小さな旅・思い立つ旅|江戸の「粋」を巡る旅[相撲、藩校、煎茶、落語]
粋な人、粋な計らい、粋な着こなし──
「いき」という言葉は、もともと江戸の遊郭で生まれたとされている。「粋」であり、「意気」であり、そして「生き」でもある。これは、西洋には見られない、日本独自の美意識でもある。
哲学者・九鬼周造の著書『いきの構造』によれば、「いき」とは「色気」「諦め」「やせ我慢」の三つによって成り立つという。そしてその対義語は「野暮」。
「いき」という たった一言が 奥深い

平安の雅 室町の禅 江戸の粋
それぞれの時代の美意識を漢字一文字で表すならこれ。時代ごとに姿を変えながらも、ひと筋の美の流れが日本文化の中を貫いている。
平安の「雅」
千年の都・平安京。「和歌」や『源氏物語』に象徴される貴族文化が花開いた。「雅」とは、単に優美なことではない。四季の移ろいに心を寄せ、それを言葉に託す──そこに「雅」の本質がある。
室町の「禅」
枯山水の庭園、侘び寂びの美意識、茶の湯に宿る「省略の美」。現代のミニマリズムやシンプルライフは、禅の思想の延長線上にある。静けさの中に、深い豊かさを見出す姿勢。
江戸の「粋」
町人文化が花開いた江戸時代。経済の安定と都市文化の成熟が、「粋」という美学を生んだ。身なり、言葉、所作の中に美を宿し、「野暮」を嫌う。潔く、格好よく、美しく。
ということで──
歌舞伎の世界を描いた映画『国宝』が空前の社会現象となっている今こそ、時代を超えて受け継がれる江戸文化に触れてみてはどうでしょう、という話。
江戸の「粋」を巡る旅
相撲
武士の鍛錬から 庶民の娯楽へ

かつては武士の鍛錬の一環だった相撲も、江戸時代には庶民の娯楽へと姿を変える。寺社の建立や修復のための「勧進相撲」が盛んに行われるようになり、土俵は庶民の熱狂の場となった。



黄檗山萬福寺
煎茶を日本にもたらした宇治のお寺

宇治にある黄檗宗の大本山。臨済宗・曹洞宗と並ぶ、日本三大禅宗の一つ。中国・明朝様式を取り入れた伽藍配置が創建当時のまま残る、圧巻の寺院。
明朝体、原稿用紙、木魚、スイカ、蓮根──
黄檗文化が日本にもたらしたものは実に多い。煎茶の習慣もその一つ。茶葉を湯に浸して飲む、現代のスタイルを伝えたのは黄檗宗で、中国式の精進料理「普茶料理」も有名。



閑谷学校
江戸中期に建てられた藩校

全周765メートルを石塀がぐるりと囲み、丸く加工された石が隙間なく積まれている。地形に沿って緩やかに上下する景観は、まるで一つの巨大な彫刻のよう。
内部には重厚な講堂、白壁の霊廟や蔵が並び、その超然とした佇まいは、まるでイサム・ノグチの庭園美術館を思わせる。
自然と人間の創造が融合した空間



落語
天満天神繁昌亭の上方落語

江戸初期、京都や大阪の神社仏閣の境内ではじまった「辻咄(つじばなし)」が起源。そこから発展したのが、今日の上方落語。天満天神繁昌亭などで受け継がれる語りの芸には、江戸の洒落と機知が息づいている。



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