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いとうせいこう『想像ラジオ』河出文庫

長いこと積読状態で手が出なかった本を、やっと今年になって3.11の数日前に読みました。今まで読もうとしなかったのは、題名から想像するだけできっと辛いに決まっていると思ったから。(同じ理由で『夜と霧』も『黒い雨』も持っているけどまだ読めないわたしです。)

意外だったし、とてもありがたかったのは、想像ラジオのDJである主人公の口調が明るかったこと。ときどきはさまれる「想ー像ーラジオー」のジングルにもほっとした。リスナーから様々な声が届くのもよかった。(ラジオの深夜放送を聞いた世代なのでなつかしかった。)

突然の事故で死んだ人のことを想像することがある。道路を横断してたときに車にはねられて即死、とか。そうしたらきっとその人の魂は自分が死んだことに気づかず、身体を置いて魂だけ道路を渡っているんじゃないか、というような想像を。魂は、きっと突然にこの世から消えたりはできないだろうと思うのだ。だからDJアークが自分が死んだことを知らないという、この小説の発想はごくごく自然だと思った。

DJの章と交互にはさまれる生者たちの章もよかった。「ボランティアだけに来ているような者は、遠巻きにただ黙って見守っているべき」と考えるのもよくわかる。きっと作者も何度もそう思いながら、悩みながら書いたのだろう。また、作家Sが死者となった恋人に言う、「生者がいるから死者の世界がある。両方が存在する」という考えもまったく同感だ。生きている者は死んだ者のことを繰り返し思い出し、生者だけでなく死者も時間がたつうちにだんだんと成長していくと思うから。

死んだ者がこの世にもいず、あの世にも行ってない、「中有」の状態にいるという話。また、生者にとっても、身近な者が死んだという事実を知っていても、しばらくはそうであるような、ないようなことであってほしいという気持ちも痛いほどわかる。

1回めは音楽を聴かずに読み終わったが、2回目を読んだとき(ちょうど3月11日だった)はそれぞれの音楽を聴き、聴き終わってまた次を読んだ。どれもいい曲だった。悲しかったけれど、この読書はいい経験だった。




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