ジョブコーチって何してる人?今さらながら私がしていたこと
いつもの note では、当たり前のように「ジョブコーチ」という言葉を使ってきました。
でもふと立ち止まって思ったんです。
「ジョブコーチって、そもそも何?」
「毎日どんなことしてるの?」
「私が実際にやっていたことって、何だったんだろう」
そう感じている人、実は結構いるんじゃないかなと。
私にとっては当たり前すぎて、書くことすら忘れていました。今日は、これまであまり言葉にしてこなかった「ジョブコーチという仕事」について、少し丁寧に書いてみようと思います。
制度としての「ジョブコーチ」
まず、制度としての話から。
ジョブコーチは、正式には「職場適応援助者」といいます。障がいのある方が働く現場に入り、本人と会社の間に立って、働き続けられるように支援する専門職です。
ジョブコーチにはいくつか種類があります。地域障害者職業センターに所属する「配置型」、社会福祉法人などに所属して複数の企業を訪問する「訪問型」、そして企業の中に在籍して自社の従業員を支援する「企業在籍型」の3種類です。
私は JEED(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構)認定の企業在籍型ジョブコーチとして、6.5年活動してきました。2021年度の公式データでは、企業在籍型ジョブコーチは全国で182人。
私はこの182人側、つまり助成金を活用して活動していたジョブコーチです。助成金を活用せずに活動している人はこの数字に含まれていないので、実際はもう少し多いはずだと感じています。
制度の説明としては、ここまでならどこかで読んだことがある人もいるかもしれません。でも「実際に何をしているのか」までは、あまり知られていない気がしています。
私が実際にやっていたこと
数字だけで言うと、47名以上を支援して、定着率は95.7%でした。
でもこの数字の中身って、外からは見えないですよね。実際にやっていたことを、いくつか挙げてみます。
実は、採用の入り口から関わっていた
意外と知られていないんですが、私の仕事は「入社した後の対応」だけではありませんでした。
前職では、求人の手配や結果の通知こそ人事の担当でしたが、書類選考から見学、実習、面接、採否判断、入社手続き、入社説明会までを、基本的に私一人に任されていました。
もちろん採否の理由はその都度上司に報告し、共有しながら進めていましたが、現場で見立てる部分はほぼ一人で担っていた形です。
一方、特例子会社では、実習から面接、採否判断までを担当していましたが、こちらは私1人ではなく2名体制。面談後にお互いの見立てをすり合わせ、さらに全体会議で他の支援員の意見も聞きながら、採否を決めていました。
同じ「採用に関わるジョブコーチ」でも、一人で見立てる現場と、複数の目ですり合わせる現場、両方を経験できたのは大きかったです。
「自分の見立てが正しいか?」を常に問い直す癖は、この2つの現場の違いから身についたものかもしれません。
働く場所によって関わる範囲は違いましたが、共通していたのは「その後にジョブコーチとしての業務が始まる」ということ。
つまり、その人がどんな特性を持っていて、どんな環境なら力を発揮できそうかを、採用の段階からすでに見立てながら関わっていたということです。入社してから初めて本人と出会う支援者とは、また少し違う関わり方だったと思います。
①本人との面談
「今日どうだった?」を、毎回同じ聞き方はしません。調子が良さそうな日と、なんとなく元気がない日とでは、聞き方も、聞く量も変えます。本人が話しやすい空気を作ることが、支援の入り口でした。
②職場環境の調整
本人に合わせて業務の切り出し方を変えたり、指示の出し方を現場の担当者と一緒に考えたり。「その人ができないこと」を探すんじゃなくて、「その人が力を発揮できる形」を探す作業です。
③上司・同僚との橋渡し
本人が言いづらいことを代わりに伝えたり、逆に会社側の事情を本人に分かりやすく伝え直したり。どちらか一方の味方になるのではなく、両方の間に立ち続けることが、一番難しくて、一番大事な部分でした。
④小さな変化に気づく観察力
表情、声のトーン、休憩の取り方。言葉にならない変化に気づけるかどうかが、離職を防げるかどうかの分かれ目になることが、何度もありました。
⑤支援者さんとの定期面談
月に1回、そのメンバーを支援している支援者さんと本人を交えた定期面談も、大事な仕事のひとつでした。社内だけで完結させず、本人を普段から見てくれている支援者さんの視点も入れながら状況を確認する。この「一人で抱えない仕組み」が、結果的に定着率にもつながっていたと思います。
学び続けることも仕事のうち
障害者職業センターが定期的に開催している研修修了者向けのサポート研修にも参加していました。現場で得た気づきをアウトプットしつつ、新しい情報をインプットする。
ジョブコーチって、一度資格を取ったら終わりの仕事ではなく、ずっと学び続ける仕事でもあります。
前職では、法定雇用率が未達の状態からスタートして、7ヶ月で2.7%まで引き上げたこともあります。15人のチームを1人で育てながらの数字でした。
ジョブコーチだったからこそ、見えていたこと
この仕事の面白いところは、当事者側にも、会社側にも、両方の視点で立てることだと思っています。
当事者として働く今の私だからこそ分かるのは、「本人にとっての当たり前」と「会社にとっての当たり前」が、実はズレていることが本当に多いということ。
そのズレに気づいて、言葉にして、橋をかける人がいるかどうかで、その人が働き続けられるかどうかが変わってきます。
これは障がいのある方に限った話ではなくて、どんな組織にも起こりうることだと思います。
「なんとなく噛み合っていない」を放置せず、間に立つ人を置くという発想そのものが、実は組織づくりのヒントになるんじゃないかなと。
おわりに
ジョブコーチという仕事について、少しでも伝わっていたら嬉しいです。
もちろん、私が書いたのはあくまで私が経験した範囲の話で、支援のやり方は人によっても現場によっても違うと思います。「へえ、そういう仕事もあるんだ」くらいに受け取ってもらえたら、嬉しいです。
もし「もっと具体的な支援の仕組みや、企業側で取り入れられる考え方を知りたい」という方がいたら、Brain の方でもう少し踏み込んだ内容を書いています。よかったら覗いてみてください。
