Ep 138 ポーランド・ベルギー旅【5日目】クラクフ国立美術館・聖マリア聖堂、別れと出会い
夫の仕事でフランスに1年間滞在することになった、mitakoの話。
7月初めから8泊9日でポーランドのクラクフ、ベルギーのヘントを旅したので、旅の記録をnoteに残していきたいと思います。
4日目の記事はこちらからご覧いただけます。
クラクフ5日目は観光最終日。
この日の観光は、クラクフ国立美術館と聖マリア聖堂です。
クラクフ国立美術館
クラクフで最大規模のコレクションを有する国立美術館では、20~21世紀ポーランド美術をはじめ、中世から20世紀までの家具、陶磁器、ガラス工芸、織物、金工品などの装飾美術品、武器・甲冑コレクションなど、幅広い作品が所蔵されています。
今回のお目当ては企画展「カルパティアのゴシック」。
訪問時はちょうど、ポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニアなど、カルパティア山脈周辺地域の中世美術を集めた展覧会が開催されていました。

絵画・木彫・祭壇彫刻に加え、教会壁画や建築彫刻の写真資料も展示され、「カルパティア地域を一つの芸術圏」として紹介する展覧会でした。
開館時間の10時ちょうどに美術館へ入館しました。
ありがたいことに館内は全く混雑しておらず、ゆっくりと鑑賞することができそうです。
一階の広い展示室には宗教画や彫刻が余裕を持って配置されており、一つひとつの作品をじっくりと見ることができました。
企画展の中でも特に印象に残ったのは、キリストの磔刑や聖人、聖書の場面を表現した木彫作品です。

筋肉の質感、衣服のひだ、そしてその表情から、不思議な生々しさと圧倒的な立体感が感じられます。
特にキリストの磔刑を表現した彫刻は、やせ細った身体や悟りの表情があまりにも痛々しく、鑑賞者の心に強く訴えかけてくるようでした。(写真は自粛)
また、幼いキリストを抱く聖母の彫刻からは、マリアの優しい眼差しを感じ取ることができます。

中世の教会という祈りの場に置かれていたこれらの作品から、当時の人々が抱いていた信仰心や、救済を求める思いが伝わってくるような気がしました。
常設展
1~2階にある常設展では、絵画や装飾美術、工芸品などが展示されています。

チャルトリスキ美術館やヴァヴェル城に引き続き、あまりにも展示数が多いため、お気に入りの作品を厳選して紹介します。


20~21世紀ポーランド美術
3階には、近代から現代にかけてのポーランド美術を扱った展示があります。
展示室に入ってすぐに目に留まったのはこちらの絵画。

この作品、実は昨年日本で開催された展覧会「〈若きポーランド〉-色彩と魂の詩 1890-1918」で来日していた作品です。
展覧会の出品作ではありませんでしたが、ポスターで見かけたことがあり、記憶に残っていました。
まさかクラクフで再び出会えるとは。
ポーランドの画家についてはこれまであまり詳しく知りませんでしたが、今回の展示を通して素敵な作品や芸術家を知ることができたのは嬉しい発見でした。

気がつけば、2時間半ほど時間が経過していました。美術館にいると、いつも時間があっという間に過ぎてしまいます。
美術館のあとは、トラムで旧市街へ移動。イタリアンレストランで一人ランチを済ませた後、最後の観光地である聖マリア聖堂へ向かいました。
聖マリア聖堂
聖マリア聖堂は、クラクフ旧市街の中央広場に建つ、街の象徴ともいえる教会です。

その歴史は13世紀まで遡ります。この場所には13世紀初めにロマネスク様式の教会が建てられていましたが、1241年のタタール人(モンゴル軍)のポーランド侵攻によって大きな被害を受けました。
その後、13~14世紀に現在につながるレンガゴシック様式の教会が建設されました。
外観の大きな特徴は、高さの異なる二つの塔です。
写真の手前側塔では、毎時間「ヘイナウ」と呼ばれるトランペット演奏が行われています。
演奏が途中で突然終わるのは、タタール人侵攻の際、襲来を知らせるラッパを吹いた兵士が途中で喉を射られたという伝説に由来しています。
悲しい歴史を伝える伝説ですが、現在ではクラクフを象徴する風景の一つとなっています。
ちなみに、トランペット奏者は演奏を終えると、広場に向かって手を振ってくれます。
教会内部へ入ると、絢爛豪華に装飾された壁や天井、そして巨大な木彫祭壇に迎えられます。

この教会最大の見どころは、ファイト・シュトースによって1477年から1489年にかけて制作された多翼木彫祭壇です。
これはヨーロッパを代表するゴシック彫刻作品の一つで、聖母マリアの永眠と被昇天を表した彫刻が中央に配置されています。
さらに、両側のパネルには、受胎告知、イエスの誕生、東方三博士の礼拝、イエスの復活、昇天、聖霊降臨など、聖書の場面が細やかに表現されています。

この祭壇は「美術の物語」という本にも紹介されており、今回の旅で必ず見ておきたい作品の一つでした。
実際に目の前にすると、その大きさだけでなく、細部まで作り込まれた彫刻の迫力に圧倒されました。
また、濃青地に金色の星が描かれた天井装飾も、この教会を象徴する特徴の一つです。

この装飾は19世紀末、ポーランドの画家ヤン・マテイコの監修によって施されました。
1635年に追加された聖歌隊席の背もたれには、キリストとマリアの生涯を描いたレリーフが施されています。

さまざまな時代の装飾が重なり合い、この教会をより華やかで壮麗な空間へと作り上げているのだと感じました。
午後はポーランド人の友人Eさんへお別れの挨拶をする予定があったため、観光はここで切り上げ、学会会場へ向かいました。
友人とのお別れ
学会終了後、Eさんご夫妻のもとへお別れの挨拶に向かいました。
Eさんは私たち夫婦に、「あなたたちは日本のブラザー&シスターよ」と言ってくれて、次は日本で再会する約束をしました。
夫の友人という関係から始まった繋がりでしたが、こんなにも温かい関係を築けたことを嬉しく思います。
ウクライナ人から教わる建築の見方
この日の夜は、学会参加者数名と夕食をご一緒しました。
レストランが決まっていなかったため、旧市街を歩きながらお店を探していたのですが、その途中、メンバーの一人である60代のウクライナ人男性と建築について話す機会がありました。
私が美術や建築が好きだと伝えると、彼はクラクフの街並みの見方を教えてくれました。
「mitako、あの建物の窓を見ると大きさが違うだろう。下の階ほど窓が大きくて裕福な人が住んでいるんだよ。」
「あの建物の窓のアーチは古典様式だよ。」
「彫刻が付いている建物はとても古いんだ。」
など、街の建物を見る視点を教えてくださり、とても楽しい散歩になりました。


これまでは教会建築ばかりに注目していましたが、街を構成する一般的な建物にも、それぞれの時代の背景が刻まれていることに気づかされました。
教えていただいた「建物の見方」を意識して街を見ると、同じ景色でも全く違って見え、新しい世界がまた一つ広がったような気がしました。
クラクフ観光最終日となる5日目は、朝から美術館や教会を巡り、夕方からは友人との別れ、そして新しい出会いがあった一日でした。
美術や建築を通して、この街の歴史だけでなく、人とのつながりも感じることができた嬉しい思い出となりました。
次回はいよいよポーランド・ベルギー旅行6日目。ベルギー・ヘントへ向かいます。
