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『完璧な甘い思考の迷宮』

「師匠……。先ほどから、あなたの顔が巨大なイチゴのショートケーキに見えて仕方がありません。私の完璧な動体視力が、生クリームの白さに負けています」

ミラは壁に手をつき、熱っぽい吐息を漏らした。殺し屋としての鋭い勘は、このピンク色の煙によって、すっかり「おやつ時」の弛緩した思考に塗り替えられている。

「……奇遇だな、ミラ。私の目には、君が高級なジャムの瓶に見える。……いや、今はそれどころではない。この部屋の物理法則が、糖度を増して崩壊しているんだ」

亞里亞(アリア)もまた、ふらつく足取りで猫じゃらしを杖代わりにしていた。三年前の自分が仕掛けたこの煙は、吸い込む者の論理的思考を麻痺させ、都合のいい幻覚を見せる「甘すぎる罠」だったのだ。

「にゃうん」

足元で黒猫のミラが、切り裂いた写真から溢れ出す紅茶を、優雅に舐める仕草を見せた。それさえも、二人の目には「茶会に興じる紳士」のように映っている。

その時、閉まったままのドアを、三回、正確なリズムで叩く音がした。
コン、コン、コン。

「……はい」

亞里亞が、とろけた脳で受話器を取るように空(くう)を掴んで答えると、ドアの向こうから、鈴を転がすような、しかしどこか機械的な声が響いた。

「失礼します。三年前にお願いした『完璧な葬儀』の予約、今日でしたよね?」

ゆっくりとドアが開き、眩いばかりの光と共に、一足の「左右が揃ったハイヒール」が部屋に滑り込んできた。だが、それを見つめる亞里亞の視界では、ハイヒールが真っ赤な唇のようにパクパクと動いている。

「……ミラ、逃げろ。これは三年前、私がこのアパートを借りた日に完遂できなかった『唯一の失敗』だ。……いや、あるいは『最高の成功』だったか?」

亞里亞の言葉は、もはや支離滅裂だった。
背後のクローゼットから、またしても三年前の亞里亞の声が、今度は「祝福のファンファーレ」と共に流れ出した。

『……おめでとう。これでようやく、私の完璧な計画が完成する。……さあ、隣の私の部屋へ、その女を招き入れるんだ。……そこには、**三年前から死んでいるはずの「あなた」**が待っている』

ミラの耳の後ろの端子が、ピンク色の煙と共鳴するように、激しく点滅を始めた。

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