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分析しているのに、答えは最初から決まっている。― MD研修の最終プレゼンで、私が気づいたこと

こんばんは。

今日は私の仕事の1つ、MD研修について書きたいと思います。

私の業務の1つとして、社内で新しくMD職に就いた社員に対して、MDの基本的なスキルを学んでもらう「MD基礎研修」を実施しています。
人事部主幹の公式社内研修ではありますが、カリキュラムや教える内容、スライド作成などはすべて私自身が考え、作成して参加者に講義しています。

この研修も今年で8年目となり、延べ参加人数は200人を超えました。
もちろん、その中には今でもブランドの最前線で売上をつくっているMDもいます。
ちなみに、私のいる会社には年間売上高が200億円を超える主力ブランドが4つありますが、現在そのすべてのチーフMD(ブランド内の商品部門を統括するMD)は、過去に私の研修に参加したメンバーです。
さらには、ブランド長になったものも数名います。
中には会社を去っていった人たちもたくさんいますが、こうして研修に参加してくれた人たちが、それぞれの場所で活躍しているのを見ると、とても嬉しく思います。

先日、今年度の研修も無事に最終回を迎えました。
最終回は毎年、私から大きな課題を出し、その内容をプレゼン形式で発表してもらう、という形にしています。今年は、とあるライフスタイル系ブランドのリブランディングを考えてもらいました。
今回も皆さん真剣に取り組んでくれて、とても良い内容のプレゼンが多かったのが印象的でした。

ただ、その発表を聞いていて、ある特徴的な傾向が見えてきました。
そして、それは私自身にとっても大きな気づきの1つでした。



皆さんなら、niko and…やLAKOLEのようなライフスタイルブランドのリブランディングプランを考えるとしたら、どんなことを想像しますか?

いずれもアパレルだけではなく、生活雑貨やグロッサリーまで扱っています。
店舗にはさまざまな商品が並び、「ここに来れば何か欲しいものが見つかる」という買い物の楽しさや安心感をつくり、多くの顧客を獲得しています。

ところが、いざ「リブランディング」となると、今回の研修ではある方向に答えが集中しました。

それは、

「ギフトの提案を強化する」

というものでした。

5チームに分かれて発表したのですが、なんと4チームが、ほぼこの方向性で攻めてきたのです。
もちろん、ギフトを強化すること自体が悪いわけではありません。
むしろ、アパレルブランドや雑貨業態にとっては非常に考えやすい施策です。
客単価や購買点数を上げようと考えれば、「ギフト需要を取り込む」という発想は自然に出てきます。

実際、国内のギフト市場は成長を続けています。
矢野経済研究所の調査によると、2025年の国内ギフト市場規模は11兆5,650億円、前年比103.4%とされています。
ただ、ここで私は少し気になりました。

「ギフト市場が伸びているから、ギフトを強化する」

本当に、それだけでブランドの成長につながるのでしょうか?



ギフト市場を少し深掘りしてみると、いろいろなことが見えてきます。
市場全体が成長しているといっても、フォーマルなギフトは減少傾向にある一方、誕生日などのカジュアルなギフトは増えている。ECでのギフト需要も伸びています。
また、企業の福利厚生やキャンペーン、自治体による子育て支援や移住者支援など、いわゆる「個人から個人へ贈るギフト」だけではない需要も含まれています。

つまり、「ギフト市場が伸びている」という大きな数字だけを見て、「だから自分たちもギフトを強化しよう」と考えるのは、少し危険です。

さらに、ギフトそのものにも難しさがあります。
相手の趣味嗜好を想像して商品を選ぶのはかなり難しいと皆さんも想像されると思います。
金額の相場感もありますし、選択を間違えると、場合によっては相手に失礼になってしまうこともある。
そこで「ギフトカタログ」というのが昨今のギフト市場では注目されています。

実際、ギフトカタログを扱っている取引先の方から話を聞く機会があったのですが、カタログギフトは、贈る側が相手の好みを想像して商品を選ぶ必要がなく、受け取る側も自分で好きなものを選べるため、贈る側と受け取る側のミスマッチを減らせるというメリットがあり、支持を受けているものと思われます。
「何を贈ればいいのか分からない」というギフト特有の難しさを、仕組みそのもので解消しているわけです。

また、今回のプレゼンでは、「プチギフト」や「友達ギフト」といった、もっと気軽なギフト提案も多く出てきました。
これは、ギフトを贈る際の難しさをある程度回避する方法です。

さらに多かったのが、「自分ギフト」です。
「頑張った自分へのご褒美」という考え方ですね。
普段は買わないような少し高価な化粧品を買ってみる。
いつもなら選ばない外国のビールを買ってみる。
こうした提案も、広い意味では「ギフト」として捉えることができます。

もちろん、これらも施策としては成立します。

問題は、なぜそれ(ギフト戦略)をやるのかということです。



今回の研修では、マーケティングの基本としてPEST分析、STP分析、KBF分析などを使ってマーケットを把握し、3C分析やSWOT分析を通じて自分たちの強みを明確にし、そこから新しいマーケティング戦略を考えてもらいました。

ところが、発表を聞いていると、

「最初に思いついた答えに向かって、分析を組み立てている」

ように見えるチームがいくつもありました。

つまり、

「生活雑貨のブランドなら、ギフトが伸びそうだ」
       ↓
「では、ギフト市場について調べよう」
       ↓
「ほら、ギフト市場は伸びている」
       ↓
「だから、ギフトを強化すべきだ」

という流れです。

これは、一見するときちんと分析しているように見えます。
でも実際には、分析によって答えを導き出したのではなく、

先に答えを決めて、その答えを裏付ける材料を探している。

ここが大きな違いです。
本人たちはもちろん、そんなことを意識しているわけではありません。
皆、真剣に考えています。

それでも、5チーム中4チームが似たような結論になった。
この時点で、リブランディングプランとしては、もう差別化が難しくなります。



そして、これは今回の研修だけの話ではないように思います。

昨年から実務でリブランディングを進めている他ブランドのプランや話を聞いていても、同じように「結論ありき」で資料がまとめられているように感じるケースがありました。
結果的に売上も期待していたほど伸びず、まだまだ改善が必要になっている状況です。

ここから、今回私自身が改めて感じたことがあります。

MDには、やっぱりマーケティング分析のスキルが必要です。

ただ、それだけでは足りない。
その前提として、

「ロジカルシンキング」

が必要なのではないか、ということです。

物事を冷静に、客観的に、そして俯瞰的に見る。
言葉にすると簡単ですが、実はかなり難しいことです。
私たちはどうしても、過去の経験や常識を無意識に持ち出してしまいます。

さらに、仕事では時間がありません。
早く結論を出さなければならない。

そうすると、「これまでこうだったから、今回もこうだろう」という、ある程度確度の高そうな結論を先に置き、そこに論理を合わせにいってしまう。

これって、実はかなり怖いことです。
なぜなら、本人は「ちゃんと分析した」と思っているからです。

でも、分析は「答えを探すためのもの」ではなく、本来は「自分がまだ気づいていない答えを見つけるためのもの」のはずです。
ブランドが売れなくなっていく原因は、もちろん市場環境や商品、価格、店舗、競合など、さまざまなところにあります。
ただ、その手前にある「考え方」そのものが、いつの間にか過去の成功体験や思い込みに縛られてしまっている。

そんなところにも、ブランドが停滞してしまう理由があるのかもしれません。

今回の研修で4チームが「ギフト」という同じ答えにたどり着いたことは、ある意味で失敗だったのかもしれません。
私にとっても、「分析を教えるだけでは足りない」ということに気づかせてもらった、非常に面白い研修になりました。

来年の研修では、マーケティング分析だけではなく、

「そもそも、その答えは本当に自分たちで導き出したものなのか?」

というところまで、もう一段踏み込んで考えてもらおうと思います。

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