ハンブルク・ダービーを制したFCザンクトパウリとアレクサンダー・ブレシン監督の戦術
「14年ぶり」のダービー

8月29日、ドイツ第2の都市ハンブルクに位置するフォルクスパルクシュタディオンが沸いた。地元の強豪である2クラブ、ハンブルガーSVとFCザンクトパウリが、2011年2月17日以来、14年ぶりにブンデスリーガ1部で対戦したのだ。降格した2018年以来、7年ぶりに本拠地で迎える1部での試合に、ハンブルガーSVのサポーターは歓喜した。
ただ1部で通算17度目となった「ハンブルク・ダービー」が注目を集めたのは、クラブ間の歴史だけがきっかけではない。昨季昇格1年目のFCザンクトパウリを残留に導いた智将アレクサンダー・ブレシンと新進気鋭の若手指揮官メアリン・ポルツィンの両者とも3バックの使い手であり、どちらの戦術に軍配が上がるのかも注目されたのだ。

第2節 ハンブルガーSV vs FCザンクトパウリ
HSVのキーマン、ジョーダン・トルナリガ

両クラブとも「3‐4‐3」と形容したくなる布陣で試合に臨んだものの、仔細な部分に違いがあった。ハンブルガーSVは、アレクサンダー・レッシングやミロ・ミューハイムなどが連携し、左サイドを中心に縦パスからの崩しと素早い攻守の切り換えを重視するサッカーを披露。なかでも攻守における最大のキーマンがヘルタ・ベルリンのユース出身の左CB、ジョーダン・トルナリガだった。
トルナリガは、攻撃時に左のハーフスペースに流れてくるCFランスフォード・ケーニヒスドルファーに向けて縦パスを送る役割を担ったうえ、守備時には前線からのプレスに参加。空中戦や相手FW陣との1vs1を戦い抜くなど、八面六臂の活躍をみせた。ただあまりに多くの役割を担ったがゆえに、トルナリガはハンブルガーSVの「弱点」ともいえた。ブレシンはその「穴」を的確について見せる。
アレクサンダー・ブレシン監督の狙い

ハンブルガーSVは試合を通じて左サイドからの攻略を図ったが、トルナリガ以外が常に攻撃的に振る舞うため、逆にカウンター時に手薄になるというリスクも生じた。そこでブレッシンは、190cmの巨躯とスプリント能力を誇るアンドレアス・ウントンジを右サイドに配置し、トルナリガとの1vs1の盤面を作ることで、カウンターからの得点を狙った。実際、その狙いは的中する。
ウントンジは、右サイドもしくは右のハーフスペースへ流れると、後方からのロングパスをダネル・シナニへ落とす役割を担い、攻撃の起点となった。また2ボランチの一角のジェームズ・サンズが前進してインサイドハーフ化。試合開始直後のハンブルガーSVは強烈なプレッシングで何度かチャンスをつくったにも関わらず、次第に相手チームにボールを持たれるようになる。
FCザンクトパウリの2ゴール

ザンクトパウリが挙げた先制点は、まさにブレシン監督の狙い通りだった。17分20秒のシーン、ハーフライン付近にいた右CBハウケ・ヴァールからのロブパスに対し、ウントンジがトルナリガを引きつけてシナニをフリーにすることで、チャンスから右のコーナーキックを獲得。シナニの蹴ったショートコーナーに合わせたマティアス・ペレイラ・ラージが、ニアに強烈なグラウンダーのクロスを送り、左CBのアダム・ジュビガワが足で合わせて得点した。
FCザンクトパウリの2点目のシーンは、より明確にブレシン監督の思惑が的中した。前線から強烈なプレスをかけた右WBギオルギ・ゴチョレイシュヴィリが藤田譲瑠チマにあっさりと躱され、DFラインがボールを奪おうと前進した際に、裏のスペースをウントンジに突かれて失点したのだ。試合を通じてプレッシング・サッカーを展開したポルツィンの戦術を逆手に取ったのだ。
アレクサンダー・ブレシン監督の戦術

ブレシン監督が昨季から築きあげたFCザンクトパウリの戦術は、あまりに見事だ。ビルドアップの主軸はシュタイル・クラッチュ(Steil-Klatsch)で、後方からのロングパスに対して動き出し、1〜2本の短いパスをつないで前向きの選手を作り出すことを目標としている。ボールを失った際には、ゲーゲンプレスを掛けつつ後退。「5-2-3」の強固な守備ブロックを形成して、相手の攻撃を封じてしまうのだ。
攻防一体の戦術な上、上手く嵌れば相手を敵陣に押し込み続けることもできてしまう。実際に今回のハンブルク・ダービーでは、前半の15分以降、FCザンクトパウリの思惑通りの試合展開となった。完勝といっても差支えないだろう。今季のFCザンクトパウリは、ブンデスリーガで上位を争うチームにとっても無視できない存在となっている。彼らがどのような歩みを見せるのかに要注目だ。
読了していただき、ありがとうございます!
そのほかFCザンクトパウリに関するおすすめ記事はこちら

