あなたと、強くなりなさい
#探偵ごっこの帰り道
#第二部
#あなたの横顔に恋をする
#世界が少し優しく見える
#自分を少し好きになれる
#その何気ない視線があなたの心を温める
高校二年の秋。
教室には、昼休みのざわめきが広がっていた。
彼は、私の机の横に寄ってきて笑った。
「今日も一緒に帰ろう」
私は、小さくうなずいた。
授業が終わる。
教室を出ようとした、そのときだった。
廊下の向こうに、彼の背中が見えた。
隣には、別のクラスの女の子。
「この間はありがとう。」
女の子が笑う。
「すごく楽しかった。」
彼も笑った。
「こちらこそ。」
少し歩いてから、彼が言う。
「今度は、どこ行く?」
その声だけが、 やけにはっきり聞こえた。
女の子は、うれしそうに笑った。
私は、昨日の帰り道を思い出した。
教室のざわめきが、ひどく遠くなった。
---
帰り道。
信号が青に変わっても、
私は、しばらく渡れなかった。
家に帰ると、あなたは何も聞かなかった。
ただ、温かい紅茶を二つ並べた。
湯気だけが、静かに揺れている。
「本当に優しかったのに……」
そう言うと、
あなたはうなずいた。
しばらく黙ってから、
窓の外を見ながら静かに言った。
「そうね。辛かったね」
「でも、そんな恋をしても、幸せにはなれない。
お母さんは、そう思う」
そして、少しだけいたずらっぽく笑った。
「強くなりなさい。
お母さんみたいに」
今日の紅茶は、少しだけ苦かった。
–––
それから私は、放課後になると、
図書室へ向かった。
本を開く。
ページをめくる音だけが、
静かな部屋に響いていた。
気づけば、いつも同じ男の子が隣に座っていた。
彼は、何も言わない。
シャーペンを走らせる音だけが、
規則正しく続いていく。
ふと顔を上げる。
目が合う。
彼は、少しだけ笑った。
それだけだった。
–––
ある日。
彼は参考書に視線を落としたまま言った。
「今度、図書館に行かない?」
「……テストも近いし」
私は、小さく返事をした。
週末の図書館。
大きな窓から、
西日が机の上に伸びている。
参考書とノートが、 二人分並ぶ。
ページをめくる音が静かに重なる。
言葉は、交わさない。
時々、彼が顔を上げると、
私は、あわてて参考書に目を戻した。
帰り道。
バッグの中で、参考書の角が指に触れる。
家に帰ったら、 また続きを読もう。
見上げると、秋の空は少しだけ高くなっていた。
