【参加型note】夕暮れの教室、八月の花火(ハニハニさんver.)
『八月の花火』
放課後の教室。
部活へ向かう生徒たちの声が、
廊下の向こうへ少しずつ遠ざかっていく。
窓から吹く夏の風が、
カーテンをゆっくり揺らした。
「ねぇ」
机に座ったまま、彼が声をかける。
「ん?」
彼女は何気なく振り向いた。
「俺さぁ、
いつもバスケ部の仲間とつるんでるじゃん」
「うん」
「来週の花火大会の夜も、
あいつらに誘われたんだよ。
毎年あいつらと一緒に行ってたし」
「……うん」
少しだけ、間が空く。
「でも、今年は断った」
彼女は少し驚いたように目を丸くする。
「え? 珍しくない?」
「うん」
彼は照れくさそうに笑った。
「どうしても一緒に行きたい人がいて。
その人と二人きりで」
彼女の胸が、小さく跳ねる。
「俺さ、たぶん花火はあんまり見られないと思う」
「え?」
「浴衣を着て、花火に見とれてるその人の横顔を……ずっと見てたいから」
教室が、しんと静まり返る。
遠くで、
バスケットボールが床を叩く音だけが響いていた。
「……誰?」
彼女は笑って聞いた。
笑ったはずなのに、声は少しだけ震えていた。
彼は一歩だけ近づく。
「今こうして真っ正面で見つめるの、
すげぇ緊張する」
夕日が二人の間を、
鮮やかなオレンジ色に染めていく。
彼はまっすぐ彼女の瞳を見つめた。
「好きだから」
一瞬、時間が止まる。
彼女は目を見開いたまま、動けない。
やがて夕日よりも赤く頬を染め、小さく笑った。
「……ばか。」
少し照れたように目をそらし、
それから彼を見つめ返す。
「浴衣、花火の柄にしてあげる。」
その言葉だけで、返事は十分だった。
教室の外では、新しい夏がもう始まっていた。

(終わり)
この物語はハニハニさんと一緒に創作しました😊
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