【人生哲学】力加減のルール。〜自らをすり減らさないための「いい手抜き」と、光に透かす心の持ち方〜

Buonasera a tutti! (みなさん、こんばんは。)
フィレンツェの家具修復士のみっちーです。
金曜日に公開した記事、そして土曜日のマイホーム購入にまつわる蔵出し裏話とお付き合いくださり、本当にありがとうございました。
今週のフィレンツェは、一気に押し寄せてきた真夏の猛暑のなかにありました。エアコンのない工房やガレージの室温がじわじわと上がるなか、私は今週、汗が落ちないよう細心の注意を払いながら、夫が作ったキッチン収納の「まっ白な塗装」に向き合っていました。 週末を迎え、風通しの良い広いガレージで仕上げの1回目を美しく終えたばかりの真っ白なパネルたちを思い出しながら、私は手仕事の心地よい疲労感に包まれています。
日曜日の今夜は、そんな汗だくの現場で指先が覚えたプロの「力加減」と、ヨーロッパに古くから伝わるある「美しい格言」、そして私の日常のちょっとお茶目な手抜きのルールを通して、何でも100%の力で完璧にこなそうとして少し疲れてしまったあなたの心を優しくほぐす、大人のための人生哲学をお届けします。
一日の終わりを労うキリッと冷たい白ワインや、すっきりとした爽やかな冷たいハーブティーを片手に、どうぞ私の作業台の隣でのんびりとした時間をお過ごしくださいね。
第一章:ローラー塗装が教えてくれた、プロの「力加減」
金曜日の記事でも少し触れましたが、広いガレージでパネルの仕上げ塗りをするとき、一番の命となるのはローラーを這わせる「力加減」です。
最初から最後まで、ずーっと同じ力でローラーをギューッとパネルに押し付けたままでいると、塗料が余計に絞り出されてボコボコと泡立ってしまったり、無骨なローラーの跡がそのまま縦じわのように残ってしまったりします。
では、プロはどうするのか。 最初は、少しだけ圧をかけて、木肌に満遍なく塗料を「載せる」ことに集中します。 そして、全体に塗料が載ったな、と思った次の瞬間、フッと一切の力を抜くのです。
あとは、ローラー自体の重みだけ。 ローラーの自重だけで、表面を優しく、優しく撫でるように滑らせてあげる。そうすると、不思議なことに、先ほどまで残っていた不格好なローラーの跡が、まるで魔法のようにフラットに消え去り、まっ白で均一な、美しい仕上がりの膜がすうっと調っていくのです。
「力を、ふっと抜くからこそ、美しく仕上がる。」
私はローラーを動かしながら、いつもこの真理にハッとさせられます。 最初から最後まで100%の力を込めて押し進めることだけが、美しいものを作る方法ではない。むしろ、要所を捉えたら、あとは力を手放してそのものの「重み」に任せることで、物事は一番綺麗な場所に落ち着くのだと、白い木肌が教えてくれるのです。
第二章:他を照らして自らを消費する、蝋燭になっていませんか?
ヨーロッパには、古くから伝わるこんなに美しく、そして少し切ない格言があります。
"La candela illumina gli altri e consuma se stessa."
(ラ・カンデラ・イッルミーナ・リ・アルトリ・エ・コンスーマ・セ・ステッサ)
「蝋燭は他を照らして、自らを消費する」
自らの身を削り、じわじわと燃やしながら、周囲に温かい光を届け続ける蝋燭。 家族のため、仕事のため、大切な誰かのために、「私がもっとしっかりしなきゃ」「今日中にあれもこれも終わらせなきゃ」と、自分の心と体を限界まで擦り減らしながら生きている真面目な大人の姿に、なんだかそっくりだと思いませんか?
でもね、自分を消費し尽くして消えてしまう前に、ふっと思い出してほしいのです。 誰かを、あるいは自分の人生を温かく照らし続けるためには、まず「あなたという蝋燭の火」が、穏やかに、心地よく燃え続けられるエネルギーが残されていなければならない、ということを。
「みっちーさんは、仕事も丁寧で、完璧な暮らしを送っているのでしょうね。」
時々、そんな身に余るような温かいメッセージをいただくことがあります。 でも、本当のことを白状してしまいますね。
私、家事も、子育ても、普段からめちゃくちゃ「手抜き」をしています(笑)。 私の手抜きのルールは、とってもシンプル。
「今日じゃなくてもいいことは、明日に回す。」
山のようにタスクがあったとしても、今しても明日しても支障がないことなら、私は手際よく次の日に先送りしてしまうタイプです。 例えば、私の夫は「今日のうちにすべてを終わらせてしまわないと気が済まない」という、いつも全力投球のタイプ。でも、そのせいで彼はいつも心も体も疲労してしまいがちです。 一方で私は、「明日でいいことは明日!」と割り切っていますから、ストレスもあまりたまらないんですよ。
これは、ローラー塗装と全く同じです。 大切な部分にそっと手を置いたら、あとは「ふっと力を抜いて、自重に任せる」。 この力加減があるからこそ、私たちは自分を消費し尽くすことなく、暮らしという大きなキャンバスを、美しく調い続けさせることができるのです。
常に全力走で、息を詰まらせるように頑張っている真面目なあなた。 今、ほんの少しだけ、そのローラーを押し付ける手を緩めてみませんか?
ここまでは、自分をすり減らさないための、ローラー塗装と「今日じゃなくてもいいことは、明日に回す」力加減についてお話ししました。
しかし、私たちはどうしても、力を抜いた自分のことを「やっぱりダメだな」「みんなはもっと頑張っているのに」と、正面から厳しくジャッジしてしまいがちです。
ここから先は、職人が塗装の最後に行う「Contro luce(コントロ・ルーチェ:逆光)」のルールをそっと紐解いていきたいと思います。 正面から自分を見つめて落ち込んでしまうときに、ほんの少し角度を変えて、自分を「光に透かして見る」ための心の持ち方。そして、職人の世界に伝わるあのお茶目な格言のお話。
冷たい飲み物をもう一口含んで、のんびりと心の調律の時間を進めていきましょう。
【大切な読者のみなさまへ】 この先につづく私の大切な「人生哲学」は、単品(200円)でもお読みいただけますが、月額500円の「みっちーの合鍵マガジン」を受け取っていただくと、今月の有料記事がすべて読み放題になります。さらに、これまで職人の手元を実直に記録してきた過去のアーカイブも、すべていつでも好きな時に紐解いていただけます。 また、私の有料記事の最後には、毎回ここでしか見られない特別な「ボーナスショット(おまけの一枚)」を添えています。単品で購入するのをちょっと躊躇してしまうな……という方は、ぜひお得なマガジンから、私の工房の特等席へいつでも遊びにいらしてくださいね。
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