わたしを作った本〜小説編〜東京デザート物語 林真理子
九州の田舎から出てきた世間知らずの若い女の子が、東京でモデルになり、都会の生活や恋愛につまづきながら大人になっていく、甘くてちょっとほろ苦い青春小説。
この本を初めて手に取った時の私は、当時リアル女子大生。
格好良くて美しい、自立した大人の良い女である青子叔母さん曰く、「小鳥ほどの脳みそしか持ち合わせていない若い女の子」だった私は、失恋をした主人公にかけた青子叔母さんの台詞に、頭をハンマーで殴られたようなショックと、恋愛と外見を派手に飾る事だけで毎日頭がいっぱいだった自分の事を、生まれて初めて恥ずかしいと思った。
「あのね、デザートは主食にならないの。たまにそういう女の人がいるわ。パンやご飯を食べなくて、甘いものだけで生きている人。〝恋多き人〟なんて言われても、そういう女の人はいびつで悲しいわ。私もね、もう少しでそういう女の人になりかけたことが何度かあったの。でもね、今ならわかる。主食があるからデザートはおいしいの。ちゃんと自分の力で立って生きていくから、恋は素敵なの。朱子、遅いかもしれないけど、私もパリへ主食を見つけに行くわ。だからあなたも、いつまでも失くなったデザートのことを考えるのはもうやめてね」
あの日からずっと、どんなに恋に夢中になって我を忘れそうになっても、頭の奥にこの言葉があった。
「この人よりも好きになれる男なんて、二度と現れない」「この人を失ったら、私はもう生きていけない」恋をするたびに、そして恋を失うたびに、毎回懲りずに同じ事を言って大騒ぎしてきたけど、男にベッタリ乗っかって生きてるだけの人生なんて、何てつまらないんだろう。
「私」は何が好きで、何ができて、何をして生きていきたいのか。
恋愛は、自分自身に揺るぎないしっかりとした基盤があってこそ、余力で楽しめるもので、いつまでもそれだけを主食にして生きていく事はできないし、若さや美しさを失った後は何も残らない。
若い私にそれを教えてくれた、ギラギラとした野心と才気の塊のようだった林真理子さんの膨大な本との出会いは、その後の自分の人生観や恋愛観に大きな影響を与えてくれた。
常に時代に合わせて、尖った感性で発信を続ける彼女は、いくつになっても永遠に追いつけない、青子叔母さんのような格好良い憧れの女性だ。
