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緑と縁の京都

久しぶりに京都を訪ねた。

学生時代を過ごした街。映画「嘘八百 京町ロワイヤル 」ドラマ「ミヤコが京都にやって来た!」(全6話 朝日放送)の舞台でもある。


6年ぶりの夏の京都

「嘘八百」(2018)第2弾「嘘八百 京町ロワイヤル」(2020)はクライマックスの茶会が梅の季節。梅を狙って冬の終わりから春先の撮影だったと記憶している。

「ミヤコが京都にやって来た!」の舞台は紅葉から年明けにかけて。続く「ふたりの夏」編(全3話)は3年ぶりの祇園祭で幕が開いた。

ミヤコのシナハンで夏の京都を歩き回ったのは2020年。コロナ禍で旅行どころか遠出もままならなくなり、行動も気持ちも縮こまっていた頃。京都の空と鴨川の懐の大きさに迎えられ、息をつけた。

訪れるたびに京都は変わっている。なじみの店は看板が変わっている。建物ごと消えていることもある。同じところに留まってはいてくれない。それだけの歳月が流れたのだと感じる。

今回もまた。 

インバウンド人気が止まらない街には外国語の看板が増え、海外からの観光客を当てこんだメニューが躍っていた。

けれど、空と鴨川の大きさは変わっていない。いつもと同じように「お帰り」と言ってもらえた気がして、「ただいま」という気持ちになった。

6年前の8月の鴨川。

祇園祭の季節に幸利祭

今回の京都滞在は祇園祭の前祭と後祭の間の週末。

7月17日と24日の2度に分けての山鉾巡行は見られなかったが、後祭を控えた鉾とそれにカメラを向ける人々をあちこちで見られ、どこからか祇園囃子も聞こえてきて、祭りの端っこをつかまえることができた。

お目当ては祇園祭ではなく、膝枕リレーの第一走者、膝番号1番の藤本幸利さんが出演する都マンドリン楽団の演奏会。

音楽物語「朱雀門」の朗読で、都マンドリン楽団の演奏と共演。しかも「膝枕と月想(高橋郁子さん作)をあわせたような物語なんです」と藤本さんから聞き、これはつかまえなくてはと京都行きを決めたのだった。

祇園祭が神幸祭、還幸祭なら、こちらは「幸利祭」である。

京阪電車の声の人でもある藤本さん。「嘘八百 京町ロワイヤル 」にも出演している。

眩しい緑

コロナ禍に訪れた京都は閉塞感を破るような空と鴨川の青が記憶に刻まれたが、今回は都マンドリン楽団演奏会の案内チラシの色、鮮やかな緑が印象に残った。

くろ谷 金戒光明寺の蓮の緑。白い花が映えていた。

哲学の道の緑。

苔の間から顔を出す緑。

切り株に根を張って葉を広げる緑。

「ミヤコが京都にやって来た!」のロケ地にもなった水路閣のレンガから伸びる緑。

水路閣の上に生い茂り、木陰を作っていた緑。

通り過ぎた一瞬で心惹かれた鴨川沿いのお店は、川べりの緑の奥に白と緑のサンシェードが見えた。

カフェのような、雑貨屋のような。次回訪問のお楽しみ。

抹茶の緑

街を歩けば、右も左も抹茶尽くし。浅草でもそうだが、海外からのお客さんに抹茶が大人気らしい。

名前を目にするだけで学生時代が蘇る進々堂(今や京都のあちこちにある)で抹茶ミルクを飲んだ。

抹茶パフェの誘惑もあちこちのお店から。

京都に住む友人に案内されたのは、「種嘉商店」という最中屋さんの烏丸御池のお店。

小さなグラスにあんみつとアイスを詰めて最中の皮の帽子を載せたパフェ。おいしさが凝縮された完成度と良心的なお値段に心をつかまれ、2日続けて食べに行った。

種嘉商店は昭和22年創業の最中屋さん。烏丸御池にあるお店は6周年とのこと。

小さなお店の佇まいは品良く、店員さんは感じ良く、とても居心地が良かった。

壁にかけられたアンティークの温度計の「ク」がマジックで消されて「リ」に直されているのも味があった。

手書きの発注書を読み違えたのだろうか。「タケシ」膝枕の注文が「タワシ」膝枕になってしまったように。

都マンドリン楽団演奏会

お目当ての都マンドリン楽団演奏会にはフィンランド旅の蚤の市で買った緑のシャツを着て行った。

会場は北山駅近くにある京都コンサートホールのアンサンブルホールムラタ(小ホール)。大ホールでは前日に沖澤のどかさん指揮による京都市交響楽団 プロコフィエフの陣「弐」~交響曲全曲演奏会があった。

都マンドリン楽団は《「鈴木静一作品を深く掘り下げ、その魅力を誠実に表現すること」を理念として、一昨年、作品を愛する有志によって京都で結成》されたそう。

プログラムのすべての曲が鈴木静一作曲または編曲となっていた。

【第一部】
歌劇「仮面」序曲
ピエトロ・マスカーニ作曲
鈴木静一編曲

「亜麻色の髪の乙女」
クロード・ドビュッシー作曲
鈴木静一編曲

タイ舞曲「パゴダの舞姫」
鈴木静一作曲

【第二部】
狂詩曲「海」
鈴木静一作曲

音楽物語「朱雀門」(長谷雄卿草紙より)
鈴木静一作曲構成

都マンドリン楽団第2回演奏会プログラム

指揮は塩見正成さん。「亜麻色の髪の乙女」のみ、指揮は長森真二さん。長森さんは演奏もされていた。

藤本さんの出番は第二部。プログラムのトリ。

お目当てを待ちながらの演奏が期待以上に楽しかった。

こんなにたくさんのマンドリンを見たのは初めてだった。いちじくを半分に切ったような形のマンドリン。大小さまざま、木の色味も少しずつ違う。

舞台の左側にマンドリン、右側にギター。クラリネットやフルートの音色も加わるが、ほぼマンドリンとギターで表情豊かな演奏が繰り広げられる。

力強さと繊細さ。硬さと柔らかさ。緊張と和やかさ。演じ分けが巧みな役者のように、音の引き出しが次々と開けられる。隠し扉まである。

演奏している皆さんの表情もいい。団員募集の文言が「月一回の合奏練習を心待ちにしていただけるような仲間を募集しています」というのもとてもいい。

禁断の愛の物語「朱雀門」

いよいよ藤本幸利さんの出番。

指揮者のアイコンタクトがキューになり、演奏と朗読が合わさる。朗読の間も演奏はボリュームを絞って続いているが、藤本さんの声と張り合うように音を張り上げる場面もある。楽団の音量に埋もれず渡り合う藤本さんの声量が頼もしく誇らしい。

鈴木静一作曲構成。音と声のバランス、メリハリも計算されているのだろう。

「朱雀門」は「長谷雄卿草紙」という絵巻に収められている。平安京の朱雀門で怪しい男との双六勝負に勝って美女を得た(現代では何かとコンプライアンスに引っかかる設定)ものの、正体を表した男は鬼で、鬼との約束を破って美女との契りを交わしたために恐ろしい目に遭う。あと20日我慢できなかった男の結末。

今昔物語の一編を膨らませた高橋郁子さんの「月想」、取り扱い説明書の注意を守らなかった男が箱入り娘の不具合に懲らしめられる「膝枕」に通じる禁断の愛の物語だった。

膝枕erとわにダンサー

大きな拍手と大きな花束を贈られた藤本さんは、やり切った、いい顔をしていた。

良いものを見せてもらった。聴かせてもらった。

終演後、膝枕erさんたちと藤本さんを取り囲み、高揚感を分かち合った。

藤本さんが担当しているエフエムいたみの土曜朝の番組「サタデーハッピーモーニング」のファンの人たちも来ていた。

自分が出演したわけでもないのに、緊張したり達成感を味わったり。すっかり身内みたいになっていた。

藤本さんとの出会いは、clubhouseのルームだった。アメリカから日本に上陸したばかりで、覚えたてのゲームに夢中になるように、どのルームもオーディエンスのアイコンが何列も連なっていた。

わたしと藤本さんが一緒になったルームもそんな感じで、わたしと藤本さんの間には何十人かのアイコンが並んでいた。

「嘘八百の脚本の人だ」と藤本さんが気づいてくれ、確かルームの中で話しかけてくれ、つながった。

そのつながりがなかったら、2021年5月30日にnoteに公開した「膝枕」を翌日5月31日に「読みましょか」と読んでもらうことはなく、膝枕リレーは始まらなかったかもしれない。

そしたら、ここに集まっている膝枕erの皆さんとも出会えていないし、今日京都に来ていない。都マンドリン楽団の演奏にも出会えていなかった。

縁だなと思った。

膝枕erの多くは絵本「わにのだんす」のわにダンサー(絵本を読んだり、野次わにで盛り上げたり、わにわに言い合ったり、わにスタンプを送り合ったりする)も兼ねている。

わに膝枕erさんたちから色とりどりのお土産をいただいた。

おいしそうなもの。
良い香りのもの。
手書きの手紙。

わにもいただいた。

絵本「わにのだんす」で広めたい「金持ちより人持ち」の気持ちが輪になっている。

ホテルに帰って余韻を味わいながら、フィンランド旅をきっかけに旅に連れて行くようになった色鉛筆で、わにを描いた。緑と縁の京都旅の思い出。

「流しのMCフジモト」シリーズ

藤本幸利さんにあて書きした「流しのMCフジモト」シリーズ。実話をベースにしたりヒントにしたりした「トホホをワハハに」なアイタタコメディー。「朱雀門」の鬼気迫り情感あふれる朗読との落差を味わえる。

🎙️両手にキャバ嬢の巻
🎙️悩める脚本家をヨイショするの巻
🎙️政治に巻き込まれるの巻
🎙️脚本家と膝枕するの巻
🎙️怒った木になるの巻
🎙️インフルエンサーにスカウトされるの巻
🎙️脚本家とペヤングするの巻
🎙️ハト役をオファーされるの巻(7月29日公開)

✔︎絵つきで楽しめるTapNovel版

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脚本家・今井雅子📚言葉遊びが好きな物書き 目に留めていただき、ありがとうございます。わたしが物書きでいられるのは、面白がってくださる方々のおかげです。

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