やばい、新酒のラベルをもう考えないとならない
クラウドファンディング用のラベルやアートセットを半年近く考えて、ようやく形が見えてきた。
普通なら、ここで少しくらい休んでもいい。
しかし、ワイナリーの仕事はそうならない。畑ではブドウが育っている。収穫は待ってくれない。醸造が始まれば、仕込み、分析、移動、洗浄、瓶詰めの準備に追われる。
そして、その先には当然ながら新酒がある。
つまり、もう次のラベルを考えないとならない。
ワインができてから考えるのでは遅い
以前の私は、ワインがだいたい仕上がってからラベルを考えていた。
味を見て、名前を決めて、写真やイラストを探し、半日ほどパソコンの前に座る。何案か作って、その中から一番まとまって見えるものを選ぶ。
それでも商品にはなった。実際、地方の小さなワイナリーなら、そのくらいの進め方でもなんとかなる。しかし、今はそれでは弱いと思っている。
ワインができて、瓶詰めの日程が決まり、慌ててラベルを作る。これではラベルは、最後に貼り付ける「説明書」になってしまう。
本来はもっと前から考えるべきなのだ。
どんな味のワインを作るのか。誰に飲んでもらいたいのか。どんな場所に置かれたいのか。手に取った瞬間に何を感じてほしいのか。
ラベルは、その答えを一枚にまとめる作業でもある。
バギーを見ていたら、ワインのラベルができそうになった

先日、タミヤのグラスホッパーを眺めながら、ボディのカスタムデザインを考えていた。白い車体に、緑と赤のライン。そこに少し黒が入る。
元のデザインを壊しすぎず、レーシングカーのようなスピード感を加えたい。
最初はマルティーニ・レーシングの配色を参考にしていた。白い車体に青、紺、赤のストライプ。非常に完成度が高い。ただ、そのまま寄せれば当然マルティーニになってしまう。

そこで、ラインの構成は残しながら、グラスホッパー本来の緑、赤、黒に置き換えてみた。すると、それが妙にワインラベルに見えてきた。

直線では少し硬い。そこでラインをゆるく曲げてみる。
ラベルの下から入り、中央を横切り、右上へ抜けていく。レーシングストライプのようでもあり、風の流れのようでもあり、山道のカーブのようにも見える。悪くない。いや、かなり良い。

グラスホッパーのボディを考えていたはずなのに、気づけば新酒のラベル案ができ始めていた。こういう脱線は、たいてい仕事になる。
元ネタを消して、自分のものにする
デザインには、必ず何かしら元になるものがある。
完全に何もないところから生まれることは、ほとんどない。
昔のポスター、レコードジャケット、レーシングカー、スニーカー、化粧品、雑誌、工業製品。目に入ったものが頭の中で混ざり、少しずつ別の形になって出てくる。
問題は、どこまで変えれば自分のものになるのかだ。
マルティーニのストライプを、そのままワインに使えばパロディである。面白くはあっても、商品として長く使うには弱い。
色をグラスホッパーのものに変えるだけでも、まだレーシングストライプの印象は強い。
さらに線の太さを変え、曲線にし、ラベルの中での位置をずらす。ブランド名との関係を調整し、余白を増やす。そうやって元ネタの輪郭を少しずつ消していく。最後に残るのは、緑、赤、黒の曲線と、白い余白。
そこまで行けば、もう単なるレーシングカーの引用ではない。
畑のラインにも見えるし、北アルプスの稜線にも見える。ブドウの蔓にも、風にも、液体の流れにも見える。見る人によって意味が変わるくらいが、ちょうどいい。
新酒は、今までより少し軽く見せたい
最近考えているのは、ワインそのものを難しく見せないことだ。
日本ワインは、どうしても真面目になる。
土地、品種、栽培、醸造、収穫年、樽、分析値。もちろん全部大切なのだが、売り場で最初に見えるのは味ではなくボトルである。
説明を読まなければ魅力が分からない商品は、最初の一歩が重い。もう少し軽やかでいい。買ってみたい。置いておきたい。写真を撮りたい。誰かに渡したい。そこから飲んでもらい、味を知ってもらえばいい。
今回考えている曲線のラベルには、少しスピード感がある。古典的なワインラベルよりも、スポーツ用品やプロダクトデザインに近い。それが新酒には合う気がしている。
熟成を語るワインではなく、今の空気をそのまま瓶に入れたようなワイン。そんな見え方にしたい。
まだ何も決まっていない
とはいえ、現時点で決まっているのは、緑、赤、黒の曲線が面白そうだということくらいだ。ワインの名前も決まっていない。ボトルの形も確定していない。
紙を白にするのか、銀にするのか、透明にするのか。線を印刷にするのか、箔にするのか。曲線を一本の帯として見せるのか、複数の細い線にするのか。文字を黒にするのか、グレーにするのか。そもそも新酒に使うのか、別のシリーズに回すのか。考えることは山ほどある。
ただ、デザインはこういう初期段階が一番面白い。
まだ正解がない。失敗もしていない。何にでもなれる。
そして、おそらくこのラベルも、ここから何十回か壊すことになる。
ワインを作りながら、次の顔を作る
ワイナリーをやっていると、完成したものを眺めている時間はほとんどない。
一本できたら、次の仕込み。一本売れたら、次の企画。ラベルが完成したら、次のラベル。終わらない。
しかし、以前のように半日で適当にまとめるつもりもない。
ワインの中身だけでなく、その周辺にある世界まで作る。それが今やろうとしていることだからだ。
というわけで、やばい。
クラウドファンディングが始まったばかりなのに、もう新酒のラベルを考えないとならない。でも、グラスホッパーを眺めていたら、少しだけ入口が見えた。次のラベルは、緑と赤と黒の曲線になるかもしれない。
