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立ち直りが早い人は何が違う?—心理学が教える「レジリエンス」を育てる3つの方法—#11

📖 この記事でわかること

  • 「立ち直りの早さ」が生まれつきの性格ではない理由

  • レジリエンス(回復力)の心理学的メカニズム

  • 折れにくい心を育てる3つの方法

「あの人はなぜ、すぐ切り替えられるのか」

大きなミスをしても翌日にはいつも通り動ける人がいる。厳しいフィードバックを受けても、落ち込まずに次の行動に移れる人がいる。同じような失敗をしているのに、引きずる人と引きずらない人がいる——。

「あの人はメンタルが強いから」「自分はメンタルが弱いから」と片付けていませんか。

心理学の研究では、立ち直りの早さは後天的に育てられる能力だといわれています。この能力は「レジリエンス(回復力)」と呼ばれています。

レジリエンスとは何か

「レジリエンス」とは、逆境や失敗、強いストレスに直面したとき、しなやかに回復し、適応していく力のことです。

もともとは物理学の用語で、外から力を受けて変形した物体が、元の形に戻ろうとする性質を指します。心理学では1970年代から研究が始まり、「折れない心」ではなく「折れても戻れる心」として定義されています。近年では、災害や事件に直面した時に立ち直れる能力としても注目されています。

重要なのは、レジリエンスは「傷つかない力」ではないということです。つらいことをつらいと感じながらも、そこから立ち直れる力——それがレジリエンスです。

「立ち直れない」のはなぜか

心理学者マーティン・セリグマンの研究によると、失敗や逆境から立ち直れない人には「3つのP」と呼ばれる思考パターンが共通しているといわれています。

Permanence(永続性):「この状況はずっと続く」と思い込む。「もう二度とうまくいかない」という考え方です。

Pervasiveness(普遍性):「すべてがダメだ」と広げてしまう。一つの失敗を「自分のすべての能力の否定」として捉えてしまいます。

Personalization(個人化):「すべて自分のせいだ」と自分を責める。状況や環境の要因を無視して、原因を自分だけに帰属させます。

この3つのPが重なると、一つの失敗が「自分はずっとダメで、何もかもうまくいかない、すべて自分のせいだ」という解釈になります。これが立ち直りを妨げる最大の要因です。

カウンセリングで失敗を捉え直す

カウンセリングで「過去の失敗を引きずり、抑うつ感や無力感が強い」という相談は多くあります。

そんな時、話を聞いていくと失敗そのものより、失敗に対する「解釈」が問題になっていることがよくあります。一つの失敗が「自分はダメな人間だ」という結論に収束してしまうのです。

そのときセリグマンの「3つのP」を例に出すと、自身の物事の捉え方が、「永続的」「普遍的」「個人化」に偏りがちなことに気づく方が多いです。
ここまで気づくだけで、同じ出来事をまったく違う意味に捉え直すことができます。それが、次の一歩への手がかりになります。

レジリエンスを育てる3つの方法

① 「3つのP」を疑う習慣を持つ

失敗してしまったとき、自分の考えに「3つのP」が含まれていないかを確認してみてください。

「もう二度とうまくいかない(永続性)」→「今回はうまくいかなかった」
「何もかもダメだ(普遍性)」→「この部分がうまくいかなかった」
「全部自分のせいだ(個人化)」→「自分の要因もあるが、状況の要因もある」

解釈を「短く(今回のみ)・狭く(部分のみ)・具体的(自分以外)」にすることで、失敗の影響範囲が限定され、次にチャレンジする勇気が湧いてきます。

② 「小さな成功体験」を意識的に積む

レジリエンス研究の第一人者、スタンフォード大学のアルバート・バンデューラが提唱した「自己効力感」という概念があります。「自分はできる」という感覚が、逆境からの回復を支える基盤になるというものです。

大きな成功でなくていい。「今日、これができた」という小さな達成を意識することで、自己効力感は少しずつ育ちます。第1回でお伝えした「小さな行動から始める」という考え方とも通じています。

③ 「つながり」を意識的に保つ

レジリエンス研究で一貫して示されているのは、
社会的なつながりが回復力の最も強力な源泉だということです。

逆境にあるとき、人は孤立しがちです。しかし、誰かに話す、誰かと一緒にいる、誰かの存在を感じるだけで、ストレスホルモンが低下し、回復が早まることがわかっています。

「弱みを見せたくない」という気持ちはわかります。しかし、つながりを保つことは甘えではなく、科学的に有効な回復戦略です。

まとめ

今日お伝えしたことを整理します。

  • レジリエンスは後天的に育てることができる

  • 立ち直れない原因は「失敗」そのものではなく、失敗に対する「3つのP」の解釈パターン

  • レジリエンスを育てる方法は「3つのPを疑う」「小さな成功体験を積む」「つながりを保つ」の3つ

失敗を引きずりやすいのは、性格のせいではなく考え方のパターンです。

パターンは変えられます。 次に失敗したとき、「これはずっと続くのか?本当にすべてがダメなのか?全部自分のせいか?」と一度だけ問いかけてみてください。その問いが、立ち直りの最初の一歩になります。

はたらく心理学 臨床心理士・公認心理師|働く人のための心理学を週2回発信

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