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40代後半のおっさんが、人生で初めてドールを買った日

「ポイントカードをお作りしますか?」

店員さんの何気ない一言が、あの日の自分には妙に長く感じました。

(お願いだから早く終わって……。)

レジに並んでいた私は、40代後半の、おっさんサラリーマン。

手に持っていたのは、人生で初めてお迎えするドールでした。

周りのお客さんは、誰も私のことなんて見ていないはずなのに、「中年のおっさんがドールを買っている」と変態だと思われている気がして、恥ずかしくて仕方がありませんでした。

ところが、その数分後には、まったく逆の気持ちになっていたのです。


私は、ドールとは無縁の人生を送ってきました

子どもの頃からプラモデルは好きでした。

ガンプラも作りました。

実は、美少女フィギュアも集めていました。

でも、ドールだけは別世界でした。

「ドールは、大人の女性の趣味。」

「男が楽しむのはヘン、持っているだけで変態扱いされそう。」

そんな先入観を、何の疑いもなく持っていました。

だから、40代後半になるまで、ドールに興味を持ったことどころか、考えたことさえも一度もありませんでした。


一本のアニメが、私の人生を変えました

その作品は『シャーロット』でした。

Key の作品が好きで見始めたアニメでしたが、とても面白く、気が付けば毎週楽しみにしていました。

そして、メインヒロインの友利奈緒さんが大好きになりました。

ある日、その友利奈緒さんの 1/6キャラクタードールが発売されることを知ります。

発売元はAZONE。

写真を見た瞬間でした。

「えっ……。」

「なんだ、このかわいさは。」

それまで「ドールは別世界」と思っていた私が、初めて心を動かされた瞬間でした。

毎日、商品写真を眺めました。

「欲しい。」

でも、

「いやいや、ドールだぞ。」

そんな気持ちが何日も続きました。


勇気を出して、お店へ行きました

結局、私は買いに行きました。当時は東京で働いていましたので、とりあえず、帰り道にある秋葉原の AZONE レーベルショップ(LS)秋葉原へ。

LS秋葉原は、今にしてみれば、壁が白いだけのお店ですが、その時のおびおには、それがまるで白亜の御殿のように見えて、まるで、そこに住むお姫様を迎えに行くような気分でした。

なんとか、友利さんを見つけ、急ぎ足でレジへ。

問題はレジでした。

「ポイントカードをお作りしますか?」

「はい……。」

(お願いだから早く会計を終わらせて~。)

当時の私には、それくらい恥ずかしかったのです。

でも、不思議なことが起こりました。

会計を終えて、お店を出ると、手にはAZONEのロゴが入った手提げ袋。

さっきまで恥ずかしかったはずなのに、その袋を持って歩いている自分が、少し誇らしかったのです。

「ああ、お迎えしちゃった。」

そんなワクワクした気持ちの方が、恥ずかしさより大きくなっていました。


家に帰ると、もう一つの試練が待っていました

妻です。

「なんて言われるんだろう。」

それが一番心配でした。

ところが、反応は拍子抜けするほど普通でした。

「今度はお人形さんなの?」

それくらいです。

もともと私は、美少女フィギュアなどをいろいろ集めていたので、「また新しい趣味が増えた」くらいの感覚だったのでしょう。

私が一人で心配しすぎていただけでした。


箱を開けた瞬間、笑いました

箱を開けて、最初に思ったこと。

「えっ、なんだこの顔(驚)。」

髪の毛が輸送中に乱れないよう、透明フィルムでぐるぐる巻きになっていたのです。

なるほど、こうやって梱包されているのか。

そう納得しながらフィルムを外し、髪を整え、制服を直してあげました。

その瞬間です。

「……かわいい。」

写真以上でした。

本当に友利奈緒が目の前にいさんるような気がしました。

あの日の感動は、今でも忘れられません。


ドールは「着せ替えた瞬間」に趣味になりました

最初は、アニメと同じ制服姿で飾っていました。

もちろん、それだけでも十分かわいい。

でも、ある日、試しにフリルのたくさん付いた私好みの洋服を着せてみました。

その瞬間、

「うわっ!」

と声が出ました。

かわいさが何倍にもなったのです。

アニメのキャラクターだった友利さんが、自分だけの友利さんになった。

この体験が、私をドールの世界へ引き込みました。


気が付けば30体ほど、お迎えしていました

「あの一体だけ。」

そう思っていたはずなのに、気が付けば約30体。

人はよく、

「どうしてそんなに増えるの?」

と聞きます。

答えは簡単です。

一人ひとりに個性があるからです。

洋服も違う。

表情も違う。

似合う色も違う。

ドールは、人形というより、一緒に時間を過ごす趣味なのだと感じるようになりました。


秋葉原で、世界が変わりました

私の価値観が大きく変わった出来事があります。

秋葉原で、ドールを連れてレストランへ入った日のことです。

正直、とても緊張しました。

でも、店員さんはごく自然に席を用意してくださいました。

周りのお客さんも、誰も笑いません。

誰も変な目で見ません。

その時、私は気付きました。

「恥ずかしい」と思っていたのは、自分だけだったんだ。

好きな趣味を楽しんでいる人たちは、みんな堂々としていました。

その日から、私の世界は少し広くなりました。


模型店を始めて、昔の自分を見るようになりました

今、私は模型店を経営しています。

店頭ではドールも販売しています。

すると、とても面白いことに気付きました。

初めてドールをお迎えするお客様は、圧倒的に男性が多いのです。

ドールコーナーへ来て、

ガラスケースをのぞき込んで、

そのまま帰って、

また来る。

その姿を見るたびに、昔の自分を思い出します。

一方、通販をご利用くださるのは、すでにドールに慣れた女性のお客様が多い印象です。

店頭では「最初の一歩」を踏み出す男性、通販では「趣味として楽しんでいる女性」。

そんな違いを感じています。


あの日、勇気を出して本当に良かった

もし、あの日。

「恥ずかしいからやめよう。」

そう思っていたら。

私はドールの楽しさを知ることもありませんでした。

秋葉原で世界が広がることもありませんでした。

そして今、模型店でドールを扱うこともなかったかもしれません。

人生は、大きな決断だけで変わるわけではありません。

「あのドール、かわいいな。」

そう思って、一歩踏み出したことが、私の人生を少しずつ変えていきました。

だから、今この記事を読んでくださっている方へ、一つだけお伝えしたいことがあります。

他人からどう見られるかなんて、関係ありません。

好きなら、好きでいいんです。

好きなら、その「好き」を大切にしてください。

人の目を気にして諦めた趣味は、きっと後になって「あの時始めておけば良かった」と後悔します。

私は40代後半でドールを始めました。

だから断言できます。

趣味に、遅すぎるということはありません。

もし今、「ドールって気になるな」と思っているなら、それが始めどきです。

あの日、レジで「早く終わってくれ」と願っていた40代後半のおっさんは、今でもあの日の買い物を、人生で一番良い買い物の一つだったと思っています。

まつり堂模型店
750-0001 山口県下関市幸町1-9
☎ 083-292-7306
LINE https://lin.ee/58NT8ct
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 まつり堂模型店(山口県下関市)(@matsurido_model)さん / X

ふだんは、ドールのお買い物のお手伝いはメイドねろこさんが担当しますが、女性に相談するのは恥ずかしい、と思ったおじさまは、店長おびおに小さな声で「ドールお願いします」とだけ伝えていただければOKです。

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