボランティアのマサと呼ばれていた。
蝉の声を遠くに聞きながら、冷めたお茶を飲み干す。まあ、男のくだらない昔話と言われれば、それまでなんだがね。
知らんけど
