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cute_violet8353
黄昏の夏休み。
「俺の夏休み、終わっちゃった。」
こんなにも切ない
オープニングタイトルを、
自分は知らない。
『キングダムハーツⅡ』
自分にとって、
シリーズで初めて遊んだ作品だった。
本当は『Ⅰ』から遊びたかった。
宇多田ヒカルのCMを見るたびに
自分の心は躍った。
でも、「買って」と言い出せなかった。
だから、
ようやく手にした『Ⅱ』は
本当に嬉しかった。
飛び跳ねたい衝動を抑えながら
スイッチを入れる。
でも、画面に現れたのは、
思っていた主人公ではなかった。
見知らぬ金髪の少年。
「誰なんだよ。」
「早く冒険させてくれよ。」
幼い自分は、そんなことを口にした。
あの頃の自分を叱ってやりたい。
そんな自分でさえも
数時間後には、
金髪の少年と黄昏の町に馴染んでいた。
スケボーで駆け抜ける坂道。
路面電車の走る景色。
友達と食べたシーソルトアイス。
約束を叶えるために始めたアルバイト。
嫌なやつもいた。
言い合いになったこともあった。
そんな何気ない毎日が、
いつしか宝物になっていた。
早く冒険がしたい。
早く主人公に会いたい。
そう思っていたはずなのに、
気づけば願いは変わっていた。
この時間が、
終わらないでほしい。
「俺の夏休み、終わっちゃった。」
ようやく始まる本当の冒険。
待ち望んでいた3人組との旅。
それなのに、自分は思ってしまった。
返してほしい。
あの黄昏の町を。
一緒に過ごした、あの時間を。
日常こそが冒険だった。
何気ない時間こそが、大切な思い出だった。
なんてわがままなんだろう。
でも、終わりがあるからこそ、
その時間は美しくなるのだろう。
今年の夏
悔いのない毎日を過ごしたい。
とりあえず
アイスを食べよう。
思い出の詰まった
あおいアイスを。
