見出し画像

1995年のバックパッカー#87 エジプト1 砂漠の朝、紅海、そしてエジプトよ。

ワディ・ラムの朝は穏やかに明けた。
昨日からの曇り空のため朝陽の歓迎はなく、赤い山々がゆったりと目覚めを迎え、僕たち2人には目もくれなかった。あっちが大き過ぎるのか、こっちが小さ過ぎるのか、同じ大地の上にあってもなんだかよそよそしかった。
送迎の車を待つ間、赤い砂漠をぶらぶら歩いて体を温めた。狭い寝床で硬くなった体をほぐしつつ、アラブの乾いて澄んだ空気を肺の奥へと流し込んだ。

ヤスエさんと僕との間には、幸いよそよそしさはなく、昨夜のすれ違いを避けようとするぎこちなさもなく、それもふまえつつ次のページがめくられていた。

9時半に到着したトヨタのピックアップトラックを運転していたのは、昨日のアトゥクではなく、サバと名乗る青年だった。僕たちは忘れられて砂漠に置き去りにされなかったことにひとまず安堵し、荷台に乗りこんだ。
屋根のない乗り物というのは、いい。それだけで立派なアトラクションだといつも感じる。車という現代のマシーンが、いにしえの乗り物であるのラクダや馬のように感じられて、先祖の旅をなぞっている気にさえなれる。そんなことをヤスエさんに伝えると、僕のことをじっと見て微笑んだだけで返事はなかった。

朝食はバス停脇にあるベドウィン・レストランでとった。屋外のテーブルでパンと紅茶と目玉焼きを食べた。
アカバへ戻るマイクロ・バスが出るまで、僕たちはその席でのんびりと過ごした。太陽の光は温かく、じんわりと体をほぐしていき、そのまま二人とも朝の二度寝となった。砂漠でぐっすりと眠ったつもりでいたが、慣れない砂の上では十分な休息は取れなかったのだろう。僕はヤスエさんの寝顔を一枚だけ撮影した。

ここから先は

4,558字 / 11画像

¥ 300

Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?