夫の正体|先に寝てて
いつもは、一緒に寝室へ行く。
どちらかが先に寝ることは、あまりない。
「今日は先に寝ててくれない?」
夫がそう言った。
帰りが遅かった。
夕飯を食べて、お風呂に入って、
やっと一息つける。
その時間がないと、少ししんどいんだ、
と笑った。
私は「うん」とだけ返した。
たぶん、職務経歴書を作るんだろうと思った。
最近、パソコンが壊れた。
休みの日は出稼ぎに行き、平日は帰りが遅い。
まとまった時間なんて、ほとんどない。
それでも夫は、スマホで書類を作っている。
画面を何度も指で広げて、文字を直しながら。
私は一人で寝室へ向かった。
隣はまだ空いている。
少し前までの私は、「早く寝なよ」と言っていた気がする。
体を壊したら元も子もない。
明日でもいいじゃない。
そんなふうに思っていた。
でも最近は、それを言わなくなった。
言わなくなったというより、言えなくなったのかもしれない。
眠る前、リビングの明かりが消えないことが、少しだけ気になった。
でも、見に行かなかった。
その夜は、一人で「おやすみ」と言った。

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