AIで空いた時間を、また仕事で埋めていませんか ── 効率化・無人化の先でするべきこと
こんにちは、ギフトショップ『モモフク』を経営している木澤です。
私の右腕として頼りにしていたスタッフが産休に入ったのをきっかけに、私は3月にAIエージェントを導入し、AI秘書「NOA」にあらゆる業務を教え込んできました。
売上分析、書類の整理といった一般事務から、セールバナーの生成、ランキング更新、お問い合わせの返信下書き、商品の登録まで、あらゆる業務を、です。

そのおかげで私の時間は、確かに浮きました。
ところが ── 先日ふと気づいたのです。その浮いた時間を、私はまた"別の作業"で埋めていた。
効率化に成功したはずなのに、なぜか前より忙しい。
実は、ともにAIエージェントを勉強している経営者仲間に聞いても、同じようなことを言っていました。
「仕事がはかどりすぎて、楽しくてしょうがない。AIエージェントを休ませる時間がもったいなくて、最近寝不足だ。」
この界隈で、こういう人が増えているようです。
ここで、100年前の話をひとつ
20世紀で最も影響力のある経済学者の一人とされるケインズは、1930年にこう予言していたそうです。
「技術が進歩すれば、2030年ごろには週に15時間も働けば十分な時代が来る」
機械が人間の仕事を肩代わりし、人類は"暇"を持て余すようになる。余った時間をどう使うかが新たな悩みになる、という予言でした。
さて、その2030年がもう目の前なのに、我々はちっとも暇になっていない。100年前の天才の予言は、見事に外れた ── というのが、昨年までの彼の評価でした。
ここ数か月のAIエージェントの進化を目の当たりにして、2030年までにこの評価が挽回されるのではと、わずかな期待は持っています。それでも、万人が暇を持て余し、十分に豊かな生活を送る世界が来るとは、正直思えません。
では、この世紀の天才経済学者は、なぜ予言を外したのか。
なぜ、浮いたはずの時間はまた作業で埋まるのか。
なぜケインズは予言を外したのか。
その答えは、同じところにあると思います。ケインズは、人間の"欲"を読み違えていたのです。
私の秘書NOAによると、経済学に「ジェボンズのパラドックス」という言葉があります。効率が上がってコストが下がると、人はかえってそれをもっと使うようになり、総量はむしろ増える、という現象です。
仕事も同じで、文章を書くのが速くなればもっと書かされる。分析が速くなれば、もっと分析を頼まれる。「速くなった分、もっと多くの作業」が流れ込んでくる。
ある調査では、AIで浮いた時間のうち、総労働時間が実際に減ったと答えた人は、わずか4分の1ほど。残りの多くは、また別の仕事で埋まっていました。そして企業もまた、生まれた余力の半分ほどを「さらなる自動化」に再投資しているといいます。
つまり、人も会社も、空いた分をそのまま空けてはおけない。これが、ケインズの読み違えであり、私が前より忙しくなった正体です。
生まれた余力を「さらなる自動化」へ注ぎ込む
そして、それを企業規模で、これ以上ないほど露骨にやってのけたのが、つい先日のニュースでした。

あのメタ(旧フェイスブック)が、約8000人(全従業員の1割)を解雇したのです。
大量解雇と聞けば「業績が悪い」と思いますが、メタは違いました。3か月で約4兆円もの利益を出している、超がつく黒字企業です。
それでも、人を切った。理由は「会社が苦しいから」ではなく、AIにもっと投資したいからです。
実際メタは、解雇と同時に約7000人をAI部門へ配置転換し、設備投資を最大1450億ドルにまで引き上げました。マーク・ザッカーバーグは「AIは史上最も重要な技術だ」と言っています。
まさに、生まれた余力を「さらなる自動化」へ注ぎ込む動きそのものです。世界のトップ企業は、もう「AIを導入するかどうか」で迷ってはいません。AIを前提に、会社そのものをゼロから設計し直し始めている。
そして、最も影響を受けるのはパソコンの前で完結する「頭を使う仕事」です。実はそこが、AIがいちばん得意な領域です。
AIエージェントによる業務効率化によって何を生み出したか
効率化は、私にとってゴールではありません。
それにはっきり気づいたのは先日、日本流通産業新聞社の取材を受けていた時でした。
弊社は楽天市場でのAIの取り組みを三木谷氏に評価されたことなどをきっかけに、ここ数か月で新聞各社からの取材を受けています。
「AIエージェントを活用した効率化によって空いた時間で、何ができましたか?」
そう聞かれた私は、「そこが一番のポイントだと思っています。効率化・無人化しただけでは何も生まれない。空いた時間で新たな価値を生み出さなければならない……」と説明しかけて、ハッとしました。
具体的に生まれたものが、何もない。効率化が進んだだけで、私はまだ新しい価値を生み出せていなかったのです。
AI時代だからこそ“人間そのもの”が問われる
では、空いた時間を、何に使えばいいのか。
先日、ある経営者の方の投稿に、こんな一節がありました。
「最後に残るのは、やはり"人"なのかもしれない。人間関係、信頼、キャラクター、コミュニティ。便利さだけでは、最後は選ばれない。」
AIで効率化して積み上がるのは、お金です。コストが下がり、利益が出る。それは大事なことです。
でも、AIにはどうしても積み上げられないものがある。それが「信頼」であり「関係」であり「物語」です。
「この人から買いたい」「この人と一緒にいたい」。人が動くのは、結局、感情が動いたときです。そして感情を動かせるのは、今はまだ人にしかできない仕事です。
便利さは、完成しつつある。だからこそAI時代ほど、"人間そのもの"が問われる時代はないのだと思います。
70%の業務を自動化、効率化の先へ
業務の70%が自動化している当社では、ここからが本番だと思っています。
NOAが率いるAIエージェントたちに任せたのは、毎朝の売上分析、お問い合わせの返信下書き、商品登録、ページ更新……。お客様からのメール問い合わせには、AIがこれまでの数万件の履歴を基に分析して瞬時に返信案を書きます。前日までに届いていたものは、朝PCを開くと、すでに全ての返信が自動的に書かれています。
そうして空いた時間で、私たちが始めなければならないのは、お客様一人ひとりの「贈る理由」にもっと向き合うことです。
モモフクは、ギフトのお店です。そのギフトの向こうには、必ず「贈る人」と「贈られる人」がいて、小さな物語があります。結婚式、誕生日、出産祝い、ありがとうの一言。
お客様の声をもっと聞くために、現場に向かう。まずは法人のお客様から。
作業はAIエージェントたちに。物語は、人である私たちに。
この役割分担こそが、これからの会社経営にとって最重要だと考えています。
何に使うかは、あなた次第
あなたがAIエージェントで手に入れた、その空いた時間。
また、別の作業で埋めてしまっていませんか。
「この時間で、自分にしかできない、何を生もうか」と考えてみるのは、いかがでしょうか。
効率化・無人化の先にあるのは、冷たい未来ではありません。うまく使えば、もっと"人間らしい仕事"に戻る時間なのだと、私は思っています。
ではまた。
