第3講義 会話が苦手な人ほど、ゴルフでは強くなれる

 


―「話す技術」より、「聞く技術」を磨く―

ゴルフには、不思議な時間があります。

ボールを打つ。

歩く。

景色を見る。

次のホールへ向かう。

そして、ときどき沈黙する。

会社の会議室なら、

「何か話さなければ」

と思ってしまう沈黙も、

ゴルフ場では、不思議と心地よい。

実は、この「沈黙」が、

ビジネスコミュニケーションを学ぶ最高の教材

になります。

なぜなら、信頼関係をつくるのに、

「話し続ける能力」は必ずしも必要ではないからです。

むしろ、

相手に気持ちよく話してもらう能力。

こちらのほうが、仕事では大きな武器になります。



1.一流の人は、なぜ「よく話す人」ではないのか

あなたの周りに、

「この人と話すと、なぜか気持ちがいい」

という人はいませんか?

特別に面白い話をするわけではない。

ものすごく話が上手いわけでもない。

それなのに、

「もっと話したい」

と思わせる。

こういう人には共通点があります。

それは、

「自分が話すより、相手に話してもらう」

ことが上手いのです。

質問する。

相槌を打つ。

話を遮らない。

興味を示す。

少し待つ。

そして、また質問する。

これだけです。

しかし、この「これだけ」が難しい。



2.会話が苦手な人が最初にやめること

会話が苦手な人は、

「何を話そう?」

と考えます。

しかし、ここで発想を変えてみましょう。

「何を話すか」ではなく、

「何を聞くか」

を考えるのです。

例えば、初対面の取引先とのゴルフ。

「最近、ゴルフされていますか?」

と聞く。

「月に1回くらいですね」

と返ってきた。

ここで、

「そうなんですね」

で終わらせる。

これは会話が止まります。

でも、

「月1回なんですね。最近、一番印象に残っているコースはありますか?」

と聞けば、会話は続きます。

さらに、

「そこは何が良かったんですか?」

と聞く。

すると相手は、

自分の好きなコースについて話し始めます。

あなたは、

相手の好きなことを聞いているだけ。

それなのに、

「話しやすい人」

という印象が残ります。



3.質問には「深さ」がある

質問には段階があります。

例えば、

「ゴルフしますか?」

これは、

Yes / No

で終わってしまいます。

次に、

「どのくらいゴルフをされますか?」

これなら少し広がります。

さらに、

「ゴルフのどんなところが好きですか?」

ここまでいくと、

相手の価値観が見えてきます。

そして、

「それって、仕事にも似ていますね」

とつなげれば、

ゴルフの話からビジネスの話へ自然に移ることができます。



4.エレガントな質問は「尋問」にならない

ここで注意が必要です。

質問が上手くなろうとして、

質問を連発してはいけません。

「どこに住んでいますか?」

「何歳ですか?」

「会社はどこですか?」

「売上はいくらですか?」

これでは尋問です。

エレガントな会話には、

「質問 → 共感 → 自分の一言 → 質問」

というリズムがあります。

例えば、

「○○カントリークラブによく行かれるんですね」



「私も以前、一度行ったことがあります」



「景色がすごく印象的でした」



「○○さんは、あのコースのどこがお好きですか?」

こうすると、

一方的な質問ではなく、会話になります。



5.「相槌」は、会話のアクセルではなく安心装置

相手が話しているとき、

「はい」

「なるほど」

「そうなんですね」

「それは面白いですね」

と相槌を打つ。

簡単に見えます。

しかし、相槌には大きな役割があります。

それは、

「私はあなたの話を聞いています」

と伝えること。

相手にとっては、

話し続けても大丈夫だという安心感になります。

ただし、

「はいはいはい」

と機械的に繰り返すだけでは逆効果です。

相手の言葉に合わせて、

「それは大変でしたね」

「それは嬉しいですね」

「なるほど、そこがポイントなんですね」

など、

意味のある相槌

を使ってみましょう。



6.一番難しいのは「話を遮らない」

ビジネスの会話では、

「それ、私も知っています」

「私も同じ経験があります」

「それなら、こうしたほうがいいですよ」

と、つい自分の話をしたくなります。

しかし、

相手がまだ話し終わっていないなら、

少し待ってください。

特に、

「アドバイスしたくなった瞬間」

こそ、聞く。

これが重要です。

相手が欲しいのは、

答えではなく、

「話を聞いてほしい」

だけかもしれません。



7.ゴルフには「話さないコミュニケーション」がある

ゴルフでは、会話だけがコミュニケーションではありません。

相手のショットを見守る。

「ナイスショット」と声をかける。

ミスしたら、あえて何も言わない。

疲れていそうなら、少し静かにする。

相手が集中しているときは話しかけない。

これもすべて、

コミュニケーションです。

つまり、

コミュニケーションとは、

「言葉の量」

ではありません。

相手に合わせる能力

なのです。



8.沈黙を恐れない

ビジネスでもゴルフでも、

沈黙が悪いとは限りません。

むしろ、

「沈黙できる関係」

には、一定の信頼があります。

ずっと話し続けなければいけない関係は、

疲れます。

一緒にいて、

話してもいい。

黙っていてもいい。

そんな関係のほうが、長く続きます。

だから、

沈黙=失敗

という考え方を捨ててください。



9.沈黙には「3種類」ある

ただし、すべての沈黙が同じではありません。

① 心地よい沈黙

景色を見ながら、

静かに歩いている。

これは問題ありません。



② 考えている沈黙

質問をされた相手が、

「うーん……」

と考えている。

このときは待ちます。

すぐ別の質問をしない。



③ 困っている沈黙

相手が視線を落としたり、

表情が硬くなったりしている。

この場合は、

「少し答えにくい質問でしたか?」

と話題を変える選択肢もあります。

つまり、

沈黙そのものではなく、沈黙の理由を見る。

これが観察力です。

第2講義で学んだことが、ここでつながります。



10.相手の「好き」を見つける

人は、

自分が好きなことを話しているとき、

自然に表情が明るくなります。

ゴルフ。

旅行。

食事。

車。

時計。

仕事。

家族。

趣味。

スポーツ。

経営。

何でも構いません。

相手が、

「それはね……」

と急に話し始めたテーマ。

そこには、

その人の興味や価値観

が隠れています。

ここを見つけるのが、

エレガントな会話の入り口です。



11.営業マンは「商品」より「人」を見る

営業でありがちな失敗があります。

商品説明を一生懸命する。

性能を説明する。

価格を説明する。

メリットを説明する。

しかし、

相手が何を求めているのかを聞いていない。

これでは、

「売りたい人」

になってしまいます。

一方、

「現在、どのような課題を感じていますか?」

「今、一番困っていることは何でしょうか?」

「理想の状態はどんな状態ですか?」

と聞く営業マンは、

「理解しようとしてくれる人」

になります。

この差は大きい。



12.「売る前に聞く」

営業の世界では、

「話す力」が注目されがちです。

しかし、

売れる営業マンほど、

聞いている時間が長いことがあります。

なぜでしょうか?

相手のニーズが分からなければ、

適切な提案ができないからです。

ゴルフでも、

相手がどんなコースを好むのか。

どんなクラブを使っているのか。

どんな悩みを持っているのか。

何を楽しみにしているのか。

聞いてみなければ分かりません。

だから、

「聞くことは、情報収集である。」

と考えてください。



13.聞くことは「相手への敬意」でもある

人は、

自分の話を真剣に聞いてくれる人を、

自然と信頼します。

なぜなら、

「自分を大切にしてくれている」

と感じるからです。

だから傾聴は、

単なるコミュニケーションテクニックではありません。

相手への敬意そのものです。

エレガントゴルフでは、

この考え方を大切にします。



14.今日の実践ワーク①

「3分間、相手に話してもらう」

2人1組になってください。

Aさんが、

「最近、一番楽しかったこと」

について3分間話します。

Bさんは、

途中で自分の話を入れてはいけません。

できることは、

・相槌
・質問
・表情
・うなずき

だけ。

3分経ったら交代します。

終わったら、

「話していて、どんな気分でしたか?」

と聞いてみてください。

多くの人が、

「思ったより話せた」

「話を聞いてもらえて嬉しかった」

と感じるはずです。

ここに、

聞く力の価値

があります。



15.今日の実践ワーク②

「質問を一段深くする」

次の質問を、

もっと深い質問に変えてみましょう。

「ゴルフ好きですか?」



「ゴルフのどんなところが好きですか?」



「仕事は忙しいですか?」



「最近、仕事で一番面白いと感じていることは何ですか?」



「旅行しますか?」



「今まで行った場所で、一番印象に残っている場所はどこですか?」



質問を、

事実 → 理由 → 感情 → 価値観

へ深くしていきます。

例えば、

「どこへ行きましたか?」



「なぜそこへ行ったんですか?」



「何が一番印象に残りましたか?」



「そういう場所がお好きなんですね」

ここまでいくと、

単なる情報交換ではなく、

人と人との会話

になります。



16.今日の実践ワーク③

「相手の話を要約する」

もう一つ、非常に重要な技術があります。

それが、

要約

です。

例えば相手が、

「最近、仕事が忙しくて、なかなかゴルフに行けないんですよ。でも、久しぶりに行くとやっぱり楽しくて……」

と話したとします。

そこで、

「つまり、お仕事が忙しい一方で、ゴルフはリフレッシュする時間になっているんですね」

と返す。

すると相手は、

「そうなんです!」

と話しやすくなります。

なぜなら、

「ちゃんと理解してくれた」

と感じるからです。



17.やってはいけない「3つの聞き方」

① 話を奪う

「私も同じ経験があります!」

と言って、自分の話に変える。



② すぐにアドバイスする

「それなら、こうしたほうがいいですよ」

と結論を急ぐ。



③ スマートフォンを見る

これは最も分かりやすい、

「あなたの話より、こちらのほうが大事です」

というメッセージになってしまいます。

たとえ無意識でも、

相手には伝わります。



18.エレガントな人は「余白」を持っている

エレガントな会話には、

余白があります。

相手が話す。



少し待つ。



自分が返す。



また相手に返す。

この余白が、

会話を柔らかくします。

すぐに答えない。

すぐに結論を出さない。

すぐにアドバイスしない。

一呼吸。

その余白が、

「大人の会話」

をつくります。



19.ゴルフとビジネスは、ここでつながる

ゴルフでは、

相手のショットを待ちます。

相手が打つまで、

自分は打てません。

ビジネスの会話も同じです。

相手が話している間は、

自分の番ではありません。

相手が話し終えたら、

初めて自分の番が来ます。

この単純なルールを守るだけで、

コミュニケーションは大きく変わります。



20.今日から使える「7秒ルール」

相手が話し終わったと思ったら、

すぐに話し始めない。

心の中で、

「1、2、3……」

と少し待つ。

すると、

「あ、もう一つあるんですが……」

と相手が続けることがあります。

その一言の中に、

本当に話したかったことが隠れている場合があります。

もちろん、毎回7秒待つ必要はありません。

大切なのは、

「相手が本当に話し終わったか?」

を確認する意識です。



21.今日のエレガントゴルフ

第3講義のテーマは、

「会話が苦手な人ほど、ゴルフでは強くなれる」

でした。

しかし、本当の意味は、

「話が苦手でも大丈夫」

というだけではありません。

むしろ、

話すことに自信がない人こそ、聞く力を武器にできる

ということです。

話が上手い人は、たくさんいます。

しかし、

「この人になら話せる」

と思わせる人は、意外と少ない。

だからこそ価値があります。



今日の一言

「会話上手とは、話すのが上手い人ではない。相手が話したくなる人である。」

ゴルフ場で、

無理に話題を探さなくてもいい。

面白い話をしなくてもいい。

知識をひけらかさなくてもいい。

ただ、

相手を見る。

話を聞く。

うなずく。

少し待つ。

そして、

「それは、どうしてですか?」

と聞く。

たったそれだけで、

会話は変わります。

そして、

会話が変われば、

人間関係が変わります。

人間関係が変われば、

ビジネスも変わります。



第3講義・終了課題

次回のゴルフ、または仕事の打ち合わせで、

一つだけ実践してください。

「自分が話す時間を、いつもより20%減らす。」

その代わり、

相手の話を20%多く聞く。

そして、

相手が一番楽しそうに話していた瞬間を一つ覚えておく。

次に会ったとき、

「前回、○○のお話をされていましたよね」

と声をかけてみてください。

人は、

自分の話を覚えていてくれた人

を忘れにくいものです。

それは営業テクニックというより、

一人の人間として相手に敬意を払うこと。

そして、

それこそがエレガントゴルフの本質です。

次回、第4講義では、

「ミスショットに、その人の本性が出る」

をテーマに、

失敗したとき、怒ったとき、予定通りにいかなかったとき――

その瞬間にこそ表れる、

「本当のビジネスマナー」と「感情をコントロールする力」

について考えていきます。

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