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こえだちゃん 素のおうち

急に思い出したんです。

こえだちゃんにはエレベーターがあったな、と。

いちおう説明しておきますと、1977年にタカラ(現:タカラトミー)から発売された女の子向け玩具の話です。

要は人形遊びなんですけど、「木のおうち」と称する家の模型に付いてくるギミックがこの玩具の特徴です。

「木のおうち」の一階には、入口ドアしかありません。
ドアをくぐればエレベーターで、二階まで上がると居住スペースがあるのです。

狼とか虎とかの危険を避けるための仕組みなのかもしれません。
個人宅なのにエレベーターを付けなければならなかったご両親の苦労は、並大抵のものではなかったはず。


それはともかく、このエレベーターに僕の心はときめくのです。

ハンドルをグルグル回すと、こえだちゃん人形を乗せたエレベーターが上へ行ったり下へ行ったり——

すごい! 楽しそう!

エレベーターだけじゃありません。
上部の取っ手を引っ張れば、おうちがガシャンと上に伸びたり、パカッと開いて内部が露出したり、「木のおうち」には楽しそうな仕掛けがたくさんあるのです。

大人になった今でも、ちょっと遊びたくなるほどのワクワクです。

女の子向けの玩具ですが、妙に男心をくすぐるんですよね。
逆に女子はあのギミックを楽しんでいたのでしょうか?

この商品、いつの頃からかおもちゃ屋さんの店頭から姿を消してしまいました。

気になって調べてみると、生産終了とのこと。

終了は残念ですが、いまでも公式サイトに行けば「木のおうち」に関するさまざまな情報を見ることができます。

なかに「セットないよう」の項目があって、「木のおうち」の初期状態がどんなものなのかがわかります。

え〜と、なになに……「木のおうち本体」1個、「シール」1枚、「とりさんパーツ」1個。

えっ、これだけ!?
家具はともかく、こえだちゃんの人形も別売りなんだ!

「木のおうち」と人形を一緒に買うか、あるいは人形や家具なんかを最初に買って、ある程度あつまったら → いよいよおうちを買う という流れなのか。

これ、間違えて「木のおうち」だけ買っちゃう子はいなかったんだろうか……などと余計な心配をしてしまいます。

なんというか、男の子でいうと「秘密基地」だけ買っちゃった時の哀しさみたいな。


想像してみてください。

おばあちゃんに「木のおうち」を買ってもらって、ウキウキしながら家に帰ったA子ちゃん(仮名)。
大きな箱を開けてみると、中にはビルで言うところのスケルトン状態な「木のおうち」とシール、そして鳥が一羽。

いくら箱をひっくり返しても、人形はでてきません。

A子ちゃんは、ちょっぴり悲しくなりましたが、気を取り直して「木のおうち」で遊ぶことにします。
なにしろ、せっかくおばあちゃんが買ってくれたんですから。

はじめは「とりさん」の家という設定で、鳥の人形をエレベーターに乗せて上下させたりします。
だけど、鳥は飛べるのです。
エレベーターを使う必要はありません。

A子ちゃんはあたまのよい子ですから、すぐにそのことに気づいてしまいます。
ならば——と、A子ちゃん。画用紙にこえだちゃんの絵を描いて、はさみで切り抜き、紙相撲の要領でこえだちゃんファミリーを次々と錬成するのです。

それだけではありません。
手先が器用なA子ちゃんは画用紙やクレヨンを駆使して、空間を埋める家具や何やらを続々と産みだしていきます。

気がつけば、がらんとしていた「素のおうち」は、A子ちゃんお手製の人形や家具でいっぱいになっています。

柱の陰からA子ちゃんの様子を見守っていたご両親が、そっと涙をぬぐいます。


——僕はいったい、何を書いてるんでしょうか。

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