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掌編小説 『姉の友人と僕』


ピンポーン。

​エントランスに誰か来たみたいだ。

​姉がモニターの方へ向かい、自動ドアを開ける。

​うちに来る姉の友人は決まっている。柚香さんだ。

​姉には申し訳ない――いや、申し訳なくは全然ないが、姉より断然可愛い。

​柚香さんは僕のことを何度か見ているので、当然知っている。

​玄関から姉の部屋へ向かう前に、すかさず廊下に出る。

​別に用事なんてない。

​ただ、柚香さんが来たからだ。

​「あ、祐介君」

​「祐介は家でダラダラしてばかりなんだよ」

​(うるさい。黙ってろ)

​姉に心の中で叫ぶ。

​「柚香さん、暑いっすね。今からオレンジジュース飲むんですけど、飲みます?」

​「柚香、何か入ってるかもよ。あ、間接キスとか狙ってる気がする。怖っ!」

​「大丈夫ですよ。毒見も片付けも姉がやりますから」

​僕はキッチンへ行き、オレンジジュースをグラスに注ぐ。

​柚香さんの分は来客用。

​というより、ほぼ柚香さん専用になっているグラスだ。

​姉には普通のコップ。

​姉の部屋のドアをノックして、二人にオレンジジュースを渡す。

​「相変わらず区別するよね〜」

​「そりゃ、お客さんだからね」

​柚香さんは、僕らの会話を楽しそうに聞いている。

​「弟っていいなー、楽しそうで」

​「あ、いつでも弟になりますから、呼んでください」

​「呼ぶわけないでしょ。もう出てって!」

​僕は出かけることにした。

​女子二人の話は長く、当分部屋から出てこない。

​さっきの「弟になりますから」は、もちろん冗談だ。

​……ただ、柚香さんは分かっている。

​僕が誰のことを好きなのか。

​そして、僕が今日誰に会いに行くのかも。

​柚香さんの妹。

​僕の彼女だ。



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