見出し画像

【元看護師の怪奇考察カルテ Vol.5】橋の上の怪奇

こんにちは、Mizukiです。

今回の【元看護師の怪奇考察カルテ】は、「橋の上の怪奇」についてお話しします。

深い霧に包まれた、早朝の橋。

その橋の下に、黒い影のようなものが浮かんでいたら……。

しかも、その影が少しずつ大きくなり、こちらへ近づいてきたとしたら……。

みなさんは、どう思いますか?

今回は、私自身が中学生の頃に体験した出来事です。

それでは、カルテをご覧ください……。


🏥 問診

医師:「今日はどうされました?」

Mizuki:「あの……実は橋の上で、変なものを見たことがあって……」

医師:「変なもの?」

Mizuki:「中学生の頃です。ダムに架かる橋の上から、黒い影を見ました」

医師:「水面に?」

Mizuki:「それが……水面よりずっと上です。霧の中で、ゆらゆら揺れていました」

医師:「見たのは、あなただけですか?」

Mizuki:「いえ。友達も一緒に見ています」

医師:「……なるほど」

医師はカルテを開いた。

医師:「では、その時のことを詳しく聞かせてください」


📋 怪奇考察カルテ Vol.5

「橋の上の怪奇」

患者: Mizuki
場所: ダムに架かる橋
時期: 中学生の頃・夏
時間帯: 朝6時頃
天候: 濃霧
現象: 橋の下の霧の中に黒い影が現れ、徐々に大きくなった
同行者: 友人
備考: 二人が同じ場所で黒い影を見た実体験


【怪奇の記録】

それは、私が中学生の頃。

学校行事で、あるダムの近くにあるキャンプ場へ行った時のことです。

キャンプ場は中学校から10キロほどの場所にあり、みんなで自転車に乗って向かいました。

ダムに到着すると、大きな橋がありました。

その橋を渡った先が、私たちが泊まるキャンプ場です。

夕食はみんなでバーベキュー。

そのあとは、キャンプ場から山の方へ続く道を使って肝試しもしました。

たくさん遊んで疲れていたこともあり、その日はすぐに眠ったと思います。

翌朝、目を覚ましたのは、朝6時頃でした。

まだ眠っている人も多く、起きている人は数人。

私と友達は早く目が覚めてしまったので、

「ちょっと自転車で走ってこようか」

ということになりました。

向かったのは、昨日渡ってきたダムの橋。

外へ出てみると、辺り一面が濃い霧に包まれていました。

橋の先が見えないほどの霧……。

下を見ると、ダムの水面もはっきり見えません。

それまでの人生で、こんなに深い霧を見たことがなかった私は、怖いというよりも、むしろ少し楽しくなっていました。

「すごい霧だね~!」

「うん!こんな霧はじめて。もっと行ってみよう!」

友達と二人、自転車で霧の中を走り、橋の中央付近で自転車を止めました。

夏の朝6時。

外はもう明るいはずなのに、濃い霧に包まれた橋の上は、いつもとはまったく違う場所のようでした。

人の声も聞こえません。

車も通りません。

ただ、霧が広がっているだけです。

さっきまでの楽しかった気持ちは一転して、急に怖くなってきました。

その時です。

何気なく橋の下を覗き込みました。

……何かいる。

霧の中に、黒いものが見えました。

人なのか、物なのかも分かりません。

ただの黒い塊のようなもの。

それが霧の中で、

ゆら……ゆら……

と揺れているように見えたのです。

最初は、

「水面に何か浮かんでいるのかな?」

と思いました。

でも……おかしい。

ダムの水面は、もっとずっと下のはずです。

黒い影は、水面よりも高い位置……霧の中に浮かんでいるように見えました。

すると……。

黒い影が、少しずつ大きくなってきたのです。

……近づいてきてる?

その瞬間、友達とほとんど同時に、

「行こう!」

と言い、急いで自転車に乗りキャンプ場へ。

あの黒いものが何だったのか。

誰かに話したのかどうかも、今となっては覚えていません。

その後、時間が経つにつれて霧は晴れていきました。

帰りも同じ橋を自転車で渡りましたが、その時には、橋の下には普通にダムの水面が見えるだけ……。

朝に見た、あの黒い影はどこにもありませんでした。

そして実は、私はあのキャンプへ行く前から、この橋について、ある噂を知っていました。

「あの橋から身を投げる人がいる」

そんな噂を……。

あの朝、私たち二人が見たものは何だったのでしょうか……。


🔍 アセスメント

霧の中に浮かんでいた「黒い影」は何だったのか?

あの朝は、橋の先もダムの水面も見えないほどの濃霧でした。

さらに私は、その橋について怖い噂を以前から知っていました。

そして、前日の夜には肝試しもしています。

そう考えると、いくつか気になる条件が重なっています。


① 濃霧によって距離や高さを見誤った?

まず考えられるのが、霧による視覚への影響です。

人間は普段、物の大きさや周囲の景色、位置関係など、さまざまな視覚情報から「どのくらい離れているのか」を判断しています。

ところが霧の中では、遠くにあるものほど輪郭やコントラストが分かりにくくなります。

あの朝は、ダムの水面さえ見えないほどの濃霧でした。

そのため、本当は水面付近や斜面などにあった何かを、私たちが、

「水面より高い場所に浮かんでいる」

と見誤った可能性があります。

あの黒い影は、本当は私が思っていた場所とはまったく違う位置にあったのかもしれません。


② なぜ、黒い影は「上がってきた」ように見えた?

もう一つ気になるのが、黒い影が徐々に大きくなっていったことです。

霧の中では物体の輪郭がはっきりしません。

もし霧の向こうに木や岩、ダムの一部などがあったとすれば、霧の濃淡が変化することで、それまで隠れていた部分が少しずつ見えるようになった可能性もあります。

それを私たちが、

「大きくなっている」

「下から上がってきている」

と感じたのかもしれません。


③ 「怖い橋だ」と知っていたことが影響した可能性

そして、もう一つ。私自身がその橋の噂を知っていたことです。

私は以前から、

「あの橋から身を投げる人がいる」

という話を耳にしていました。

さらに前日の夜には肝試しをしています。

そして翌朝、辺りは経験したことがないほどの濃霧。

これだけ「怖い」と感じやすい条件が重なっていれば、私の見え方にも影響していたのかもしれません。

人は不安や恐怖を感じていると、普段なら気にしない影や物音にも敏感になります。

さらに、霧の中に見えた黒い影のように、「何なのかよく分からないもの」を見たとき、自分がすでに知っている怖い話と結びつけてしまうこともあります。

つまり私は、正体の分からない黒いものを見た瞬間、以前から知っていた「この橋は怖い場所」という記憶と結びつけてしまった可能性があります。

もし同じ黒い影を、何の噂も知らない場所で昼間に見ていたら……。

私は、同じように恐怖を感じたでしょうか。


④ 友達も同じものを見ていた

ただ……。

どうしても気になることがあります。

あの黒い影を見たのは、私一人ではありません。

友達も橋の下を見ていました。

もちろん、二人が見たからといって、それが怪奇現象だった証明にはなりません。

霧の向こうに実際に木や岩などの何かがあり、それを二人とも見ていた可能性も十分あります。

むしろ、二人が同じ方向を見ていたのであれば、そこに何らかの物が存在していたと考える方が自然なのかもしれません。

ただ……。

そこに何があったのか。

それだけは、今も分かりません。


🩺 カルテ所見

医師:「さて……」

Mizuki:「あの黒い影、何だったと思いますか?」

医師:「まず考えられるのは、霧による見間違いでしょうね」

Mizuki:「やっぱりそうですか……」

医師:「それほど濃い霧なら、距離や高さを正確に判断するのは難しかったはずです」

Mizuki:「じゃあ、影が上がってきたように見えたのも?」

医師:「霧の濃さが変わって、隠れていた何かが見えてきた可能性はあります」

Mizuki:「それに、私はあの橋の噂を知っていました」

医師:「それも無関係とは言えないでしょうね」

Mizuki:「……やっぱり、全部見間違いだったのかな」

医師:「ただ……」

Mizuki:「?」

医師:「あなた一人ではないんですよね」

Mizuki:「友達も見ています」

医師:「少なくとも、二人が同じ方向に『何か』を見ていた可能性はある」

Mizuki:「でも、霧が晴れたあとは何もありませんでした」

医師:「……では、正体までは診断できませんね」

医師はカルテにペンを走らせた。

《所見:濃霧による距離・形状の誤認の可能性あり。事前に知っていた噂が恐怖や解釈に影響した可能性も否定できない。ただし、同行者も同じ場所に黒い影を確認しており、その正体は特定できず》

Mizuki:「結局、原因不明ですか?」

医師:「そうですね」

医師はカルテを閉じた。

医師:「ただ、逃げた判断は正解だったと思いますよ」

Mizuki:「どうしてですか?」

医師:「霧で下も見えない橋から身を乗り出して、正体を確かめる方が危険ですから」

Mizuki:「……確かに」

医師:「怪奇現象より、まず安全第一です」

Mizuki:「それはそうですね笑」

医師:「本日の診察は以上です」


おわりに

あの朝、霧の中に浮かんでいた黒い影。

今になって考えてみれば、濃霧によって距離や高さを見誤り、そこにあった何かが「浮いている」ように見えただけなのかもしれません。

さらに私は、その橋についての怖い噂を以前から知っていました。

前日の肝試し。

早朝の静かな橋。

経験したことのないほどの濃霧。

そして、「この橋では人が亡くなっている」という記憶……。

いくつもの条件が重なって、ただの影を恐ろしい何かとして見てしまった。

そう考えれば、説明はつくような気もします。

ただ……。

もし、あの時逃げずにそのまま見続けていたら……。

黒い影は、いったいどこまで上がってきたのでしょうか。

……それは確かめなくてよかったのかもしれませんね。


――怪奇考察カルテ Vol.5「橋の上の怪奇」
症例検討終了。


📚 過去のカルテはこちら
この怪奇考察シリーズは、マガジンにまとめています。
これまで診察してきた怪奇も、ぜひ覗いてみてください……。



いいなと思ったら応援しよう!