「通信制=通えない人の選択」ではない 広がる「自分に合った学び方」
「通信制」と聞くと、以前は「毎日学校に通うことが難しい生徒が選ぶもの」というイメージが強かったのではないでしょうか。
ところが、最近は少し様子が変わってきています。
通信制高校から難関大学や医学部を目指す生徒や、仕事をしながら通信制大学で学び直す社会人もいます。
「通えないから」ではなく、「自分の目的やペースに合っているから」通信制を選ぶ。
そんな学び方が広がっています。
通信制高校を「あえて」選ぶ
朝日新聞Thinkキャンパスの記事では、2026年春にS高等学校を卒業し、慶應義塾大学医学部に進学した生徒が紹介されています。
中高一貫校からS高等学校へ転入した理由は、「自分のペースで勉強したい」というものでした。
通信制高校では、毎日決まった時間に学校へ通う必要がない分、自分で時間を組み立てることができます。
この生徒は、1年分のレポート課題を早い時期に終わらせ、その後は大学受験の勉強に時間を使いました。
高3では、受験勉強に1日約10時間。
毎朝起きる時間や勉強を始める時間、趣味の時間、就寝時間までルーティン化していたそうです。
つまり、通信制だから「楽」だったわけではありません。
むしろ、自由であるからこそ、自分で学習を管理する必要があったのです。
文部科学省の学校基本調査でも、通信制高校は増加しています。2025年度の学校基本調査が公表されており、通信制高校を含む高校教育の変化が確認できます。
大学でも広がる通信制
同じことは、大学にもいえるようです。
朝日新聞Thinkキャンパスの「通信制大学ランキング」では、放送大学、京都芸術大学、慶應義塾大学などが紹介されています。
通信制大学の魅力の一つは、仕事や生活と学業を両立しやすいこと。
さらに、通学制と比較して学費が抑えられる大学もあります。
例えば、記事では中央大学法学部の通信教育課程について、スクーリング代を除く基本授業料が年間8万円と紹介されています。
社会人にとっては、
「仕事を辞めて大学へ通う」
という選択だけではなく、
「仕事を続けながら大学で学ぶ」
という選択肢が現実的になってきます。
実際、文部科学省の資料でも、通信制大学への入学者は、かつてと比べて大学卒業者や専門学校修了者の割合が増えていることが示されています。つまり、高校卒業後の「最初の大学」としてだけでなく、すでに学歴や職歴を持つ人の学び直しの場としても機能していると考えられます。
「自由に学べる」ことと「簡単に卒業できる」ことは違う
ここは、通信制について考えるうえで大切なところだと思います。
通信制大学は、入学しやすい大学も多い一方、卒業するためには、自分で学習を継続しなければなりません。
朝日新聞の記事でも、通信制大学は「卒業が難しい」と紹介されています。
ただし、通信制大学全体の卒業率については注意が必要です。
文部科学省の調査研究でも、通信制大学では学生によって学ぶ目的や学習状況が異なるため、単純な「卒業率」だけでは実態を正確に捉えにくいとされています。
大学によって学習支援の仕組みも異なります。
例えば、東京通信大学では、2026年3月卒業者について、最短4年以下での卒業を目指す学生の80.1%が卒業したと公表しています。
つまり、
「通信制だから卒業が難しい」
と一括りにするより、
「どのような学習環境を選び、どのように学習を継続するか」
が重要なのではないでしょうか。
「学校に合わせる」から「自分に合わせる」へ
通信制高校と通信制大学。
一見すると別の話に見えます。
しかし、共通しているのは、
「学ぶ人が、自分の生活や目的に合わせて学び方を選ぶ」
ということです。
毎日決まった時間に学校へ通う。
卒業するまで大学のキャンパスへ通い続ける。
それだけが学びの形ではなくなってきています。
オンライン授業やオンデマンド授業が広がり、場所や時間の制約を受けにくい学びが可能になりました。
文部科学省も大学通信教育について、教育の質や学習環境の在り方について検討を進めています。
ただし、自由には責任も伴う
一方で、自由な学び方には、それなりの難しさがあります。
「今日は勉強しなくても誰からも怒られない」
「仕事が忙しいから、今月は学習を後回しにする」
それを繰り返せば、当然ながら卒業は遠のきます。
通信制高校から慶應義塾大学医学部へ進学した生徒も、自由な環境の中で自分自身の生活を管理していました。
通信制大学で学ぶ社会人も、仕事や家庭と学習時間をどう両立させるかを自分で考える必要があります。
そう考えると、これから重要になるのは、単に「オンラインで学べる環境」だけではないのかもしれません。
自分で目標を設定し、計画を立て、学び続ける力。
こうした力の重要性は、学校を卒業した後のリスキリングにもつながっていきます。
学び方を「選べる」時代へ
通信制高校。
通信制大学。
そして、社会人のリスキリング。
学ぶ場所や時間を固定しない選択肢は、これからさらに増えていくでしょう。
大切なのは、
「通信制だからいい」
「通学制だからいい」
ということではなく、
「自分は何のために学ぶのか」
を考え、その目的に合った学び方を選ぶことなのではないでしょうか。
「学校に合わせて学ぶ」から、
「自分に合った方法で学ぶ」へ。
通信制教育の広がりは、単なる教育制度の変化ではなく、私たちが「学ぶ」ということそのものを考え直すきっかけになっているように感じます。
参考リンク
① 文部科学省「学校基本調査」
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
② 文部科学省「学校基本調査-令和7年度 結果の概要-」
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/kekka/k_detail/2025.htm
③ 文部科学省「高等学校通信教育の質の確保・向上」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kaikaku/1403642.htm
④ 文部科学省「大学通信教育について」
https://www.mext.go.jp/content/20241016-mxt_koutou02-000038449_10.pdf
⑤ 文部科学省「大学通信教育の実態及び教育の質向上等に関する調査研究」
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/itaku/1418420_00003.htm
⑥ 朝日新聞Thinkキャンパス
「あえて通信制高校を選択 難関大医学部に合格した『自分のペース』勉強法」
https://www.asahi.com/thinkcampus/article-130739/
⑦ 朝日新聞Thinkキャンパス
「【ランキング】通信制大学、どこが人気? 大人の学び直しで話題、慶應大学は『卒業が難しい』」
https://www.asahi.com/thinkcampus/article-110749/
