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68歳、定年退職してからAIファッションアプリを作った話【開発秘話 vol.4】

バーチャル試着で服を買う時代がきた

試着室に並ぶ時間が、なくなる

妻(53歳)がオンラインで服を買おうとするたびに、決まってこう言う。

「サイズ感がわからなくて怖い」

実際、彼女のクローゼットには「届いたけどなんか違う」という理由で出番のない服が何着かある。写真で見ると素敵なのに、いざ着てみると「なんか思ってたのと違う」。

これは妻に限った話ではないと思う。50代・60代・70代の女性に話を聞くと、全員が口をそろえる。「オンラインで服を買うのは怖い」と。

ではどうすれば怖くなくなるか。

答えはシンプルで、試着すればいい

バーチャル試着(VTO)という技術を知った日

私が「バーチャル試着」という言葉を初めて知ったのは、このアプリを作り始めてしばらく経った頃だった。

AI診断機能を実装し終えて、「次は何が欲しいか」と考えていたとき、ふと思った。

AIが「この服が似合います」と教えてくれるのはいい。でも、本当に似合うかどうかは着てみないとわからないじゃないか。

そこでいろいろ調べていると、FASHN AI というサービスにたどり着いた。

人物の写真と、服の写真を送ると、その人がその服を着た画像を生成してくれる――そういうAPIだ。

正直、最初は半信半疑だった。「どうせ合成感が強くて使い物にならないんじゃないか」と。

実際に動かしてみて、驚いた

試しに妻の写真と、気になっていたジャケットの画像を送ってみた。

数秒後に返ってきた画像を見て、思わず「おお」と声が出た。

服のシワの入り方、肩のラインの出方、全体のシルエット。明らかに「ただの合成」ではなかった。妻が実際にそのジャケットを試着しているような自然さがあった。

妻に見せると、「え、これ私?」と言いながら、しばらくスマホを持って眺めていた。そして「これ、ちょっといいかもしれない」と言った。

このとき私は確信した。これはサービスに組み込む価値がある、と。

技術的な話を少しだけ

ここから少し技術的な話をさせてほしい(苦手な方は次のセクションまで読み飛ばしてください)。

FASHN AIのAPIは、大まかに言うとこういう仕組みだ。

  1. 人物画像(モデル画像)をbase64形式で送る

  2. 服の画像(ガーメント画像)を同じくbase64で送る

  3. カテゴリ(トップス/ボトムス/ワンピース など)を指定する

  4. 非同期で処理が始まり、完了するとURLで結果画像が返ってくる

処理時間はおよそ5秒〜17秒。人間が試着室で着替えるのと大差ない。

私はアセンブラやC言語出身のエンジニアなので、最初はAPIの呼び出し方がよくわからなかった。「base64ってなんだっけ」「非同期処理をPHPでどう書くんだ」と、AIコーディングアシスタントに何度も質問しながら実装した。

今思えば、それが一番楽しかった時間かもしれない。知らないことを教えてもらいながら、少しずつ形になっていく感覚。68歳にして新しい技術を学ぶのは、決して遅くない、と実感した。

「着てみてから、選ぶ」という体験

私が作っているサービスのキャッチコピーは、**「着てみてから、選ぶ」**だ。

このコピーは最初から決まっていた。オンラインショッピングで一番の障壁は「試せない」ことだと思っていたから。

バーチャル試着があれば、その障壁がなくなる。

気になるワンピースがある。自分の写真をアップロードして試着ボタンを押す。数秒後に「あ、これ似合う」と確認してから注文する。返品のリスクも減るし、「なんか違った」という後悔も減る。

特に50〜70代の女性は、試着して確かめてから買う習慣が強い。それはオンラインでも変わらないはずだ。むしろ「試せるなら買いたい」というニーズは、この世代に一番強いかもしれない。

ページを離れずに試着できるようになった

最初に実装したのは、「試着ボタンを押すと別のサービス(AI診断アプリ)に飛ぶ」という方式だった。

でも使ってもらうと、「あれ、どこに行ったの?」という戸惑いが生まれた。

そこで次のステップとして実装したのが、ページ内で試着が完結するWidget方式だ。

商品ページに「試着してみる」ボタンがある。押すとモーダルが開く。写真をアップロードして試着する。結果を見て気に入ったら、そのままカートに入れる。

一度もページを離れない。

この実装が一番難しかったし、完成したときが一番嬉しかった。

AIデザイナーからの一言

試着結果を表示するとき、もうひとつ面白い仕組みを加えた。

試着が完了すると、AIが結果画像を見てデザイナーからの一言を自動生成する。

「この色が肌のトーンを明るく見せています。ただ、少しベルトでウエストを締めるとシルエットがさらに引き締まるかもしれません」

というような内容だ。褒めるだけでなく、さりげないアドバイスも入る。

国際ブランド出身デザイナー監修のサービスとして、試着結果にもプロの視点を加えたかった。OpenAIのVision APIを使ってこれを実現した。

服を買うという体験が、変わりつつある

私が子供の頃、「服を買う」といえばデパートや商店街に行って試着するしかなかった。

通販が普及して「写真を見て買う」時代になり、オンラインショッピングで「レビューを見て買う」時代になった。

そして今、「自分が着た姿を見てから買う」時代が始まろうとしている。

技術的にはまだ完璧ではない。生地の透け感や、素材の柔らかさまでは再現できない。でも「シルエットが合うかどうか」「この色が自分に似合うかどうか」という、一番大事な部分は確認できるようになった。

68歳の私が、妻(53歳)に喜んでもらうために作り始めたこのサービスが、少しずつ「試着してから買える場所」に近づいている。

次回予告

vol.5では、アセンブラ世代の私がAIと一緒にECサイトを作った話——技術編——を書こうと思っている。

PHPもJavaScriptもほとんど書いたことがなかった私が、どうやってフルスタックのECサイトを完成させたのか。AIコーディングアシスタントとの具体的なやりとりも交えながら書く予定だ。

サービスはまだ制作途中です。完成したらまたご報告します。

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