【映画レビュー】『冬の旅』:生にも死にも意味がないように思えてしまう
前から気になっていた作品を観た。
冒頭、若い女性が畑で野垂れ死んでいる死体のシーンから始まる。彼女は真冬に放浪するホームレスだった。
映画は死に至るまでの彼女の様子を追っていく…
彼女の生き方に意味はないのか
彼女は風呂に入らない。服も着替えない。それらは彼女にとってもはや価値のないことになっていた。映像では見えないが、異臭を放っていることはわかる。
野宿中にレイプにも遭った。どれほどの恐怖だったろう。
それでも彼女はただ流れるように放浪し続けた。
そこに意思や願望があるのかないのかどうかはわからない。少なくとも私にはそういったものは見えなかった。
そんなふうに彼女の放浪を映し出す間に、ときおり、ドキュメンタリータッチで、彼女と出会った人々のインタビュー(聴取)が挿入される。
でも、そこで語られることもてんでばらばらで、彼女が何者だったのかを明らかにすることはない。
映画自体が意味づけを拒否している
映画はそもそも、彼女の意思や願いがなんなのかなど、明らかにするつもりはないのではないか。彼女の生き方に意味を見いだそうなどとしていないのではないか。
観客である私も、彼女だなぜそんなふうに生きたのか、探りたくはならなかった。むしろ、そこを一気に通り越して、そもそも生きることってなんだろうという根源的な疑問が頭に浮かんできた。
なぜ人は生きようとするのだろう、生きなくてはならないのだろう……そんなことを考えてしまった。
彼女の死にも意味はないのか
彼女の死はまったくの無駄死にだったのだろうか。そうとは思いたくない。何とか彼女の死に意味を見いだしたくなって、彼女の生き方について考えてみる。
少なくとも、束縛を逃れるための自由を求めているのではないと思った。惰性とか諦念というのとも違う。無常というような、達観したものでもない。
やはり私には、意味づけをすることはできなさそうだ。彼女はただ死んだのではないのかとしか言えない。
そんな風に思うのも、やはり、映画自体が意味を見出そうとすることを拒否しているからかもしれない。一人の人間の生なんて、そんなものなのかもしれない。
それでも私はやっぱり、意味のある生を生きたいと願わずにはいられない。もがかずにはいられない。
この映画は、無意味ではいられないという人間の欲求にあらためて気づかせてくれたように思った。
本作は、女性監督アニエス・ヴァルダ監督の劇映画の最高傑作といわれているそうです。主演のサンドリーヌ・ボネールは、本作で、セザール賞最優秀主演女優賞を最年少で受賞しました。
