青天の霹靂②|時代ト常民――柳田国男の生涯_042
要約
国際連盟の委任統治委員としてジュネーブに赴いた国男は、列強の利己主義や西洋合理主義の限界、そして言語の壁に直面し、深い孤独と失望を味わいます。しかし、この経験が彼を「中心」から「周辺」へと向かわせました。関東大震災を機に帰国を決意した彼は、国家に顧みられない辺境の民の営みを見つめる独自の民俗学へ向かう決定的な転換点を迎えることとなります。
孤独と失望
大正という時代が、西洋の理想主義という名の青白い炎に浮かされていた頃のことである。国際連盟という、人類史上初ともいえる理性の合議体がスイスのジュネーブに誕生した。委任統治委員に選ばれた国男は、その事務の歯車に身を投じていた。
この職務のリズムは、春から秋にかけて激しく拍動し、冬になると潮が引くように止まる。委員たちは雪が降り始める頃にはそれぞれの故郷へ帰る。国男もまたマルセイユからインド洋の波に揺られ、一度は東京の土を踏んだ。
しかし、大正十一年六月、彼は再び、あの冷徹なジュネーブの街へと戻っていく。
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