U-NEXT視聴|『VIVANT』堺雅人と阿部寛、どちらも主役級。“主人公が二人いる”ようなドラマ
今さらながら『VIVANT』を視聴。
放送当時かなり話題になっていた作品なので存在はもちろん知っていましたが、実際に観てみると、「これ、主人公が二人いるようなドラマだな」
というのが最初の印象でした。
乃木憂助を演じる堺雅人。
野崎守を演じる阿部寛。
いや、この二人。
どちらも普通に主役級でしょう(笑)
しかも単純に「豪華俳優を二人並べました」というだけではなく、それぞれ別方向の主人公として物語を動かしているのが『VIVANT』の面白いところでした。
最初は「乃木が主人公」だと思って観ていた
物語の中心にいるのは、丸菱商事に勤務する乃木憂助。
序盤の乃木を見る限りでは、「堺雅人にしては、ずいぶん頼りない役だな……」という感じ。
巨額の誤送金事件に巻き込まれ、海外でとんでもない状況になっていく。
当然、視聴者としては乃木を中心に物語を見ることになります。
ところが話が進むにつれて、「あれ? この人、何かおかしくない?」となってくる。
頼りない商社マンにしては妙に機転が利く。
危機的状況への対応力も高い。
そして明らかになっていく乃木の正体。
ここから『VIVANT』という作品そのものの見え方が変わってきます。
序盤の乃木と、その後の乃木。
同じ堺雅人なのに、まるで別の主人公を見ているような感覚。
この変化が面白い。
でも野崎守も完全に主人公なんだよね
そしてもう一人。
公安の野崎守。
演じるのは阿部寛。
もう登場した瞬間から、「強い(笑)」
乃木とは真逆です。
頼りなく見える乃木に対して、野崎は最初から頼れる。
判断が早い。
行動力がある。
修羅場にも強い。
そして何より阿部寛の存在感がものすごい。
普通のドラマなら、「公安・野崎守」だけで一本作れそう。
事件を追い、乃木を疑い、少しずつ真相へ近づいていく。
野崎側から『VIVANT』を見ると、「謎の男・乃木憂助の正体を追う公安ドラマ」として成立しているんですよね。
ここが個人的にはかなり面白かった。
乃木視点と野崎視点で、ジャンルまで変わる
乃木を主人公として見る場合、「自分の正体と過去を巡る物語」になる。
一方、野崎を主人公として見る場合、「乃木という謎の人物を追いかける公安ドラマ」になる。
同じ出来事を追っているのに、立場が違う。
しかも視聴者自身も最初から乃木についてすべてを知っているわけではありません。
だから途中までは、むしろ野崎と同じ立場になる。
「乃木って何者なんだ?」
「本当に信用していいのか?」
「どこまで計算している?」
野崎が乃木を疑えば、こちらも疑う。
乃木が不可解な行動を取れば、こちらも理由を考える。
つまり、乃木は「物語を背負う主人公」で、野崎は「視聴者を物語へ連れていく主人公」。
そんな二重構造に見えました。
堺雅人vs阿部寛という贅沢
そして単純に役者が強い。
堺雅人が演じる乃木は、弱々しい表情から一転して冷静な顔を見せる。
一方の阿部寛演じる野崎は、最初から「この人についていけば何とかなる」感がすごい(笑)。
方向性が全然違うんですよね。
だから二人が同じ画面にいるだけでも面白い。
乃木は「何を考えているのか分からない怖さ」。
野崎は「何かあっても何とかしてくれそうな安心感」。
この対比がかなり好きでした。
そして役所広司まで出てくる
ただでさえ、堺雅人。阿部寛。
この二人で十分すぎるほど強い。
そこへ後半、ノゴーン・ベキを演じる役所広司まで本格的に物語へ入ってきます。
もう、「誰が主役なんだよ(笑)」となる。
でも不思議なのは、これだけ主役級の俳優を並べても、それぞれが食い合っている感じがあまりしないこと。
乃木には乃木の物語がある。
野崎には野崎の役割がある。
そしてベキにも背負っているものがある。
豪華キャストという言葉だけでは片付けにくい。
それぞれが自分のドラマを一本ずつ背負っているような重量感があります。
「主役級だらけ」なのに成立しているのが面白い
豪華キャストの作品って、場合によっては、「とにかく有名俳優を集めました!」で終わってしまうこともあります。
でも『VIVANT』は少し違いました。
個人的に特に面白かったのが、乃木と野崎のどちらを主人公として見ても成立すること。
乃木を中心にすれば、乃木憂助という人間の正体と過去を巡る物語。
野崎を中心にすれば、巨大な陰謀と謎の男を追う公安ドラマ。
そして後半にはベキを中心とした別の物語まで見えてくる。
一本のドラマなのに、視点を変えると違う作品のように感じられる。
まとめ|『VIVANT』は「主人公が二人いる」感覚が面白かった
『VIVANT』を観て改めて思ったのは、堺雅人と阿部寛、どちらも主役級。
……まあ実際、主役級なんですが(笑)。
ただ、それ以上に面白かったのが、それぞれにちゃんと「主人公としての役割」が与えられていることでした。
乃木憂助は、物語の中心にいる主人公。
野崎守は、その謎を追いかけるもう一人の主人公。
そして視聴者は野崎と一緒に乃木を疑いながら、少しずつ乃木側の物語へ引き込まれていく。
「乃木の物語」を観ていたはずなのに、いつの間にか「野崎の捜査」も追いかけている。
この二重構造が『VIVANT』の魅力の一つだったと思います。
そして役所広司まで本格参戦してくる後半。
主役級が一人増えました(笑)。
これだけ重量級のキャストを揃えながら、それぞれに違う役割を持たせて一本の作品として成立させている。
放送当時に大きな話題になったのも、実際に観てみると納得でした。
乃木を主人公として観るか。
野崎を主人公として観るか。
二周目に視点を変えて観ると、また違った『VIVANT』が見えてきそうです。
そもそも『VIVANT』ってどういう意味?
「VIVANT」はフランス語で、「生きている」「生者」といった意味を持つ言葉。
ところが劇中では、この謎めいた言葉が「別班」へとつながっていく。
ちなみに**「VIVANT=別班」というのはフランス語の翻訳ではありません**
最初はタイトルの意味すら分からない。
乃木憂助とは何者なのか。
VIVANTとは何なのか。
別班とは何なのか。
タイトルそのものが、序盤の大きな謎になっている。
そして最後まで観てから改めて「生きている/生き抜く」という本来の意味を考えると、乃木やベキたちの生き方とも重なって見えるのが面白いところです。
『VIVANT』あらすじ深掘り|誤送金事件から始まる、国家・家族・正義の物語
『VIVANT』の物語は、一見すると「商社の巨額誤送金事件」から始まる。
丸菱商事に勤務する乃木憂助(堺雅人)は、中央アジアのバルカ共和国で進めていた太陽エネルギープラント事業において、本来1,000万ドルを送金するはずだったところ、誤って1億ドルが送金されてしまう事件に巻き込まれる。
その差額は9,000万ドル。
会社から関与を疑われた乃木は、自らの潔白を証明し、失われた金を取り戻すためバルカ共和国へ向かう。
ここだけを見ると、
「海外を舞台にした企業犯罪ドラマ」
という印象なのだが、『VIVANT』はここから一気に別の顔を見せ始める。
▼すべての始まりは「1億ドルの誤送金」
乃木は送金先であるGFL社の社長アリ・カーンに返金を求めるが、金はすでに別の場所へ流れていた。
CIAに所属する友人サムから情報を得た乃木は、金がテロリストのアル=ザイールによってダイヤモンドへ換えられたことを知る。
ザイールを追ってバルカ国内を移動する乃木。
しかし途中で砂漠に置き去りにされ、生死の境をさまようことになる。
乃木を救ったのが、現地に暮らすアディエルと、その娘ジャミーンだった。
ここまではかなり王道の海外冒険ドラマ。
ところがザイールと対面した瞬間、作品の方向性を大きく変える言葉が飛び出す。
「お前がVIVANTか?」
乃木自身にも意味の分からない謎の言葉。
そしてザイールは自爆する。
この事件で乃木を救出したのが、警視庁公安部の野崎守(阿部寛)だった。
▼乃木と野崎――ここから“二人の主人公”が動き始める
爆破事件に巻き込まれた乃木は、野崎、そして医師・柚木薫(二階堂ふみ)と行動を共にすることになる。
バルカ警察から追われながら、日本大使館への逃亡を図る一行。
この辺りの『VIVANT』は、
海外逃亡劇
公安ドラマ
アクション
サスペンス
が混ざった作品になっている。
そして野崎は、ザイールが残した「VIVANT」という言葉について考え始める。
そこから浮かび上がったのが、「別班」という存在だった。
日本政府が公式には存在を認めていない、自衛隊の秘密諜報部隊。
国際テロや国家安全保障に関わる事件を水面下で処理する、いわば日本版の秘密工作組織である。
つまり「VIVANT」という謎の言葉は、この物語において別班へとつながるキーワードだった。
▼日本へ戻っても、事件は終わらない
乃木たちは何とか日本へ帰国する。
ここでようやく誤送金事件の犯人探しが本格化する。
乃木と野崎は、サイバー犯罪対策課の東条翔太や丸菱商事の関係者と協力し、送金プログラムが改ざんされていたことを突き止める。
犯人として浮上したのが、丸菱商事の太田梨歩。
しかし太田も単なる犯罪者ではなかった。
その正体は、天才ハッカー「ブルーウォーカー」。
しかも彼女は自分の意思で事件を起こしたのではなく、何者かに利用されていた。
さらに調査を進めると、乃木の同期である山本巧が、国際テロ組織「テント」の潜伏工作員――モニターであることが判明する。
ここで物語は、
誤送金事件 ⇒ 企業内部の犯罪 ⇒ テロ組織の工作へと拡大していく。
▼そして判明する、乃木憂助の正体
山本を追う途中、乃木の姿が大きく変わる。
それまでの乃木は、気弱で、少し頼りなく、会社では出世レースから脱落したような商社マン。
ところが、その姿はすべて表向きの顔だった。
乃木憂助の本当の正体は、別班の工作員。
しかも非常に高い能力を持つエリートだった。
山本を捕らえた乃木は、自白剤を使ってテントの情報を聞き出し、その後、山本を自殺に見せかけて粛清する。
ここで、それまで視聴者が見ていた乃木像が一気に崩れる。
「頼りない商社マン」ではない。
むしろ、最初から一番危険な人物だった。
これが『VIVANT』序盤最大級のどんでん返しになっている。
▼野崎は乃木を疑い始める
当然、公安の野崎も乃木の異常さに気付いていく。
山本の死。
防犯カメラの異常。
乃木の過去。
異常な身体能力や判断力。
野崎は乃木の経歴を徹底的に調べ始める。
そこで判明するのが、乃木の壮絶な過去だった。
乃木は幼少期、バルカ共和国で両親と暮らしていた。
しかし1984年の内乱によって家族と離れ離れになる。
その後、人身売買組織に捕まり、頭を打って記憶を失う。
戦場ジャーナリストによって日本へ連れ帰られ、児童養護施設で育つことになる。
さらに調査を進めると、乃木の父・乃木卓が、元公安部外事1課の捜査官だったという事実まで明らかになる。
▼「テント」のリーダーは、乃木の父だった
一方の乃木も、テントの幹部アリを捕らえ、組織の情報を引き出していく。
その結果、乃木は衝撃的な事実へ辿り着く。
国際テロ組織「テント」の創設者。
その名は、ノゴーン・ベキ。
そしてベキの正体こそ、乃木憂助の父・乃木卓だった。
ここで『VIVANT』は、もう単なるテロ組織との戦いではなくなる。
乃木にとってテントを追うことは、国家の敵を追う任務であると同時に、40年前に失った父を追う旅になってしまう。
▼「父を取るか、日本を取るか」
別班の任務としてテントを追う乃木。
しかしその敵の頂点にいるのは、自分の父親。
乃木は重大な選択を迫られる。
家族として父を受け入れるのか。
それとも、日本を守る別班として父を排除するのか。
ここから『VIVANT』最大のテーマである、
「家族と国家、どちらを選ぶのか」という問題が浮かび上がる。
乃木自身は、日本を「家族」だと考えて別班に入った人物でもある。
つまり乃木にとっては、
「父親」も家族。
「日本」も家族。
どちらも簡単には捨てられない。
この構造が『VIVANT』を単純な勧善懲悪ドラマではなくしている。
▼乃木は別班を裏切ったのか?
テント幹部・ノコルと接触する作戦で、乃木は突如、仲間の別班員たちを銃撃する。
そして自ら、「自分はベキの息子だ」と告白する。
視聴者から見れば、「乃木、本当に裏切った?」となる場面。
乃木はそのままテントへ連行され、ついに40年ぶりに父ベキと再会する。
さらにベキから、仲間である黒須を殺せと命じられる。
ここでは乃木の真意がほとんど分からない。
父に会いたいだけなのか。
本当に別班を裏切ったのか。
それとも別の狙いがあるのか。
『VIVANT』は、この「味方なのか敵なのか分からない」状態を何度も作り出してくる。
▼テントは、本当に「悪」なのか?
乃木がテント内部へ入ったことで、さらに大きな事実が判明する。
テントは確かに、テロや犯罪を請け負って資金を稼いでいた。
しかし、その利益の一部は、孤児院の運営に使われていた。
ベキ自身も、バルカの内乱で多くの孤児を目の当たりにし、彼らを救うために組織を拡大していた。
もちろん、だからテロが正当化されるわけではない。
「テント=純粋な悪のテロ組織」という序盤のイメージが崩れていく。
そしてテントが最終的に目指していたのは、日本へのテロ攻撃ではなく、バルカで発見された巨大なフローライト鉱脈を利用して安定した資金源を作り、犯罪から脱却することだった。
▼乃木の“裏切り”もすべて作戦だった
さらに判明する。
乃木が銃撃した別班員たちは、実は全員生きていた。
乃木は致命傷にならない場所を狙って撃っていた。
つまり、別班を裏切ったふりをして、テント内部へ潜入した二重スパイ作戦だった。
乃木は野崎にも密かにサインを送り、負傷した別班員の救助を託していた。
敵を騙すために味方まで騙す。
この辺りから、
乃木
別班
公安
テント
バルカ政府
それぞれが別の思惑で動き、騙し合う構図になっていく。
▼最後に残ったのは「父と息子」
テントの目的だったフローライト事業は、乃木や野崎、ノコルたちの協力によって進展する。
そしてベキはテントを解体。
公安へ投降する。
これで事件は終わる――。
……と思わせて、まだ終わらない。
ベキには、40年間抱え続けてきたもう一つの目的があった。
それが、自分と家族をバルカに置き去りにした元公安上司・上原への復讐。
ベキは日本で拘束された後、テントのモニターだった公安の新庄の手引きによって逃亡。
上原の自宅を襲撃する。
そこへ現れる乃木。
最後に乃木は、日本を守るため、自分の父親へ銃を向ける。
ベキは息子・乃木に撃たれながら、「お前は私の誇りだ」と言い残す。
ここで『VIVANT』第1シーズンの大きな物語は幕を閉じる。
『VIVANT』は結局、何の物語だったのか
序盤だけを見ると、「1億ドルを取り戻すドラマ」だった。
そこから、
企業犯罪
↓
国際テロ
↓
公安
↓
別班
↓
テント
↓
乃木の出生
↓
父との再会
と、物語がどんどん変化していく。
しかし最後まで観ると、中心にあったのは意外とシンプルだった。
それは、「家族とは何なのか」という話だったのだと思う。
乃木にとって日本は家族。
ベキにとって乃木は、40年間探し続けた息子。
ノコルにとってベキは、血はつながっていなくても父。
そしてテントは、行き場のない孤児たちを救うために生まれた組織でもあった。
国家。
血縁。
仲間。
育ての親。
それぞれが違う「家族」を抱えている。
『VIVANT』では何が正義で、何が悪なのかが簡単には決められない。
乃木も人を殺す。
テントも犯罪を行う。
公安も法の外側ギリギリの行動を取る。
それでも、それぞれには守ろうとしているものがある。
そこが『VIVANT』の面白さなのだと思う。
最初は、「誤送金された1億ドルはどこへ行った?」
だった話が、最後には、「乃木は父親と日本、どちらを選ぶのか?」になっている。
このスケールの変化。
それこそが『VIVANT』という作品の一番の特徴なのかもしれない。
そして、第2シーズンへ――
『VIVANT』を最後まで観て思うのは、やっぱり、この続きを観たい。
第1シーズンは、1億ドルの誤送金という企業トラブルから始まり、公安、別班、テント、そして乃木とベキの親子の物語へ。
最初に想像していたものとは、まったく違うところまで連れていかれました。
そして最終回。
一連の事件が終わり、ようやく乃木にも日常が戻ってくるのかと思わせておいて――
別班としての物語は、まだ終わっていない。
この終わり方なら、当然期待してしまいます。
第1シーズンでは「乃木憂助とは何者なのか?」という謎そのものが、物語を引っ張る大きな要素でした。
でも次は違う。
こちらはもう、乃木の正体を知っています。
気弱そうな商社マンの裏側にいる、別班・乃木憂助を知っている。
だからこそ次は、「乃木は何者なのか?」ではなく、
「乃木は次に何と戦うのか?」
そこを楽しみにしたい。
そして個人的には、やっぱり野崎守。
乃木を演じる堺雅人と、野崎を演じる阿部寛。
第1シーズンを観て感じた、「どっちも主役級じゃないか(笑)」
という二人が、次はどんな関係で物語を動かしていくのかも楽しみです。
さらにノコルや黒須、薫たちがどう関わってくるのか。
そして、まだ何か隠されているんじゃないか――。
『VIVANT』なら、素直に続きを見せてくれるとも思えません(笑)。
第1シーズンでこれだけ何度も予想をひっくり返された以上、第2シーズンにも期待したいところ。
敵か味方か。味方か敵か。
次は誰を疑うことになるのか。
第2シーズン、楽しみに待ちたいと思います。
