Visible Cloaks「Paradessence」(アルバムレビュー/感想/2026)
よくあるアンビエント音楽のような「静的な背景」としてではなくて
「生命体のように形を変え続ける」感じの
「動的な背景」的なアンビエント作品になっていて、
「近未来のアンビエント音楽」と言っても過言ではない感じもある、
アンビエント音楽&音への探究が詰まった
実験的で先鋭的で神秘的で幽玄で深遠な
ディープアンビエント/エクスペリメンタルアート作品。
◆Visible Cloaks「Paradessence」
アメリカのポートランドを拠点に活動するサウンドデザイナー、作曲家、プロデューサー、音楽研究家の「Spencer Doran」と、
シンセサイザーやサックス奏者の「Ryan Carlile」による
エレクトロニックアンビエントデュオ「Visible Cloaks」の新作で、
日本のアンビエント界の巨匠「尾島由郎」や「柴野さつき」と共作した
2019年の「Serenitatem」に続く作品なんですが、
今作は前述した両名に加え実験的で先鋭的な音楽で知られる「Felicia Atkinson」や「Ioana Șelaru」なんかも参加しているという事もあって、
前作を更に進化&深化させたような内容になっていますね。
「Spencer Doran」が今作に付いて、
「アンビエントとして「水平」に機能する作品を作るのではなく、
空間の中で変化し続けて絶えず流動する
「生きた素材」として概念化したかった」と語っているように、
よくあるアンビエント作品のような
「環境との調和」や「穏やかな時間」を音楽で表現しているような
「静的な背景」としての感じではなく、
「自然の営み」や「環境の変化」や「命の繋がり」を表現しているような
「生命体のように形を変え続ける」感じの
「動的な背景」的なアンビエント作品になっていて、
無機質な電子音も多いながらも
音が生きているかのように聞こえる感じと、
音が自由に変化&動き続ける感じと、
底や先が見えないレベルの深みとスケール感がありながら、
アンビエント音楽として成り立っているバランス感なんか絶妙ですし、
曲によってはアートアクアリウムを見ているかのような感じや
日本庭園の四季を味わっているかのような感じすらありますし、
「無機質な電子音」と人による「有機的な演奏」が
会話するように交わる様なんかは「近未来感」があって
実に幽玄で深遠で素晴らしいですし、
「Aglaia」の「Three Organic Experiences」辺りに通じるような
音のテクスチャーが使われていますし、
風景を切り取ったような感じや自然への敬愛に加えて、
いろんな言葉や音が使われているという事で、
時間や空間や国や地域を「超越」したような感じもあるので、
音楽(今作)を聞いているだけで「非日常の芸術体験」をしているような感じ…「神秘体験」をしているような感覚さえあるっていう…
そしてアルバムタイトルは「paradoxical(逆説的)」と
「essence(本質/真髄)」を合わせた造語のようなんですが、
「逆説の本質」は一見すると矛盾していると思える事柄の中に物事の隠れた真実や深い道理が宿っているという構造であり、
統合すると相反する要素が実は表裏一体である事も示すように、
(※簡単に言うなら「一見すると正反対に見える物事でも根っこにあるものは同じであり深く繋がっている状態であるという事」)
「機械の音は冷たい」や「人の奏でる音は温かい」などなど
今作でも一般的に思われている事とは矛盾を感じる部分が多くあるように、
矛盾(逆説)を超えて「本質(真髄)」を表現している部分が多くあるので
「哲学的」な作品でもあると言えるんだよねー!
曲によっては前衛的なジャズ的な要素や
フォークトロニカ的な要素もありますし、
エレクトロニカ要素が強めの時の「Autechre」みたいな感じと
「ISAM」以降の「Amon Tobin」的な神経質な雰囲気もあるので、
どうしても難解さは否めませんが、
先鋭的で芸術的で興味深い音楽なのは間違いないですし、
ゲストの魅力も作品に上手く混じり合っていると同時に
作品を更に魅力的にしているように効果的ですし、
アンビエント音楽&音への探究が詰まった
実験的で先鋭的で神秘的で幽玄なアンビエント作品であると同時に
「近未来のアンビエント音楽」を提示している作品かと。
意欲作で凄作で良作!
