🤖 使えば使うほど賢くなるAIエージェント「Hermes Agent」が、世界で一番使われるようになった話
朝起きたら、昨夜頼んでおいたリサーチが終わっていた。SlackにはAIがまとめたニュースが届いていた。3週間前に話した内容をさらっと踏まえた返答が来た。
これ、SF映画の話じゃない。今年の2月から実際にできるようになった話だ。
Hermes Agentは、PCやサーバーの上に常駐して24時間動き続けるAIだ。ChatGPTやClaudeとの一番の違いは、「会話が終わってもリセットされない」こと。使えば使うほど、あなたの仕事のやり方を学習して、賢くなっていく。
もう少し具体的に言うと、こんなことができる。
毎朝8時に指定テーマのニュースをまとめてSlackに送る
TelegramやDiscordで話しかけたら、前の会話を踏まえて返してくれる
コードのバグを調べておいて、起きたら調査結果を待っている状態にする
先週の打ち合わせの内容を覚えていて、「あの件どうなった?」が通じる
人間で例えるなら「指示だけ出せばあとは動いていてくれて、しかも月が経つほど仕事ぶりが上達するスタッフ」みたいなイメージだ。
Hermes Agentは「使えば使うほど賢くなる」AIエージェントだ。
🚀 3ヶ月で世界一になったオープンソースエージェント
Hermes Agentを作ったのは、Nous Research(ナスリサーチ)というニューヨーク拠点のAIスタートアップ。2026年2月25日にGitHubで公開した。
リリース直後のツイートはシンプルだった。
"Meet Hermes Agent, the open source agent that grows with you."
(Hermes Agentをご紹介します。これは、ユーザーと共に成長するオープンソースのエージェントです。)
最初の反応は「まあまあ」くらいだったらしい。でもそこからが早かった。
6週間で57,000スター。3ヶ月で140,000スターを突破。
比較対象として、OpenClawというエージェントがある(日本ではあまり知られていないが、海外のAI開発者コミュニティでは有名)。OpenClawが同時期に増やしていたのが週約3,000スター。Hermes Agentは週9,500スター。フォロワー数で言えばほぼ3倍のペースで伸びた。
そして2026年5月、OpenRouterの統計でHermes Agentは「世界で最も使われているAIエージェント」になった。
オープンソースで、無料で使えて、月$5〜15のVPSがあれば動く。それが世界一になった、というのがHermes Agentの物語だ。
🧠 なぜ「使うほど賢くなる」のか
ここが他のエージェントと決定的に違うところだ。
普通のAIエージェントは、タスクをこなしたらそれで終わり。「前回こうやって解決したよね」という記憶は残らない。毎回ゼロからスタートする。
Hermes Agentは違う。複雑なタスクを完了するたびに、その経験を「スキルファイル」として保存する。 次に似たようなタスクが来たとき、そのスキルを読み込んで取り組む。何度も繰り返すうちに、スキルは自律的に改善されていく。
人間で例えるなら、仕事のたびに「手順書」を書き続ける新入社員が、気づいたら社内で一番詳しいベテランになっている、みたいな感じ。
コミュニティの実例がある。r/LocalLLaMAというRedditのAIコミュニティで、あるユーザーが報告した。Hermesが2時間の作業中にスキルドキュメントを3つ自動生成し、その後の繰り返しリサーチタスクが40%速くなった、と。
別の人はこう書いていた。「3週間前に自分が話していた内容の、かなり細かいディテールをHermesがさらっと言い当てて、ちょっとゾッとした」と。
📦 記憶の仕組み:3つの層がある
Hermes Agentのメモリは3層構造になっている。技術的な話だけど、ここを理解するとHermesの「賢さ」の正体がわかるので、かんたんに説明する。
Layer 1:常時持ち歩く記憶
MEMORY.md(エージェントのメモ帳)とUSER.md(ユーザープロフィール)という2つのファイルがある。これが毎回の会話で最初から読み込まれる。
ここが面白いのは、容量に上限があること。MEMORY.mdは2,200文字、USER.mdは1,375文字まで。超えたら古い情報を整理するしかない。
一見制約に見えるけど、これが狙いだ。「全部覚えておく」じゃなく、「本当に重要なことだけ残す」という設計思想。記憶を絞り込む作業を通じて、エージェントはユーザーの仕事の本質を理解していく。
Layer 2:会話の長期アーカイブ
過去の全セッションがSQLiteというデータベースに保存されている。全文検索にも対応していて、「3週間前にこの件で話した内容」を引き出せる。
Layer 3:スキルメモリ
経験から学んだ「やり方」をMarkdownファイルとして永続保存する層。これが自己改善ループの核心。ここに蓄積されたスキルが、エージェントの能力そのものになっていく。
📱 どんな使い方ができるの?
ここをちゃんと書きたい。「すごそうだけど、自分には関係ない」と思わないでほしいから。
ケース① 毎朝のニュースまとめをSlackに送る
「AIとエージェントに関する最新ニュースをピックアップして、毎朝8時にSlackの#aiチャンネルに送って」という指示を一度出しておくだけ。あとは自動で動く。しかも毎日やるうちに、「このユーザーはAnthropicとOpenAIの比較記事を好む」というパターンを学んで、精度が上がっていく。
ケース② コードのレビューとデバッグを24時間対応
GitHubのIssueを監視して、バグ報告が来たらコードを読んで原因を調べ、解決策の候補をコメントで返す。開発者が起きたら既に調査済みの状態になっている。最初は時間がかかるかもしれないが、同じようなバグを何度も経験するうちに、診断のスキルが磨かれていく。
ケース③ 個人の秘書として使う
TelegramやDiscordと連携できる。「来週の会議の資料を読んで、論点を整理しておいて」「さっき送った契約書のリスクになりそうな条項を洗い出して」みたいな指示を、チャットで投げるだけ。しかも会話の文脈を覚えているから、「さっきの件」という曖昧な言い方でも通じる。
ケース④ ホームオートメーションのハブ
Home AssistantというスマートホームのOSSツールと連携できる。「ぼくが帰宅する30分前に暖房をつけて、到着したらリビングの照明を75%にして音楽をかけて」という設定を、コードなしで自然言語で構築できる。
💻 Hermes Desktopで、ターミナルなしでも使えるようになった
ここまでの話を聞いて「でもターミナルとか難しそう」と思った人もいるかもしれない。実際、Hermesはもともとコマンドラインで操作するツールだった。
でも2026年6月2日、状況が変わった。
Hermes Desktopがパブリックプレビューとして公開された。macOS、Windows、Linuxに対応したネイティブのデスクトップアプリだ。インストールするだけで、ターミナルなしでHermesが使える。
NVIDIA Jensen Huang(ジェンセン・フアン)のGTC基調講演でもデモされたほど、注目度は高い。
記憶もスキルも、CLIで使っていたものとまったく同じ。「ターミナルで始めて、デスクトップアプリに移行しても、文脈はそのまま引き継がれる」という設計になっている。UIが変わっても、Hermesの本質である「育てていく」体験は変わらない。
🔧 動かすのにいくらかかるの?
月額コストの話をしておこう。
インフラ(VPS):約750円/月(月$5のVPSで動く)
AIモデル:DeepSeekを使えば月$2〜3程度。ローカルのOllamaなら$0
つまり月1,000〜2,500円程度で、自分だけのAIエージェントが24時間稼働し続ける。
ChatGPT Plusが月3,000円、Claude Proが月3,000円。それと比べてもかなりコスパがいい。しかも使えば使うほど賢くなっていくので、投資対効果が時間とともに上がっていく、という珍しい性質を持っている。
インストールはコマンド1行。
curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/NousResearch/hermes-agent/main/scripts/install.sh | bash
必要なのはGitだけ。Pythonも Node.jsも、インストーラが自動でセットアップしてくれる。
🤔 Miccellの視点:「育てる」という設計思想の本質
ここからは少し個人的な話をさせてほしい。
Hermes Agentを面白いと思う理由は、機能の多さじゃない。「制約があるから賢くなる」という設計思想だ。
メモリに上限を設けているのは、そのためだ。上限がなければ、全部ため込んで検索するだけになる。上限があるから、エージェントは「何が本当に重要か」を判断せざるを得ない。その判断の繰り返しが、理解の深化につながっていく。
これ、人間の学習と同じ構造じゃないかな。
ノートに書き切れないから要点を絞る。要点を絞るから本質が見えてくる。無制限に保存できるクラウドよりも、物理的なノートの方が「記憶に残る」と感じる人が多いのも、たぶん同じ理由だ。

AIツールはどんどん「大きく」なっていく。コンテキストウィンドウは広がり、記憶できる量は増え、使える機能は増える。それはそれで正しい方向だ。
でもHermesは逆に「絞ること」で賢さを実現しようとしている。このアプローチが正しいかどうかはまだわからないけど、少なくともぼくには「面白い賭け」に見える。
あなたはどう思う?AIに「育つ」ことを期待する?それとも毎回リセットされても構わない派?
📝 まとめ:世界一になった理由はシンプルだった
Hermes Agentが3ヶ月で世界一になったのは、派手な機能があったからじゃないと思う。
「使うほど賢くなる」というたった一つのコンセプトが、誰もが「そうだよ、それが欲しかった」と思うものだったから、じゃないかな。
AIツールは今、猛烈な速度で増えている。でもほとんどのツールは「今この瞬間だけ賢い」。使い終わったら忘れて、また最初から。
Hermesはそこに「時間の積み重ね」を持ち込もうとしている。
まだパブリックプレビューだし、荒削りな部分も多い。でも方向性は間違っていないと思う。
ぼくも今、試しているところ。どんなエージェントに育つか、楽しみながら見守っている。
あなたも興味があれば、ぜひ触ってみてほしい。1週間後、2週間後に「なんか変わってきたかも」と感じる瞬間が来るはずだから。
Miccell - 仕組みがわかれば、世界はもっと面白くなる。
