【🎨展覧会レポ】東京都現代美術館「エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし」
【#335、約5,900文字、写真約50枚】
東京都現代美術館で開催中の「エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし」に、子ども2人と行きました。その感想・レビューを書きます。
▶︎ 結論
それなりに満足できた展覧会でした。良かった点は、1)エリックの生い立ちや過去の経歴を作品とともに知れる、2)『はらぺこ』に思い入れがある人は豊かな気持ちになる、3)会場内が広々快適だったことでした。ただし、子どもへのアート鑑賞を想定しているにもかかわらず、単調に原画を展示するだけの構成だった点は、改善の余地が大きいと思いました。
おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★★☆☆
混み具合:★★★☆☆
展覧会名:エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし
場所:東京都現代美術館
会期:2026年4月25日(土)~7月26日(日)
休館日:月曜日
開館時間: 10:00~18:00
住所:東京都江東区三好4丁目1−1
アクセス:清澄白河駅から徒歩約10分
入場料(一般):2,300円
事前予約:オススメ
所要時間:約1時間半
撮影:約1/3可能(ケータイのみ)
主催:読売新聞社ほか
巡回:福岡県立美術館(10月23日~12月20日)→あべのハルカス美術館(2027年3月20日~5月9日)
URL:こちら
▶︎ 訪問のきっかけ

過去に開催されたエリック・カールに関する展覧会は「絵本だけ展示してるだけやろ…」と思い、訪問しませんでした。
しかし子どもがいる現在では、1)『はらぺこあおむし』が好きな子どもと美術館に行く良いきっかけだと思った、2)美術館の横には木場公園があるため子どもは大喜び、3)私は東京都現代美術館(以下、MOT)に久しぶりに行きたかったことが理由となり、訪問を決めました。
▼ 前回、MOTへ訪問した展覧会




チケットは事前に購入しました。一般の観覧料は2,300円!うーん…(高い)。小学生以下の子ども2人は無料だったので、実質1人767円と考えて、ギリギリ納得しました。

▶︎ 「エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし」感想

本展では、『はらぺこあおむし』(略)など27冊の絵本の原画にあわせ、グラフィックデザイナー時代の作品、最初の構想段階で作られるダミーブック、コラージュに使用する素材など、約180点を展示します。原画の色鮮やかさ、デザイナーとしての造本の工夫、そして絵本に込めた優しいまなざしを体験いただけます。(略)デザインに関心のある大人にも、改めて彼の魅力を紹介します。
この展覧会は『はらぺこあおむし』日本語版50周年を記念して開催。私の子どもは、ライナスが持っている安心毛布のように『はらぺこ』(我が家での親しみをもった呼び方)が印刷されたタオルを、家でも外でも持っています。50年間、日本の子どもたちの安寧に貢献してきた『はらぺこ』は偉大です。

この展覧会は、読売新聞社が共同主催者です。MOTの次は、福岡県立美術館、あべのハルカス美術館を巡回予定。そのため、SNSや各種メディアでの宣伝、グッズ販売にもかなり力が入っていると感じました。
✔️ 会場構成と写真撮影

展覧会は、3階と1階で構成。撮影可能場所は、3階の一部廊下とフォトスポット、1階のすべてでした。ただし、カメラではなく、ケータイでのみ撮影が可能です。


注意書きには「他のお客様の鑑賞を妨げるような撮影はご遠慮ください」とありました。カメラでは、構えて丁寧に撮影してしまうため、サクサク撮影するスマホならOKという判断なのでしょうか。



✔️ 『はらぺこあおむし』とは?

エリック・カール(1929〜2021)がつくった『はらぺこあおむし(The Very Hungry Caterpillar)』の原作は1969年。現在、世界70カ国で翻訳されているベストセラーです。
展覧会の目玉は、マサチューセッツ州にある「Eric Carle Museum」(2002年開館)から、原画が約180点来日していることです。

エリックは、1980年に来日した際、日本には絵本に関する美術館が約20あったことに驚いたそうです。そこで、自宅があったマサチューセッツ州に絵本美術館の開業を考え始めました。
▼ 日本にある絵本美術館の例
中でも、エリックは「ちひろ美術館」の創設者・松本猛にアドバイスをもらい、結果的に4,100㎡の美術館をつくりました。エリックと日本に、そのようなつながりがあったとは。日本の絵本文化、恐るべし!
また、エリックは、穴あけパンチを使っている時『はらぺこ』で使用されているアイデアを思いついたそうです。

日本で『はらぺこあおむし』の初版は1976年。1969年のアメリカ初版では、穴を開けるなど技術的な面により現地で製本できず、日本の会社が印刷を担当したそうです。
エリックと日本との関係がなければ、『はらぺこ』の絵本もなかったし、「Eric Carle Museum」もなかったかもしれません。
✔️ 『はらぺこ』以外の絵本もいっぱい

会場には、アクリル、絵の具、コラージュなどによる原画が並んでいました。また、絵本の下絵となる「ダミーブック」も多く展示されていました。
その中には『はらぺこ』当初のアイデアもありました。最初は、ミミズが果物などをたくさん食べて太る『ミミズのウィリーの1週間』という内容だったものが『あおむし』になったそうです。我が家の子どもも『ミミズ』の安全毛布をがお気に入りになっていたのかも…🪱
エリックは『はらぺこ』で成功した後、蜘蛛、こおろぎ、蛍、コメツキなど、虫を使った絵本を出版しました。それらは『はらぺこ』ほど有名にならなかったようです。




私にとって、エリック・カール=『はらぺこあおむし』です。それ以外の絵本を知りませんでした。あまりにも1作目がヒットすると、次のヒットをつくるのは難しいです。子どもに聞いたところ、学校で『できるかな?あたまからつまさきまで』を読む機会はあったそうです。

『はらぺこ』以降、それを超える大ヒットがなかったとは言え、エリックがつくった明るく楽しい絵本を通して、日本をはじめ世界中の子どもたちの世界を豊かにしたことは間違いありません🥇
✔️ ドイツでの体験が原動力

エリック・カールは、アメリカで生まれました(1929年)。そして6歳の時、ドイツへ移住(両親はドイツ人)。明るい雰囲気のアメリカで育ったものの、ドイツでは、規律正しく、戦争中の暗い状況に戸惑ったそうです。
そのドイツ時代、退廃的な芸術とされた、ピカソ、クレー、マティスなどの複製画を先生からこっそり見せてもらい、衝撃を受けました。

その後、シュトゥットガルト州立芸術アカデミーに入学し、グラフィックを学びました。そして1952年、生まれ故郷のニューヨークへ移住。デザイナーのレオ・レオニに押しかけて、自身のポートフォリオを見せ、仕事をゲット。絵本の世界へ入りました。

エリックの絵本では、1つのページ内でたくさんの色が使われています。例えば、赤を表現する場合でも、さまざまな赤をコラージュしています。エリックにとって、暗いドイツで、明るい作品に出会えた反動が『はらぺこ』をはじめ、カラフルで楽しい作品づくりに影響したと思いました。
✔️ 楽しげな来館者たち

展示室内には、多くの人がいましたが、ストレスは少なかったです。MOTは会場が広いから助かります!主催側も、ベビーカーを使った鑑賞を想定した動線にしていると思いました。
館内では、常にワイワイガヤガヤ。しかし、それに対して誰も白い目をしない、優しい世界が広がっていました。「普段の展覧会でも、過度に静かな環境やなくて、これくらいでもええのになぁ」と思いました。

近くにいた保護者は、自身の子どもに「静かに見なきゃダメ!」と注意していました。『はらぺこ』の展覧会くらい、楽しくアートを鑑賞する体験を促してもいいのにな、と思いました。子どもにとって、そのような注意が、将来的に美術館へ行くハードルを上げてしまうと思います。
なお、絵本をベースとした展覧会だと「アートはわからない」ではなく「アートは楽しい」と捉えて鑑賞する人が多いと思います。他の展覧会でも、そのような心構えの人が増えるといいですネ。

また、展覧会の特性上、女性の観覧者が大半でした。男性1人で来ている人はほぼゼロ。近くにいた男女の話を聞いていると、女性は絵の中身を話している一方、男性は「これは絵の具だ、コラージュだ」と技術的な話をしていて、噛み合っていない様子が印象的でした(苦笑。
✔️ ぬいぐるみの値段にサプライズ

最後の展示室は、まるまるグッズ売り場になっていました(さすが新聞社主催の展覧会)。ハンカチが欲しいと思っていたものの、グッズの中で唯一売り切れていて残念でした。

最初はポストカードだけ持ってレジの列に並んでいました。しかし、子どもが『はらぺこ』が大好きなことを改めて思い出し「まぁ、美術館に来てくれたし、1個くらい何か買ってあげてもええか」と思い、小さなぬいぐるみを追加しました。

その後、レジでびっくり。手のひらサイズのぬいぐるみが2,970円!間違いだと思って、値段を聞き直しました(値段を見なかったため、せいぜい800円か、高くても1,500円だと思っていました)。レジで喜ぶ子どもを見て「やっぱり戻してきて」とは言えず、5秒くらい悩んで購入しました。

子どもは寝る際、枕の横にこのぬいぐるみを持っていき、一緒に寝ています。それを見て、2,970円の価値はあったかな…と納得しました。
✔️ 乏しい学び

私が子どもの頃『はらぺこ』に親しんだ記憶はほぼゼロでした。しかし、私の子どもが『はらぺこ』を好きになっている様子や、私が子どもたちに読み聞かせる体験を通して、私も愛着が湧きました。

原画を見て、楽しい会話が広がっていたり、笑顔になっている様子を見ると、それだけで価値はあったと思います。世界、日本、我が家を明るくしてくれて、エリック、ありがとう!
ただし、展覧会の大まかな構成は、『はらぺこ』の成り立ち、エリックのキャリア、原画をもとにしたさまざまな作品紹介のみ。また、展覧会を貫く1本の太いメッセージが不十分だったため、「学び」は得られづらいと思いました。

特に印象に残った内容は、印刷会社や美術館など、日本がエリックに影響を与えていたこと、エリックの背景や人となりが『はらぺこ』などの作風を生み出したことでした。
✔️ 子どもはそれなりに満足

子どもにざっくり感想を聞いたところ「ぬいぐるみを買ったのがうれしかった」「絵が面白かった」とのことでした。ただ、私の子どもたちは、早く展示室から出て、木場公園に行きたい様子でした(汗。
✔️ もっとこう…できたはず!

今回の展覧会は、子どもの来館が通奏低音だったと思います。そのため、会場内は、絵本同様にカラフルな壁を用いたり、低めに作品が掛けられていると思いました。
▼ MOTのアクセシビリティの取り組み
しかし、子どもに門戸を開いている展覧会であれば、もっと子どもフレンドリーな展示方法にすべきだと思いました。私の子どもは、1階に行く前に、3階の展示ですでに飽きていました。また、原画をただ展示するに留まった単調な仕様も気になりました。
例えば、以下のような工夫ができたのではないでしょうか。
会場内に音楽を流す
立体物の展示
さわれる展示
動画作品の展示
プロジェクションを使った没入型の空間演出
スタンプ(クイズ)ラリー
遊び場(ボールプール、塗り絵コーナーなど)の設置
過去の『はらぺこ』グッズの展示
エリックが参考にしたアートの展示
会場外で楽しめるコーナー(フォトスポットなど)
今後巡回する予定の福岡や阿倍野の会場では実現できなくとも、広いMOTならではの工夫があれば良かったと思います。

なお、グッズ売り場の先にあった絵本コーナーでは、子どもは喜んでいました。そのような「楽しい体験」を提供するコーナーを増やすことで、将来MOTに来る動機を子どもに与えられるはずです。
改めて、私は『はらぺこ』人気の理由を考えていました。かわいい絵、カラフルな色使い、絵本の仕掛け。それに加えて、歌の効果が大きいと思いました。会場で音楽を流せなかったのは、権利関係の調整が間に合わなかったからでしょうか?
✔️ 展覧会の間、その後

3階を見た後、子どもが「お腹が空いた」と言うので、中庭で軽食を取りました。そこで子どもは、展示室で比較的静かにしていたストレスを発散していました。


中庭で休憩した後「もう公園に行きたい」という子どもを宥めつつ、1階の展示を見終わって、近所でランチ。その後、木場公園で1時間以上遊びました。



私にとって、約3年ぶりのMOT。私はMOTの広々とした空間で、ダイナミックにゆったりと鑑賞できる常設展が好きです。しかし今回は、子どもの状況を考慮して、常設展に行けなかったのはちょっと残念でした。


子どもは、この豪華な公園が一番楽しかったかもしれません。子どもと一緒では、展覧会を2つ連続で見るのは不可能だと改めて感じました。
▶︎ まとめ
いかがだったでしょうか?エリック・カールが好きな人、『はらぺこあおむし』に思い入れがある人は、子どもも大人も必見だと思いました。広々とした東京都現代美術館ならではの鑑賞しやすい空間も良かったです。ただし、子どももターゲットに入れる上では、もっと楽しいアート鑑賞に改善できる余地が多くあると思いました。
▶︎ 今日の美術館飯

▶︎ 次回予告
次回は、武蔵野美術大学で開催された「卒業・修了制作展」(2026年1月)を投稿する予定です。
▶︎ あなたにオススメ
▼ 絵本を題材にした展覧会(大分県立美術館)
▼ 子どもフレンドリーのお手本と言うべき博物館(韓国)
いいなと思ったら応援しよう!
Thank you for your support!