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『完璧な解答、不完全な卒業証書』

「師匠。……いくら完璧主義だからって、三年前の自分を液体漬けにするなんて。
これ、精巧な『シリコン製の浮き』ですよ。プールの授業で使うやつです」

ミラは呆れ顔で、タンクの中の『赤ん坊』を指先でつついた。
21歳の彼女の冷静な指摘に、亞里亞(アリア)は、自らの日記に記された
「完璧な再生計画」という一文を、今すぐ消しゴムで消したくなった。

「……ふん。これは敵を油断させる、高度な『音響兵器』の試作品だ!
家族写真だって、ただの顔入れ替えアプリの実験に決まっているだろう」

亞里亞は、壁に映し出された自分とミラの仲睦まじい写真を、苦々しく睨みつけた。
完璧主義者の彼にとって、自分の遺伝子が他人の瞳と混ざり合うなど、
計算外のノイズでしかないのだ。

「にゃうん」
黒猫のミラが、祭壇の裏から一通の『三年前の退職願』を前脚で引き出した。

「……師匠、これ。宛先が『未来の俺へ』ってなってますよ。
……先生、理科室で何を教えていたんですか?」

ミラが拾い上げた封筒には、三年前の亞里亞が組織から逃れるために用意した
「本物の偽造パスポート」が二冊、重なり合って入っていた。

「……知らん。三年前の私は、そのパスポートを焼き捨てたはずだ。
なぜ、君の分まで用意されているんだ?」

亞里亞が、三年前の自分を呪うように首を振る。
あの日、放課後の理科室で、二人は暗殺者とターゲットとして対峙したはずだ。
だが、この『家族』の証拠品たちは、全く別の真実を語りたがっている。

「……ミラ、そのパスポートの裏を見ろ。
三年前の君が、私に向けて放った『最後の質問』が書いてあるはずだ」

ミラがページをめくった瞬間、そこからハラリと落ちたのは、
一枚の『三年前の映画の半券』だった。

「……師匠。私、三年前の放課後に、あなたとデートの約束なんてしてましたっけ?」

ミラが顔を上げた時、地下室のスピーカーから、三年前のミラの幼い声が流れ出した。

『……先生。もし三年前のあの日、あなたが私を殺さなかったら……
私たちは、「本当の家族」になれたのかな?』

地下室の床が、激しい振動と共にゆっくりとせり上がり始めた。

「……ミラ、捕まれ! この教会ごと、三年前の記憶は『消去』される。
私たちの本当の目的地は、ここじゃない!」

せり上がった床の先には、三年前の亞里亞が隠した『最後のアタッシュケース』が、
赤いランプを点滅させて二人を待っていた。
そこに刻まれていたのは、現在のボスからの「最終指令」へのアクセスコードだった。

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