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戦争とミステリー作家 なぜ私は「東条英機の後輩」になったのか/西村京太郎【読書記録】 ✳︎「将校になれば飢えずにすむ」 —よみがえる父との夜

✴︎衣咲(えさき)です

小中高生のころ、夜になると父と並んで2時間ドラマをよく観ていました。火曜サスペンス劇場や土曜ワイド劇場。その中でも、登場率が高かったのが 西村京太郎山村美紗
『西村京太郎サスペンス 十津川警部シリーズ』が大好きだった。(Wikipedia

大学生になって読書の楽しさに目覚めると、自然と彼らの小説にも手が伸びました。
最近読んだのは 殺しの双曲線。 (Kindleはこちら
最初から「双子がメイントリックです」と明言されている斬新な書き出しに、思わずニヤリとしてしまいます。

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戦争が静かに存在していた時代

西村京太郎さんのエッセイには、戦時中の子ども時代のことが綴られています。
日本はすでに長い間戦争をしていたはずなのに、子どもたちは ベイゴマを回したり、トンボを追いかけたり して、穏やかに日常を生きていたという記述がありました。

戦況が悪化していくなかでも、暮らしは淡々と続いていく——
その描写がとても印象的で、私はふと、つい最近読んだ一冊を思い出しました。
それが 地図と拳 です。

この本は、今年読んだ中でも強く心に残った作品。
りんご病にかかった次女の看病をしながら、彼女が眠っているすき間の時間に読んでいました。
親になった今、子どもを寝かしつけてから本を読む静かな時間に、こうして戦争や過去の記憶に向き合うことができるとは思っていませんでした。

文庫もでていますが、わたしは単行本の鈍器感が好きです

【読書記録】地図と拳


「将校になれば、お腹をすかせずにすむ」

西村さんの自伝的エピソードのなかで、特に心に残ったのが「将校を志す」の章です

ー 男子は間違いなく徴兵される。初年兵の訓練で殴られるのは嫌だった。将校になればいい。将校になればお腹を空かせずにすむ

そんな理由で陸軍幼年学校に進もうと考えたと知ったとき、戦争というものがどれほど身近で現実的だったのかを、改めて思い知らされました。

きっと、同じように考えていた少年たちがたくさんいたのだろうなと思います。
それはどこかで、生き延びるための知恵であり、まだ幼い心の中の選択だったのかもしれません。


作家になるまで 〜安定を手放す勇気〜

西村京太郎さんが作家として大きく売れる前には、意外なほど多くの職業を経験しています。
なんと、公務員という安定職を辞めてしまうのです。しかも、まだ作家として成功する前に。

毎日職場に通ってお給料をもらっている私にとっては、そんな思い切った選択は信じられないほど。けれども、あの頃の彼にはきっと、何か信じるものがあったのでしょう。

そして『寝台特急(ブルートレイン)殺人事件』が大ヒットし、長者番付に載るほどの人気作家に。
京都に引っ越すきっかけになったのは、同じくミステリー作家の 山村美紗さん だったそうです。

京都人になりたかった」「京都とはコネの社会」——そんな語りもまた、彼の人柄がにじみ出ていて微笑ましく読めました。



父との時間を思い出すー西村京太郎氏の訃報

2022年、西村京太郎さんの訃報を耳にしたとき。
それはただ一人の作家の死ではなく、どこかで 父との時間がふっと遠くへ行ってしまったような感覚 がありました。

彼の小説を読んでいると、あの夜のテレビの前、父と私が静かに並んでいた時間を思い出します。

読み返すたびに、自分の時間も少しずつ重なっていく。
そんな存在の作家がいてくれたことを、改めてありがたく感じます。


#戦争とミステリー作家
#西村京太郎

戦後80年、書籍初収録原稿。アメリカはこの国の何を変えたのか?軍国少年が見た日本人の戦争観。陸軍幼年学校で将校を目指した少年の死と隣り合わせの日々。「歓戦」の熱狂はなぜ「厭戦」に変わったのかー。トラベルミステリーの巨匠が記していた自伝的超克の書。

内容紹介(「BOOK」データベースより)


著者の没後に軌跡を網羅したムック本が出版されています


過去の【読書記録】はこちら


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