「私だって二次創作アカウントで政治の話なんてしたくない!」とは
二次創作アカウントで突如として政治的な主張を始め、周囲のオタクたちから距離を置かれた人々が、よく悲痛な顔でこのように叫んでいるのを見かける。
「私だって、好きで政治の話をしているわけじゃない……!」
そのさまはまるで滅びゆく国を守るために望まぬ剣を取った悲劇の騎士だ。
彼らは、血の涙を流すようなテンションで更にこう語る。
「本当は私も、みんなと一緒に楽しく推しの話だけをしていたい。でもこの国が壊れようとしている今、誰かが泥を被って声を上げなければならないから……!」
と。
この悲痛な叫びを聞くたびに、私は彼らの肩を優しく抱き、こう励ましてあげたくなる。
あなたはもう全然普通に、好きで政治の話をやっているのだから安心して欲しい。
そもそも、好きでやっているわけではないと言うことはつまり、外的要因により強制されているということになる。
それならば例えばXの仕様が突然変わり、別アカウントを作成するボタンを押した瞬間に全身に致死性の謎の蕁麻疹が発症する呪いがかけられるというのなら話はわかる。
あるいは黒服の男たちに銃を突きつけられ「今すぐこのフォロワーの多い二次創作アカウントで政権批判をし、高市早苗に殺されると叫べ。さもなくば、貴様を閉じ込め、貴様の地雷カプで薄い本を描かせる」と脅迫されているというのなら私も彼らと共に涙を流し、なんて残酷な世界だ……!と政府の非道を糾弾するだろう。
それが真の強制であり、好きでやっているわけじゃないという状態である。
だが現実は、新しい政治用アカウントはGmailアドレス一つで3分もあれば無料で作成できる。
彼らがその簡単に作れる別アカウントを頑なに作らず、わざわざ原作の知名度で集めたフォロワーがひしめく本アカウントで、その主張とは何の関係もないキャラアイコンのまま政治的な主張を繰り返しているのは、彼ら自身の強烈な承認欲求にしか感じ得ない。
自ら進んでメガホンを握りしめ、自ら進んで他人のふんどしで相撲を取るという選択をしておきながら、何か嫌なことがあったら「私だって好きでやってるわけじゃないのに!」と泣きじゃくりながらくずおれるのはあまりにも無理がありすぎる。
誰も彼らに十字架など背負わせていない。
彼らはただ自分の意思でメガホンを持ち、自分の意思で界隈を荒らし、結果として自分の意思でミュブロをされまくってなぜかそれに傷ついているだけなのだ。
好きで始めて好きにやめられることを、私だって……!なんて顔を覆って界隈のど真ん中で嘆くのは、困惑してしまうからやめて欲しい。
しかし、彼らのこの振る舞いを上記のように指摘したとして、おそらく彼らは一切のダメージを受けない。
なぜなら、彼ら救世の悲劇の騎士の前では、自分たちへの反駁や批判はすべて巨大な権力に雇われた工作員の仕業として処理されるという、鉄壁の自動防御システムが構築されているからだ。
二次創作アカウントで政治活動をして界隈を荒らさないで欲しいと述べ、愚かにも彼らに楯突いた一凡愚の私ですら、彼らの目には政府の意を受けて悲劇の騎士たちを弾圧しにきた冷酷なる国家の工作員として映っているのである。
そこまで買い被られるのは初めてのことで面映いが、まあしかし仮に私が高市総理と極秘の密約を交わし国家レベルの巨大なプロパガンダを担う雇われ業者だったとしよう。
もしそうなら、私は当然雇い主である総理官邸に対してnoteに投稿する原稿の検閲を、このように仰ぐわけだ。
「総理、大変お疲れ様です。例え話に出す予定のキーワードなのですが、ドスケベバキュームひょっとこフェラで進行してもよろしいでしょうか?」
「うーん……さすがにひょっとこフェラは政権のイメージ的に少し……。保守層からも批判が来そうだし、ここはもう少し手堅くドスケベセックスに直しておこうか」
「承知いたしました。確かにひょっとこフェラは男性向けの側面が強く、女性向けのフックにはなりにくいですしね。では内容もそれに合わせて修正しておきます」
日夜こんな高度なドスケベ・ブリーフィングが行われていたと言いたいのだろうか?
仮にこのドスケベ密約が国会で露見したとしたら、一体なんて言って解散するんだよ。ドスケベ解散か?
国会中継の議事録は「ピー」だらけになり、質問に立つ野党議員も、真面目な顔で「総理、例のドスケベ密約の意図についてお聞かせください!」なんて迫らなければならない。野党側は普通に精神的苦痛に対する賠償を求めてもいいと思う。
そして最終的に歴史の教科書に
「2026年、ドスケベ解散。この時、日本の民主主義は性癖の深淵に沈んだ」
と書かれる未来を想像すると、全然日本って滅んだほうがいいな…と言う気持ちになる。
さて、彼らが悲劇の騎士として今日も泣き崩れている間、私は国家の工作員(自称)という名誉ある役職を背負い、今日も最高にドスケベな原稿を書き上げる。
私の脳内官邸では、次なる最高のドスケベミッションが発令されているのだから。
