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【感想】TBS金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』第1話

生方美久の脚本

冬ドラマ『嘘が嘘で嘘は嘘だ』から短いスパンで早くも届いた生方美久の新作『Tシャツが乾くまで』

正直このドラマは過去作ほど話題にならなかった気がするが、嘘や不倫といったモチーフは『Tシャツが乾くまで』にも受け継がれており本作を語る上では避けて通れない。
特に「(元)夫を信じる」というラストはテーマ的にも通じてきそうだ。

亡くなったあの人は何を考えていたのか?というミステリー構造は『海のはじまり』と共通しているし、主要登場人物が4人というクアトロ主演に近い作劇は『いちばんすきな花』を彷彿とさせる。

さらにコインランドリーでの「椅子に座って話す男女2人のワンシチュエーション会話劇」は映画『アット・ザ・ベンチ』に通じる。

109シネマズ二子玉川のトークショー付き上映に行ったなぁ。

さて、実は『Tシャツが乾くまで』のストーリーそれ自体には既視感がある。
西川美和監督の『永い言い訳』と加藤拓也監督の『ほつれる』だ。

特に前者はバス事故で亡くなるという設定までそっくり。
ただ、個人的には不倫された側が残される+今後の対立構図を予感させる不穏さという点で『ほつれる』の変則発展型と受け止めた。

台詞に関しては、フィルターのくだりは個人的にはやや狙いすぎな気もするが、坂元裕二の影響下にある脚本家の書いた台詞と考えれば納得は行く。
まぁそれでもやっぱり狙いすぎとは思うのだけどw

土井裕泰の演出

第1話の演出を務めたのは『花束みたいな恋をした』や『片思い世界』で知られる土井裕泰監督

坂元裕二や野木亜紀子とのタッグの印象が強い人である。

第1話では手前と奥に人・物を配置して奥行きを生み出す立体的な画面設計が多用されていた。
これは非常に映画的な演出なので(よく日本のテレビドラマに対する批判で「画面設計が平面的すぎる」「照明を均一的に当てすぎる」というのがある)土井監督が映画を撮ってきた経験が活かされていると感じた。
とにかく画面内にレイヤーが重ねられている。
民放でここまでやるのはフジの西谷弘監督ぐらいか。

ちなみに先述の『ほつれる』では加藤拓也監督はスタンダード画角という飛び道具を使っていたが、さすがにGP帯の地上波連ドラでアスペクト比を変えるのは厳しかったのかな。

第1話ではその手前と奥の構図を活かしたピント送り※も多用されていた。
※画面の奥(または手前)にいる人物にピントが当たっているが、手前(または奥)にいる人物はピンぼけしている撮影

これが夫婦に対して適用されている場面は文字通り「2人の気持ちのピントが合っていない」ことを映像的に示唆している。
(それ自体は映像作品でよく使われる手法である)
序盤の、咲子(蒼井優)が夜遅くに帰宅するシーンでは充(松山ケンイチ)に抱きしめられるタイミングで2人にピントが合うのに対し、それに続く樹生(中島歩)の帰宅シーンではあずさ(夏帆)がずっとピンぼけなのは象徴的だ。

その後も何かに引っかかっている様子の樹生(中島歩)のピントはずっと咲子(蒼井優)と合わない。
終盤の2人でキッチンに並んで洗い物をするシーンでも手前の咲子(蒼井優)はずっとピンぼけだ。

そしてラストで脚本上は決定的な亀裂が2人の間に入った。
映像的に2人のピントが揃う日は来るのか?はたまた来ないのか?
第2話以降に注目したい。

おまけ

劇中に出てきた古本屋の古書上々堂は今泉力哉監督が書いた脚本を城定秀夫監督が撮った『愛なのに』にも出てきた古本屋

三鷹にあるらしい。