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「人手不足だからAI」だけじゃない? 厚労省がエッセンシャルワーカーの生産性向上を検討

人手不足が深刻になるなか、「AIやデジタル技術を使って仕事を効率化しよう」という話をよく聞くようになりました。

そんななか、厚生労働省が「エッセンシャルワーカー」の生産性向上について検討を始めました。

2026年7月31日、第1回「エッセンシャルワーカー業職種の生産性向上に向けた労働行政としての支援のあり方に関する検討会」が開催されています。

では、今回の「生産性向上」は、単純に「AIを導入して人を減らす」という話なのでしょうか。

■そもそも「エッセンシャルワーカー」とは?

今回、厚労省が対象としているのは、医療・介護だけではありません。

資料では、医療・福祉、建設、運輸、宿泊・飲食、小売、警備など、社会や日常生活を支える幅広い分野が取り上げられています。

こうした仕事は、需要があるからといって、簡単に人を増やせるわけではありません。

少子高齢化で働き手そのものが減っていくなか、「採用を頑張れば解決する」という方法だけでは限界があります。

だからこそ、仕事そのものを見直していく必要がある。

今回の検討会は、そんな問題意識から始まっています。

■生産性向上=「人を減らす」ではない

「生産性向上」という言葉には、少し注意が必要だと思います。

業務を効率化して、必要な人員を減らす。

そんなイメージを持つ人もいるでしょう。

しかし、本当に重要なのは、「人を減らすこと」ではなく、「人にしかできない仕事に、人の時間を振り向けられるようにすること」ではないでしょうか。

たとえば介護なら、記録入力や情報共有などの事務作業をデジタル化する。

見守り機器やインカムを活用する。

複数の事業所で研修や事務処理を共同化する。

厚労省の資料でも、介護テクノロジーの導入だけではなく、導入と一体となった業務改善や、都道府県などによる伴走支援が示されています。

つまり、「機械を入れて終わり」ではありません。

仕事のやり方そのものを変えるところまでが、生産性向上なのです。

■「AIを入れれば生産性が上がる」わけでもない

ここは、現場では特に重要だと思います。

たとえば紙の記録を電子化したとしても、入力項目が増えたり、同じ内容を複数のシステムに入力したりすれば、かえって仕事が増えることがあります。

AIを導入した場合も同じです。

「AIを使う」という新しい作業が増えただけでは、生産性向上とは言いにくいでしょう。

大切なのは、

「この業務は本当に必要なのか?」

「この確認作業は誰がやる必要があるのか?」

「人がやらなくてもよい部分はないか?」

と、仕事そのものを見直すこと。

そのうえで、AIやデジタル技術を使う。

順番が大切なのだと思います。

■「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」という考え方

今回、もう一つ気になったのが、「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」という考え方です。

労働新聞によると、検討会では、デジタル技術などを活用して高い賃金を得る「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」についても、概念の整理や確保・育成方策を検討する方向です。

これは面白い視点だと思います。

AIやデジタル技術によって、人間の仕事がなくなるのではなく、

「現場を知っている人が、デジタル技術も使いこなせる」

という方向に進む可能性があるからです。

たとえば、現場の業務を理解している介護職が、データを活用して業務改善を行う。

医療現場を知る職員が、AIやデジタルツールを使って情報整理を効率化する。

こうした人材が増えれば、「AIに仕事を奪われる」というより、「AIを使って仕事の価値を高める」という発想になります。

■生産性が上がったら、その利益は誰のもの?

ただし、ここにはもう一つ考えたいことがあります。

生産性が上がった結果、

「同じ人数で、もっと多くの仕事をしてください」

となってしまったら、働く人にとっては単なる負担増です。

逆に、業務時間が減り、専門性の高い仕事に集中でき、その専門性が賃金や評価にも反映されるなら、意味のある生産性向上になります。

今回の議論は、単なるDX推進ではなく、「人手不足のなかで、エッセンシャルワーカーの仕事をどう維持し、どう高度化していくのか」という話でもあるのでしょう。

■人手不足対策から「仕事の再設計」へ

これまで人手不足対策というと、

「どうやって人を採用するか」

「どうやって辞めない職場にするか」

が中心でした。

これからは、それに加えて、

「そもそも、その仕事は人がやる必要があるのか」

「人にしかできない仕事は何なのか」

「デジタル技術を使って、仕事をどう組み替えるのか」

を考える必要があります。

エッセンシャルワーカーの生産性向上は、「人を減らすためのAI」ではなく、「限られた人材を、より価値の高い仕事に振り向けるための仕事の再設計」。

私は、そんな方向に進んでほしいと思います。

厚労省の検討会が、これからどのような好事例を集め、どんな支援策につなげていくのか。

今後の議論にも注目したいところです。


参考リンク


厚生労働省「エッセンシャルワーカー業職種の生産性向上に向けた労働行政としての支援のあり方に関する検討会」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74633.html

厚生労働省「生産性向上に関する主な支援機関及び支援策」
https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/001731122.pdf

厚生労働省「対象とするエッセンシャルワーカー業職種分野をめぐる現状」
https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/001731068.pdf



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