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【エッセイ】 玉職人に憧れる

私は球技のセンスが限りなくゼロに近い。

それに気づいたのは、小学4年生の時に所属していたソフトボールスポーツ少年団だった。


転勤族だった父の都合で、私は小学校を3回も変わった。
小学4年生という多感な時期に転校させられた私を不憫に思った母は、早く友だちができるようにと、私の意思にかかわらず、私をソフトボールのスポーツ少年団に入れた。


幼少期、父とよく緑地公園でキャッチボールをしていたこともあり、母もソフトボールならと思ったのだろう。

実際、入団するまでは私自身もさほど思うことはなかった。


はじめて違和感を覚えたのは、キャッチボールをしたときだ。

新調してもらったグローブをはめ、相手が投げたボールをキャッチする。
ここまでは何も問題ない。
順調な滑り出しだ。

続いて、グローブにおさまったボールを同じように相手に投げ返す。
この時、思いもしなかったことが起こった。

相手をめがけて投げたはずのボールが、私の手を離れた次の瞬間、地面に叩きつけられたのである。

「久しぶりだから緊張して」

ぽかんと立ち尽くす彼にそう告げ、ボールを拾う。
拾いながら、なんとなく嫌な予感がしてくる。


平静を装いながら、再び相手めがけてボールを投げる。
私の手を離れたボールは、迷うことなく地面に叩きつけられる。

拾って投げる。
叩きつけられる。

拾って叩きつける。

拾って叩きつける。

相手をほったらかして繰り広げられる一人芝居。
違う、ボクはこんなことをするために転校してきたわけじゃない。


軽いキャッチボールに続いて、外野の守備練習に進む。

1列に並び、順番が来たらハーイ!と声を出す。
すると監督が高々とフライを打ち上げる。
あとは落下ポジションに移動してグローブで捕球するだけだ。

先程の失態を挽回すべく、私はやや大きめにハーイ!と言った。
監督が高々とフライを打ち上げる。
私は空を見上げながらボールを追う。

しかし次の瞬間、またしても思いもしなかったことが起こった。

落下ポジションに入った私を嘲笑うかのように、ボールは遥か彼方へと飛んでいってしまったのだ。

冷たい視線を浴びながら、再び列に並ぶ。
私は頭の中で、捕球しそこねた理由を考えてみた。

  1. 上空で強い風が吹いて軌道が変わった説

  2. 監督がフライを打つのを失敗した説

  3. 単純に目測を誤った説


今のところ、どの説も可能性がある(と思いたい)。
しかし、私以外の少年たちはみな楽々と捕球してるのはどういうことか。

そして巡ってきた2巡目。
イクラちゃんの如く、小さめにハーイと言ってフライを要求する。
先ほどと同じような軌道で、監督がフライを打ち上げる。
捕球ポジションに入った私は、通り過ぎるボールを見送る。


この瞬間、3の説が正しいことが立証された。
それと同時に、球技センスが欠如していることが明確に示されたのだった。


小学校では、投げられない捕れないソフトボールで恥をかいた。
中学校では、身長が高いというだけで前衛にさせられ、止められない前衛として恥をかいた。
高校では、身長が高いと言うだけでバスケットボール部に勧誘され、ドリブルができず恥をかいた。


そんな苦い経験を踏まえて、大人になった今思うことがある。

それは、球技ができなくたって生きていける、ということである。
そもそも、人間が球体を上手に扱うなんておこがましいのだ。


そんな私が好きな漫画は『スラムダンク』と『タッチ』


あんなふうになりたいと願ったこともあったけれど、現実は甘くない。

さ、憧れるのはやめましょう!

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