秘めて、詰まって、ふくらんで
便秘がこんなにも辛いものだとは知らなかった。
30代半ばにして初めて便秘になった。正確には、特に旅行先や妻の実家に泊まったときなど、1日程度出ないこともあったが、それは便秘にはカウントしていない。こう書くと、かなり腸が優れた人間のように思えるが、そうではない。どちらかというと、便の多い生涯を送ってきた。つまりは恥もである。子どもの頃からお腹が緩く、冷たい飲み物を飲んだり、腹を出して寝たりするだけですぐに下した。暑がりだから夏は毎晩お腹を出し、毎朝下した。冬は寒いから普通に下した。自宅のトイレで座って用を足していたとき、最初は快調で何の問題もなかったものの、小窓から吹き込んできた風で腰が冷え、下した時は自分でも驚いた。僅かな時間と隙間を縫って、下痢はいつでもやって来た。
そんな激弱な腸を抱えていたはずが、便秘が5日目に突入した。
そこに至るまでの涙ぐましい努力は功を奏することはなかった。
寝る前のストレッチ。腸マッサージ。炭酸水の摂取。
功を奏するどころか、炭酸水は全くの逆効果であった。
藁にもすがる思いで解消法を検索したどり着いたのが炭酸水だった。ガスが胃や腸を刺激して、活発に動くようになるという。そんな説明を読み、割材用にストックしてある炭酸水を努めて飲んだ半日後、これまでとは比べ物にならないくらいの痛みが腸の上部を襲った。パンパンに張っている。恐らくだが、既に便で蓋をされてしまった通り道にガスがやってきてしまったために、行き場を失ったガスが腸を膨らませに膨らませたのではないかと思う。
今になって冷静に炭酸水を勧めていたページを読み返すと、既にガスが溜まっている場合は控えた方が良いと、しっかりと書いてあった。しかしそんなところを読んでいる余裕は、あの時の私にはなかった。
結局、5日目に這う這うの体で消化器内科に駆け込んだ。最初からそうしておけば良かった。
いかに痛いかを説明するために、人生で初の便秘であることを伝えると、50代半ばくらいの男性の先生と、同じ頃の女性看護師が声を合わせて
「えぇー!?」
と驚嘆した後、
「すごーい!」
などと、看護師の方は拍手までしてみせた。
そんなことはいいから早く楽にしてくれ。
かくして処方された薬を服用し、人生初の便秘は解消された。
しかし未だ腹に違和感がある。今でも怖い。便やガスで伸びてしまった腸が変形したままになっているのではないか。憩室になってしまってやいないか。(『内村さまぁ~ず』を見ていると年に1度、3人とゲストの人間ドックの結果をゲーム形式で発表する回があり、病気に詳しくなれた。「お前の体、休憩室みてえなのあんのかよ」のような発言で「憩室」を覚えた)
お腹に少しでも違和感があれば嫌な想像が次々と現れるし、まだ見ぬ次の便秘への恐怖を抱えながら、辛いものを食べ、ビールを飲んで、お腹を下したりなんかしている。ままならない腸活は、生を終えるまで試行錯誤の繰り返しである。
