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【ショートホラー】:「悪の十字架」

「悪の十字架・・・」

これは、俺が学生時代、古びたマンションの警備員として夜勤のバイトをしていた頃の話だ。

そのマンションの地下には、昔テナントが入っていたらしいのだが、今は完全に放置されていて、住民も立ち入らない開かずの間みたいになっていた。

ただ、夜間の巡回ルートには「地下廊下の異常チェック」が含まれていた。

ある日の深夜2時すぎ。 いつものようにライトを持って地下へ降りていくと、一番奥の鉄扉の前に、見慣れない男が立っていた。

黒いパーカーのフードを深々とかぶり、じっと扉を見つめている。

不審者だと思って、俺は身構えながら声をかけた。

「ちょっと、そこの人。ここで何してるんですか」

男は振り向かない。 ただ、その男の背中越しに見える鉄扉を見て、俺は背筋が凍りついた。

扉の表面に、真っ赤なスプレーででかでかと「十」の字が書かれていたんだ。

ペンキが滴り落ちて、まるで血の十字架みたいに見えた。昼間の巡回時には、そんなもの絶対に無かった。

「……おい、君。それ、君が書いたのか?」

俺がライトの光を男の足元に向けながら一歩踏み出した瞬間、男がバッとこちらを振り返った。

浅黒い顔に、落ちくぼんだ目。手に何か金属製の工具のようなものを握りしめている。

男は俺を睨みつけると、掠れたような異様な低音で、何か呪文のような言葉をボソボソと呟き始めた。

何を言っているのか聞き取れない。ただならぬ気迫に息が止まる。

次の瞬間、男は興奮したように激しく叫ぶと、手に持っていた工具で、その赤い十字架が描かれた鉄扉をガンガンと殴りつけ始めた。

激しい金属音が地下廊下に響き渡る。狂気以外の何物でもなかった。

俺は恐怖で足がすくみながらも、必死でマイクを取り出し、防災センターに応援を呼んだ。

「地下で不審者!暴れています、至急来てください!」

数分後、駆けつけた先輩警備員とふたりで、なんとかその男を取り押さえた。

警察が来るまでの間、男は床に組み伏せられながらも、血走った目で扉を指差し、わけのわからない言葉を何度も何度も叫び続けていた。

……翌日の夕方。

警察の取り調べや現場検証がひと通り終わり、防犯カメラの映像なんかも確認された後、あの男の「真実」が判明した。

警察から連絡を受けた先輩が、呆れ果てた顔で俺に教えてくれた。

あの男は、別にカルト教団の信者でも、凶悪な狂人でもなかった。 日本語がほとんど喋れない外国人労働者で、ひどい寝不足と空腹でパニックになっていただけだったらしい。

男は地下の奥に『24時間営業の深夜スーパー』があると勘違いして迷い込み、閉まっている扉を見てパニックを起こした。

そして、あの真っ赤な「十」の字の落書き。あれは数時間前に近所のガキがイタズラで書いたもので、男とは一切関係がなかった。

男が興奮して叫んでいた、あの不気味な言葉。 あれは、日本語の読めない彼が、店の看板(だと思っていたもの)に書かれた文字を、必死にカタコトで解読して口に出していただけだったのだ。

そこに書かれていた本来の文字は――










『開くの、10時か』


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悪の十字架と、ビビりだったあの頃

この物語は、オイラが小学生だった頃に校内で大流行したダジャレ怪談を、ちょっとドラマチックにGeminiで再構成してみたものである。

それにしても、なんというくだらなさであろうか。

我ながら実にくだらない。しかし、ふと考えてみると、オイラのくだらないものに対する執着や原点のようなものは、案外このあたりにあるのかもしれないのだ。

思い返せば当時の学校には、この手のくだらない話が猛烈な勢いで蔓延していた。

「近藤、迎いに行こう!」(コンドーム買いに行こう)だの、「恐怖の味噌汁」(今日、風呂、味噌汁)だの、「死者も食うおばあさん」(シシャモ食うおばあさん)だの、大人が聞いたら脱力して膝から崩れ落ちそうなネタばかりである。

小学生特有の、ちょっと背伸びした言葉を使いたがるくだらなさが全開であった。今朝、ふとそんな懐かしいくだらなさを思い出してしまい、勢いでこの記事を書いてみたというわけだ。

だが、当時のオイラたちはそんなくだらないギャグで笑い飛ばさなければやっていけないほど、実は日常の恐怖と戦っていたのである。

何しろ、あの頃の世の中は怖ろしいものに溢れていた。

街には「口裂け女」が出ると噂されて本気で震え上がり、学校の上映会では『ピカドン』を見せられてトラウマを植えつけられ、本屋で買った『恐怖の心霊写真』の本を開いては夜もおちおちトイレに行けなくなる始末であった。

さらに追い打ちをかけるように、我が母上が「どうしても観たい」と言い出し、映画館へ連れていかれたのが、あのアクの強すぎるホラー映画『エクソシスト』であった。

幼少期のオイラは、どこに行ってもひたすらビビり倒していたのである。


ところが、人間というのは実に勝手な生き物で、中学生にもなると事態は一変する。

あんなに恐怖だった原爆のモチーフも、沢田研二主演の映画『太陽を盗んだ男』のようにエンタメとして楽しめるようになっていたし、映画館で『ゾンビ』やスティーブン・キング原作のホラーなどを観ても、へっちゃらな顔をしてコーラを飲めるようになっていたのだ。

「ふん、所詮は作り物さ」などと一丁前にスカしていたのである。



・・・しかし、そんな生意気な中学生になったオイラを、心の底から震え上がらせた映画がひとつだけあった。

破傷風を題材にした映画、『震える舌』である。


ゾンビや悪魔なら「まあ、日常で遭遇することはないだろう」と高を括っていられる。

しかし破傷風は違う。そこらへんの空き地で転んで怪我をしたら、マジで自分もかかってしまうかもしれないのだ。

「リアルに自分がなるかもしれない恐怖」を知ったオイラは、やっぱりどこまでもビビりのままであった。

あの頃のくだらないダジャレ怪談は、そんなビビりなオイラが恐怖から身を守るための、ささやかなバリアだったのかもしれない。

さて、みなさんの「くだらない原点」や、忘れられないトラウマ映画は何でしょうか。

くだらないと笑い飛ばしながらも、どこか愛おしいあの頃の記憶。

もし思い出のダジャレや、今でも思い出すと少し背筋が寒くなるようなリアルな恐怖体験があったら、ぜひコメントで教えてくださいね。


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