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kamei_kana1223
傘と笑いを置いてった
「きゅ・う・りょう!きゅ・う・りょう!」
家のカレンダーを見て、給料コール(と名付けた)をしているのは大学生の長男である。
彼は、長期バイトを始めて初の給料日を迎えた。
よほど待ち遠しかったのだろう。
「きゅ」と「りょう」のタイミングで手を叩きながらのコールだ。
インフルエンザで半分しか働けなかった年末年始の短期バイトの稼ぎと、お年玉で半年凌いできたが、いよいよ限界だったらしい。
👛
昼食後「ちょっと出掛けてくる」と言う。
散歩好きな長男のことだ。
多分あちこちショップを覗いて、洋服やら下見をするのだろう。
息子の行き先を聞き、ついでに近くの店で買い物を頼み現金を渡した。
それから長男は日焼け止めを塗り、ようやく出掛けていった。
👛
家を出て10分経たず、長男からLINEが。
「俺の財布、家にある?」
知らんよと思いながらも見渡すと、棚の上に財布があった。
私は忘れられた財布の写真を撮って、長男に送りつけた。
長男は財布を取りに戻って来ると、無駄足に舌打ちでもしそうな雰囲気で言い訳をしながら、財布を鞄にしまっていた。
「日焼け止めを塗ってるうちに、財布のこと忘れてたわー」
そして続けて
「2本入ってたわー」
抑揚のない口調で言いつつ、1本の折り畳み傘を取り出し、財布のあった所に置いて、再び出ていった。
私は静かになった部屋で、今さっき当たり前のように流れていった光景を思い出していた。
財布を忘れた長男が、
折り畳み傘は2本入れていたと言う。
財布は忘れるのに、傘は2本入れちゃうんだ。
いやいや。
財布を忘れるのは分かるけど、傘は2本入れないだろ。
何で2本入れた?!
何も珍しいことではないでしょという雰囲気で傘を置いていった長男が可笑しくて、思い出し笑いしてしまった。
帰ってきたら、2本入れた理由を聞いてみよう。
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