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短編小説『アリエールのリカちゃん』|#書き鳴らしラボ

小説をそのまま、
まるっと音楽にしてみました。
朗読とは別ジャンルの聴く文学を
お楽しみください✨

もちろん、小説だけ読んでもいいです。



 アリエールがなくなったので、補充用のパックを手に取り、ボトルに青い液体を注ぐ。とろりと流れるそれは、液体というよりはスライムに近いな、と思う。絵の具を混ぜて作ったやつじゃなくて、木下文具店の隅っこに置いてあったやつ。

 ぐに。

 何かが動いた。パックの中で。ぐにゃぐにゃ。細長くて、柔らかそうな何か。これは……あれだ。昔首をすげ替えて遊んでいた、リカちゃん人形を思い出す。柔らかいけど。
 パックのアリエールはもう出てこない。まだ、ボトルの半分も満たしていないのに。これがなくなる前に、また買ってこなくては。結構高いのに。パックを洗面台に立て置く。
 お腹がくぐうと鳴くので、冷凍庫からカチコチの四角いうどんを取り出して、レンジに放り込む。カサゴン、バタン、ウウウウン。

 バタン、からららら。

 アリエールのパックが洗面台の中に倒れ、外したままのキャップがころがる。注ぎ口から小さな手がのぞいている。出たいのかもしれない。あれをハサミで切ると洗剤がハサミについちゃうなあ、と思いながら、幼稚園のころから使っている水色のハサミをマーブル模様のマグカップから取り出す。あ、底に小さな赤い靴がひとつ。クニとひしゃげている。

 洗面台のパックを拾い上げて横に持ち、長辺を切っていく。

 ぱかあ。

 開いた袋の中には、リカちゃんの顔をしたとろとろ青い人魚。なんだ。お湯で髪色変わるやつじゃないや。人魚を掴み、ぐぽっと魚の部分を外して、洗面台に放りだす。ビチビチ。ざざあと水をかける。ハサミ、ビチビチ、色の変わらないリカちゃん。彼女は洗面台のなかで体育座りをしている。

「あそこで何してたの?」

 彼女に聞いてみる。

「自分の存在価値について考えていたら、あそこに入ってました」

「そうなんだ」
 
 ピピと音が鳴って、くぐうと催促の声がする。うどんを食べないと。袋のなかで暴れるうどんを白いボウルに放ち、麺つゆをかけて食べ始める。ぐにぐに。リカちゃんの腕と似てるな、と、つるるぐにぐにうどんを食べる。

「ハサミ、濡れたままだと錆びますよ」

 洗面台から声が聞こえる。それもそうかと、物干しからタオルを取って、洗面台に向かう。丁寧にハサミを拭き、次に彼女をタオルで包む。まだ、頭抜けるのかな。スポンて。

「抜けますけど、もう身体ないんで」
「そっか」

 キッチンにまるまったタオルを置き、マグカップにハサミを戻す。赤い靴をつまんでから。タオルの脇にその靴を置き、うどんを食べる。

「これ、私の靴ですね」
「そうだっけ」

 全裸に赤い靴を片方だけ身につけたリカちゃんはまた体育座りをしている。

「存在価値って、外的要因がトリガーになるけど、実のところ、自分の定義が何かってことですよね」

「そうなんだ」
「まあ、たぶんですけど」
「うどん、食べる?」
「あ、はい。でも共喰い感ありますね」

 彼女が自分の白い腕を伸ばす。
 短いうどんの切れ端を小さな両手で掴んで食べる姿はたしかに共喰い感がある。

「実家に、身体あるかも」
「そうなんですね」
「探す?」
「いえ、大丈夫です」
「そっか」

 探してほしいと言われたら面倒くさいと思っていたからホッとする。

「冷凍庫にいてもいいですか?」

 つゆだけになった白いボウルをシンクに置き、彼女を冷凍うどんの上にのせる。

「寒いと思うけど」
「なんか、そういう気分なんで」
「そっか」

 バタン。

 ああ、アリエール、買いに行かないと。




なんか変なの書きたいなー、と。
目の前にアリエールの補充用パックがあって、リカちゃんがちょうど入りそうだな、なんて思ったんですよね。それだけなんですけど。


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