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【第14回】マッチメイクにも対価を払う!? 国際親善試合が「有料」である理由

日本の春休み期間。 平日の夕方、本来ならトレーニングが行われている時間にバルセロナの街クラブのグラウンドを訪れると、普段この時間帯には聞きなれない笛の音が響いてきます。

ピッチで始まったのは、地元の街クラブと、日本から遠征に来たチームによる国際親善試合。 公式戦と見紛うばかりの緊張感に包まれた日本チームに対し、どこかリラックスしながらも鋭い眼光を向けるバルセロナの選手たち。

これはリーグ戦ではなく、ただの「練習試合」です。

日本で練習試合といえば、どちらかのチームがグラウンドを押さえ、指導者や年代によっては保護者が審判を務め、基本的には「無料」で行われるのが一般的でしょう。 しかし、ここスペインでは、この練習試合にすら「正当な対価を払う」という文化が根付いています。

なぜ、ただの練習試合にお金を払うのか? そこには、日本の育成現場がもっと「化ける」ための、環境作りのヒントが隠されていました。



■ 「審判」はボランティアではない

スペインの練習試合が有料である最大の理由のひとつは、「公式の審判を派遣してもらうから」です。

日本では制度上、指導者が審判ライセンスを兼任して取得することが多いため、練習試合では監督やコーチ自らが笛を吹く光景をよく目にします。しかし、これには大きな弊害があります。審判という「中立」の立場であるはずの指導者が、笛を吹きながら試合中に自チームの選手へ大声でコーチングをしてしまうという、いびつな現象が日常的に生まれてしまうのです。

一方、ここスペインでは「指導」と「ジャッジ」の役割は完全に分離されており、日本のように指導者が審判ライセンスを兼任するという文化(制度)自体が存在しません。そのため、いかなるカテゴリーの練習試合であっても、指導者が自ら笛を吹くことは絶対にないのです。

ピッチに立つ審判は、連盟から派遣される「第三者のプロ」であり、そこには当然、審判費が発生します。 これを日本のチームはクラブを通じて支払います。これが「有料試合」の入り口です。


■ 想像を超える「パッケージ料金」の正体

そもそも、スペインの地元クラブ同士で練習試合が行われるのは、主にリーグ開幕前のプレシーズンや、シーズン終了後のポストシーズンに限られます。シーズン中は毎週末が公式リーグ戦で埋まっているため、平日に地元同士で練習試合を組む余白はほとんどありません。プレシーズン等に地元同士で試合を組む場合でも、両チームで純粋に「審判代」を負担するだけで済みます。

しかし、これが「日本からの遠征チーム」との国際親善試合となると、話は全く変わってきます。 日本の春休みは、スペインのクラブにとってシーズン真っ只中。提示される代金が、単なる審判代だけでは済まない、想像を遥かに超える高額な「パッケージ料金」に跳ね上がるのです。

それは、スペインのクラブにとってこれが「魅力的なビジネス」になるからです。日本チームが支払う高額なマッチメイク代には、以下のコストがすべて含まれています。

  • グラウンド使用料: 本来、その時間にトレーニングをするはずだった別のカテゴリーの枠を空けるための補償。

  • 連盟・協会への事務手数料: 審判派遣や保険の手続き費用。

  • クラブの純利益: 貴重な練習時間を「親善試合」というイベントに割くための対価。

※当然クラブの規模が大きくなればなるほど金額は上昇します。

スペイン人にとって、海外チームとのマッチメイクとは単に「場所と人を貸す」という話ではなく、そのメリットの大部分は、この「ドライなビジネス」にあるのではないでしょうか。


■ 8割のチームは「練習の延長」でやってくる

ここで面白いのが、両チームの「温度差」です。

日本側は「スペインの街クラブと真剣勝負だ!」と高い対価を払って意気込みますが、対するスペインの選手やコーチにとって、それはあくまで「ちょっと特別な練習セッション」。 彼らはいつも通りリラックスしてピッチに現れ、練習の延長としてプレーし始めます。

ところが、この物語には続きがあります。

もし日本チームが健闘し、2点、3点と先行しようものなら、彼らの「目の色」が一瞬で変わるのです。

「練習の延長」というリラックスした空気が消え、ピッチには一気に「絶対に負けられない」という殺気が漂い始めます。戦術のギアが上がり、強度が跳ね上がり、最後にはきっちり試合をひっくり返されてしまう試合も多いです。

この「リラックスした状態から、一瞬で牙を剥く強度」。 これこそが、金を払ってでも買う価値のある、日本にはない「本物の環境」なのです。


■ 私たち親ができる「処方箋」

もし、お子さんのチームで「遠征費がかかる」「マッチメイク代が必要」という話が出たとき、それを単なる「出費」と考えないでください。

それは、わが子に「本物の中でプレーする時間」をプレゼントしているということです。

「無料(タダ)」でできることは素晴らしいですが、無料の環境では、どうしても時間のルーズさやジャッジの曖昧さが紛れ込みます。 サッカーという文化の質を高め、子どもたちのプロ意識(自律心)を育むためには、適切な対価を払い、環境の質を担保する必要があります。

審判に敬意を払い、運営コストを理解する。その大人の背中を見て、子どもたちは「サッカーは大切に扱われるべき、誇り高いスポーツなんだ」と学ぶのです。


💡 次回予告

第15回は、いよいよ季節が動きます。「夏休みとサマースクール・キャンプ事情 ~バルセロナの夏が始まる~」。 バカンスの国スペインでは、夏休みに一切のチーム練習がなくなります。その間、子どもたちはどう過ごし、どう成長するのか?驚きの夏休み事情を公開します。


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