「いつかやろう」を、あと何回言いますか
数えてしまった日のこと
会社を退職すると決める少し前、私は電卓を叩いていました。
退職金でも、老後資金の計算でもありません。
数えていたのは、自分に残っている月曜日の数です。
きっかけは、とある外部研修の中で講師の方が話されたことからでした。
受講者に「時間は有限です」と話すための資料を作られていて、ふと、自分の分を計算してみたのです。
そして、手が止まりました。
「まだ時間はある」と思っているうちは、人は動かないー静かな前提
私たちは、なかなか動きません。
「いつかやろう」 「もう少し落ち着いてから」 「そのうち挑戦したい」
年間400件を超えるキャリア相談に携わっている中で、この言葉がご相談者から出てこない月はありません。また、その言葉を発する方は意志が弱いからでも、努力が足りないからでもないと思っています。
ただ、「まだ時間は十分にある」と、無意識に信じているだけなのです。
明日も会社に行けば仕事がある。
来月も確実に給料が入る。
生活基盤は急には変わらない。
だから、締切のないことは、いつまでも順番が回ってきません。
何を隠そう私自身もそうでした。31年間、お正月になると毎年のように「今年こそ手を付けよう・考えよう」と思っていました。
数字に置き換えると、時間の見え方が変わる
たとえば、50歳の男性の方が83歳まで生きると仮定します。残りは約33年。そう聞くと、まだずいぶん先のように感じます。
こう置き換えてみたら、どう感じるでしょうか。
●これから迎える誕生日は、あと約33回
●これから迎える月数は、あと約397月
●これから迎える月曜日は、あと約1,725回
33年という言葉には手ざわりがありません。
でも、「1,725回」には、なぜかあるのです。数えられてしまうからだと思います。
しかも、その全部が自由に使えるわけではありません。
人生の約3分の1は睡眠です。そこから仕事、食事、移動、家事、休む時間を引いていくと、自分の裁量で動かせる時間はさらに減っていきます。
更に10年後も、いまと同じ体力でいられる保証もありません。
つまり、
「人生の残り時間」と「自分が自由に使える時間」は、別物なのです。
これは50代に限った話ではありません。
在職中に起業を考えている方は、平日の可処分時間が1日1時間なら、1年で約250時間。それが、準備に使える現実的な総量になります。
「時間がない」のではなく、「総量を数えていない」だけ、ということが少なくありません。
人生を24時間時計に置き換える。あなたは今、何時ですか
もうひとつ、人生を24時間の時計に置き換える見方もあります。
先ほどの例で83歳を24時とすると、50歳はおよそ14時過ぎ。まだ夕方にもなっていません。ただし、朝でもない。
この見方の効用は、不安を煽ることではありません。「まだ時間はある」と「何でも先送りできるほどではない」を、同時に自覚できることにあります。
20歳ならまだ朝の6時過ぎ、時間はたっぷりとある。けれど、朝の使い方でその日の中身が決まるのもまた事実です。
私がこの計算をしてみたのは、ちょうどその15時過ぎのあたり。
「まだ9時間は残っている」と一瞬だけ安心したのもつかの間、同時に、「もう午前中は終わっている」と焦りの感情を覚えました。
怖くなかったわけではありません
その後、私は会社を辞めました。
先代のビジネスを引き継げるわけでもなく、起業するには遅い年齢と思われる方も多くいるでしょう。
自分の場合は、継続してきたものを自ら手放す覚悟がその時にできたという事実だけです。
きれいな決断だったように書くつもりもありません。
実際は、怖かったです。
31年分の名刺と社内外での実績、肩書きや報酬を手放すというのは、そういうことでした。
ただ、一つだけはっきりしていたことがあります。
「このまま定年まで勤めて、それから考える」という選択肢を選んだ場合の自分を、具体的に想像できてしまったのです。悪くはない。けれど面白くない。たぶん少し悔しいというか、自分らしくない生き方。
決め手は、勇気ではありませんでした。
残りの日数を正確に数えたことと、やりたいことをやるという覚悟です。
タイムマネジメントは、予定を詰め込むことではない
タイムマネジメントというと、手帳の使い方や効率化、スキマ時間の活用を思い浮かべる方が多いと思います。どれも役に立ちます。
本質はもっと手前にあると考えています。
タイムマネジメントとは、限られた自分の時間を、何に使うかを自分で選ぶことだと私は思っています。
過去の記事ですが、タイムマネジメントの扱いを変える捉え方もあります。
お金は貯めたり、運用して増やすことができます。時間は一度使えば戻ってこない。時間こそ人生で最も大切な資産(アセット)です。
変えられるのは使い方だけです。
時間をどう使うか、きっと人生の質と方向性を決めていくと日々実感しています。だから「何をするか」と同じくらい、「何をやめるか」「何を先にするか」を決める必要があります。
予定を詰め込むことと、優先順位を決めることは、まったく別の行為です。
「いつか」を、今日に降ろす
先送りしていることがあるなら、この順番で考えてみてください。
① 自分は何を先送りしているのか
② 本当は、いつまでにやりたいのか
③ そのために今日できる、いちばん小さな一歩は何か
コツは、」
・「いつか転職したい」→「今週中に、職務経歴書を1ページ書く」
・「いつか独立したい」→「今月中に、自分の商品を1行で書いてみる」
・「いつか家族と旅行したい」→「今日、候補日を家族に聞く」
いつまでも動けない計画は、たいてい最初の一歩が大きすぎるのです。
私は、いつか行きたいと考えていた広島観光に来月行ってきます(笑)
取り戻せないもの
お金は、失っても取り戻せる可能性があります。
仕事も、やり直すことができます。
けれど、昨日使った1時間だけは、二度と戻ってきません。
とはいえ、すべての時間を仕事や自己投資に充てる必要はまったくないと思っています。休む時間も、家族と過ごす時間も、趣味の時間も、何もしない時間も、自分で選んだのであれば、等しく大切な時間です。
問題なのは、本当はやりたいことがあるのに、何となく先送りしたまま時間が過ぎていくことだけです。
最後に考えて欲しいこと
人生があと何年あるかは、誰にも分かりません。
だからこそ、「あと何年あるか」だけでなく、「残された時間を、何に使いたいのか」を考えることに意味があるのだと思います。
今日という1日も、人生の残り時間の中の1日です。
誰と過ごすのか。
何を学ぶのか。
何に挑戦するのか。
そして、何をやめるのか。
時間の使い方とは、人生の使い方そのものです。
最後に、3つだけ。
① 「そのうちやろう」と先送りしていることは何ですか
② それは、本当はいつまでにやりたいことですか
③ そのために、今日できる最初の一歩は何ですか
よければ、①だけでもコメント欄に書いてみてください。書いた瞬間に、それは「いつか」から「言葉にしたこと」に変わります。
私は、そこからしか始まらないと思っています。
時間リッチは、「自分らしく」使えているのかにつながっていくのでしょうね。
