影がテーマになると気づいた、夏
これまで、影に注目してこない人生だった。
影は暗いもの。ものを見えにくくするもの。どちらかといえば、光の反対側にある脇役のような存在だった。
カメラを手に入れてから、他の人が撮った写真を見る機会が増えた。
どういった構図なのか。どこに光があるのか。何が主題で、何が副題なのか。色はどのように置かれているのか。
そんなことを考えながら写真を見ているうちに、影の使い方が上手な写真に、妙に惹かれている自分に気づいた。
ならば、自分も影を探してみよう。
夕方、西日が強くなってきた時間に、カメラを持って歩いた。

影を探すつもりで歩いてみると、思っていた以上に、いたるところに影がある。


これまで何度も歩いてきたはずの場所なのに、影を意識するだけで、見える景色が変わった。
そして不思議なことに、影を探しているはずなのに、光のほうまでよく見えるようになった。

影があるから、光の形が見える。

光が当たっているところだけを見ていたときには気づかなかった輪郭が、暗い部分があることで浮かび上がってくる。
影は、ただ暗い場所ではなかった。
ものの形を変え、奥行きをつくり、何でもない場所に、少し違った景色をつくってくれる。

歩いている場所は、これまでと変わらない。
変わったのは、自分が見る場所だった。
カメラを持つことで、今まで見えていなかったものが見えるようになる。
影が、写真のテーマになる。
そんなことに気づいた、夏だった。
