見出し画像

「他者に厳しく、身内に甘い」検察と左派の病理の類似性〜大阪地検・元検事正性暴力事件が浮き彫りにした”沈黙”の正体〜

はじめに

組織の不祥事が発覚した際、私たちは当然のように「第三者委員会による客観的な調査」を求めます。

しかし、法と正義を司るはずの検察庁が、自らの身内で起きた重大な性加害事件において、この「当然」を頑なに拒否し続けている事実があります。

不可解なのは、普段なら権力の横暴や性暴力に対して猛烈な抗議の声を上げるはずの左派やフェミニストたちが、この件に関しては驚くほど静かな事です。彼らは高市首相の動画依頼疑惑に全神経を尖らせ、この問題を忘れてしまっている様に感じられます。

なぜ彼らは沈黙するのか。本稿では、大阪地検・元検事正による性暴力事件から見えてくる、組織とイデオロギーの「身内に甘い」病理を紐解きます。

民間や他省庁では常識の「第三者委員会」

近年、不祥事を起こした組織が外部の有識者による「第三者委員会」を設置するのは、もはや社会的常識です。

例えば、宝塚医療大学などを運営する「平成医療学園」では、理事長の不透明な資金運用が疑われた際、外部弁護士らによる第三者委員会を設置。私学法違反や理事長の「専断的な運営」を厳しく認定する報告書をまとめました(読売新聞)。

防衛省も、1300件超のハラスメント申告を受け、有識者会議等による再発防止策を講じています。

内部の人間だけで調査すれば、どうしても「身内への甘さ」や「組織防衛」の心理が働き、真相究明が「お手盛り」になってしまう。だからこそ、利害関係のない第三者の目を入れるのです。

検察の「徹底した身内庇い」と不気味な閉鎖性

しかし、検察庁はこの常識を真っ向から否定しています。

ここで事件の概要を振り返りたいと思います。

この事件は、大阪地検の元トップ・北川健太郎被告(元検事正)が、部下の女性検事・ひかりさん(仮名)に対して行ったとされる準強制性交事件です。

被害者のひかりさんは、個人情報の漏洩や二次被害の放置など「組織的隠蔽」の疑いすらある状況に苦しみ、検察・法務省から完全に独立した「第三者委員会による実態調査」を求めました。
しかし、検察は「公判中である」などを理由にこれを拒絶。

結局、ひかりさんはPTSDを発症し、「私の訴えは無視され続け、戻る場所がなくなった」と涙ながらに語り、2026年4月に辞職へと追い込まれました。

さらに悪質なのは、彼女が辞表を提出した直後の6月になって、法務省が「2026年度中に最高検による全職員対象のハラスメント調査を実施する」と発表したことです(読売新聞)。

ひかりさんはこれを「『調査をやりましたよ』という既成事実を作るための姑息なやり方」と痛烈に批判しています。

・外部の目は絶対に入れない(第三者委員会は設置しない)
・調査は最高検が自ら行う(身内による調査)
・ひかりさん本人の事件は「個人的問題」として対象外
・結果は公表しない


これは調査ではなく、単なる「免罪符づくり」です。

上のFRaUの記事でも指摘されているように、検察は広報窓口を次席検事に一本化し、個別の記者対応を禁止するなど、極めて閉鎖的な組織です。他者の犯罪は徹底的に追及する一方で、自らの組織内の不祥事に対しては説明責任を果たさず、ひたすら沈黙して嵐が過ぎるのを待つ。

まさに「他者に厳しく、身内に甘い」体質の極みと言えるでしょう。

なぜ左派とフェミニストは「権力による性暴力」に沈黙するのか?

そして、この事件においてもう一つ異様なのが、社会の反応、特に左派政党やフェミニストと呼ばれる人々の「薄い反応」です。

本来、「絶対的な権力格差(地検トップと部下)」「密室での性暴力」「組織的なもみ消しと二次加害」という要素が揃ったこの事件は、権力構造による女性への加害を糾弾する彼ら・彼女らにとって、最も怒りを露わにすべき事案のはずです。

過去に日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」は、この事件を取り上げ、「正義感はおろか倫理観のかけらもない」「組織的隠蔽だ」と検察を厳しく批判しています。

被害者に寄り添う検察官がいる一方、通り一遍で不起訴とする検事も少なくないとのべ、司法関係者が正しく事実認定しなければ、勇気を振り絞って声をあげた被害者をさらに傷つけ、性犯罪を許すことになると訴えました。捜査・司法関係者はこの重い訴えを正面から受け止めるべきです。

しんぶん赤旗 2024年11月9日(土)
『主張 検事正の性犯罪 勇気の訴え受け徹底検証せよ』より抜粋

しかし、その共産党自身はどうでしょうか?

2024年の党大会で、党首公選制を主張した党員への除名を問題視した大山奈々子・神奈川県議(現在は離党)に対し、田村智子委員長が「誠実さを欠く」と激しく糾弾。これに対し大山県議は「パワハラである」として第三者委員会による検証を求める意見書を提出しました。
しかし、田村委員長は「コメントしない」と一蹴しています(産経新聞)。

検察には「第三者委員会の設置と徹底した検証」を求めておきながら、自党内のハラスメント疑惑に対しては第三者の介入を拒み、黙殺する。これでは「身内に甘い」と批判されても仕方ありません。

そして、同様の構図はフェミニスト界隈にも見られます。

芸能人のスキャンダルやアニメの表現問題には組織的に猛抗議を行う一方で、相手が検察という国家権力であったり、あるいは自分たちの政治的スタンスと合致しない事案であったりすると、途端にトーンダウンする。

「女性の権利」や「反権力」を掲げながら、批判の矛先を相手によって都合よく使い分ける「ダブルスタンダード」が、ここにはっきりと表れています。

「誰も責任をとらない国」を変えるために

検察が第三者の目を拒み、身内による「やったふり調査」でやり過ごそうとしていること。

そして、それに声を上げるべき人々が、自らの陣営の都合で沈黙していること。

ひかりさんが「生き地獄」と表現した絶望の中で辞職せざるを得なかった背景には、加害者個人の罪だけでなく、こうした社会全体の「歪んだ庇い合い」と「無関心」があります。

「自分たちは間違っていない」と信じて疑わない独善的な人間や組織に、自浄作用は期待できません。

私たちは一貫して、検察の姑息な隠蔽工作を許さず、真の意味での「独立した第三者委員会」の設置を求め続ける必要があります。
そして同時に、相手の属性によって怒りを見せる・見せないを変える、偏った社会の目線にも疑問を投げかけていかなければなりません。

【参考・引用元】
・読売新聞:元検事正からの性被害訴えた女性検事が辞表提出…「訴えが無視され続け、戻る場所がなくなった」と涙
https://www.yomiuri.co.jp/national/20260430-GYT1T00200/
・FRaU:検察内の不祥事に、検察はコメントせず。大阪地検・元検事正の性暴力裁判に見る「司法の閉鎖性」
https://news.yahoo.co.jp/articles/f2e01e381b4de61a35033596218370dc027d6452
・読売新聞オンライン:大学と6つの医療系専門学校を運営する法人、第三者委が私学法違反を指摘
https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20260607-GYO1T00060/
・しんぶん赤旗:主張/検事正の性犯罪/勇気の訴え受け徹底検証せよ
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik24/2024-11-09/2024110902_01_0.html
・産経新聞:共産党神奈川県議、パワハラ検証求め意見書を送付 田村智子委員長に
https://www.sankei.com/article/20240608-PPWOW7ERZ5L6TO2VDUGPX6YXH4/

いいなと思ったら応援しよう!