いつものコーヒースティックが時間のめもり
毎朝、スマホのアラームとスヌーズとの戦いから一日が始まる。
「今、何時なんだ?」
ようやく布団から抜け出して、出かける準備をする。
カーテンを開けると、日差しが眩しい。少し前まではもっと高いところにあったはずの太陽が、今は窓からまっすぐに差し込んでくる。
日の高さが少しずつ変わり、夏の終わりを自分の身体にゆっくりと染み込ませていくような感覚になる。
いやいや、そんな情緒に浸っている暇はない。
テレビをつけ、目でカレンダーをみて日付を確認、そして、コーヒーを飲む。
お気に入りは、砂糖とミルクが入った、スティックタイプのカフェオレ。出勤前の憂鬱な気持ちだけでも緩めたい。
そのコーヒースティックを、私は可愛らしい輸入ジャムの空き瓶に7、8本ずつ入れている。箱のまま置いておくより、ちょっとだけ気分がいい。他の人から見ればダサいのかもしれないけれど、今の私には、この瓶がちょうどいい。
ある朝、瓶の中を覗くと、スティックがあと2本しかないことに気づく。
「あれ、もう一日分しかない」
そこで、ふと思う。
「あれ? 補充したの、この間じゃなかったっけ?」
いつ補充したのかは覚えていない。一週間前だったのか、十日前だったのか。感覚としては「ついこの間」。
減っていくのは当たり前なのに、目に見えて減ったスティックを見た瞬間、
「え、もうこんなに経ったの?」
と感じる。
時間の経過を実感させるものが、我が家にはもうひとつある。
スーパーで買う、3パックや4パックセットの半切りベーコンだ。賞味期限も長めなので、冷蔵庫のレギュラー商品である。
ところが、忙しい日々の中で食べるのは、たいてい日曜日の朝くらい。一週間に一度しか使わなければ、使い切るまでにそれなりの日数がかかる。
そして、ある日、冷蔵庫から取り出して賞味期限を見る。
「え? これ、いつ買ったんだっけ?」
「ああ……もう、こんなに経ったんだ」
となる。
毎朝、時計やカレンダーで確認する数字は、右から左へ通り過ぎていく。けれど、コーヒースティックやベーコンは、私に「過ごしてきた時間」をずっしりと実感させるのだ。
コーヒースティックが「日々の時間」なら、ベーコンは「もう少し長い時間」を突きつけてくる。
ただのコーヒースティックなのに。
ただのベーコンなのに。
そう考えると、時間というのは、時計だけで測るものではないのかもしれない。
昔の人も、夜になればロウソクに火を灯し、だんだんと短くなっていくその姿を見ながら、夜の長さを感じていたのだろう。
時計は「何時か」を数字で教えてくれる。
でも、ロウソクは「どれだけ過ぎたか」を、その姿で見せてくれる。
いわば、私の勝手な「ロウソク理論」だ。
コーヒースティックの減り具合やベーコンの賞味期限に時間の経過を感じるのも、案外これと同じなのかもしれない。
きっと誰にだって、時計では測れない自分だけの時間の「めもり」があるはずだ。
そして、その「めもり」は過ぎた時間だけではなく、そのときの感情まで呼び起こす。
洗濯物が乾くまでの時間だったり、靴底が少しずつすり減っていくことだったり。
そして、その経過が、喜びなのか、後悔なのかも人それぞれ。
明日の朝も私は、ジャムの空き瓶からコーヒースティックを一本取り出し、お湯を注ぐ。
そしてまた、新しい一日が始まる。
……とはいえ。
8月のカレンダーをめくって9月になった瞬間、
「ああ、もう秋か」
と一番深く実感してしまうのも、結局はカレンダーだったりするのだろう。
8月の私を褒められるといいのだが。
時間の可視化というのだろうか。
なかなかややこしい。
☆☆☆
今回の記事は、いつもお互いにスキやコメントをやりとりさせていただいているR&Rさんからのご紹介で「#エッセイしりとり(2026夏の陣)」のバトン企画に参加して書いたものです。
私に、バトンをつないでくださったR&Rさんのグッドなお題記事はこちらです。
家事、仕事、子育て&チワワのお世話にも奮闘中。多忙な毎日の葛藤を、前向きにユニークにつぶやく、エッセイが魅力。短歌なども歌うなど多彩です。
最近、R&Rさんの短歌の記事から、ちょっとしたコメントのやりとりもありまして、親しいnote仲間ができたと喜んでいたところ、バトンまでいただきました。ありがとうございます。
こういった企画は初めてですが、私なりの日常の切り取りに「我思う」を書かせていただきました。
☆☆☆☆
今回は、私がバトンを渡す番です。いつも、愛読させていただいているお二人をご紹介します。
いきなりのご紹介ですみません。もしよかったらご参加ください。
お題は、私のタイトルの最後の文字、「り」で始まるエッセイ。
お一人目 よしひろさん
日常の出来事や趣味、家族との時間、そこから生まれるいろんな気づき。そして、noteのこと。難しい言葉を使わず、わかりやすい文章を書かれています。
私の中では、「新・プリスト」な方という印象です。
新しいプリンではありません(笑)。シンプルだけど、ちゃんと味わいがある。それが魅力です。
有料記事もありますが、無料記事でも十分楽しませてもらっています。
お二人目 にわにんさん
独特の「間」と、情緒的なエッセイが魅力のにわにんさん。
私の中では、「ロマン・知・スト」な方という印象です。
そして、読むとなんだか癒される。まるでホイミの呪文書のようなエッセイです。ぜひ声に出して唱えてみてください。
こちらも有料記事がありますが、無料記事でも十分楽しませてもらっています。
ということで、私の勝手にnoteの先生的な存在のお二人にバトンをお渡しします。突然のノックに驚かれたことと思いますが、気が向いたら、ぜひご参加ください。あらためまして、
私のバトン、「り」から始まるエッセイをよろしくお願いいたします。
もちろん、このリレーとは関係なく、お二人の新作もいつも楽しみにお待ちしています。
☆☆☆☆☆
なお、「#エッセイしりとり(2026夏の陣)」のざっくりとしたルールは、
・文字数は140文字〜3000文字くらい
・ハッシュタグに「#エッセイしりとり」をつける
・締め切りは8月31日23時59分まで
とのこと。
詳細なルールや企画については、R&Rさんの記事、そして「#エッセイしりとり」コンテスト2026夏の陣のメインページをご確認ください。
素敵な企画を提供してくださったマイキーさんにも感謝です。
