2026年3月8日 中山芝2000m『弥生賞』と「渡る世間に一休さん」
明日は弥生賞。
正式には「弥生賞ディープインパクト記念」になったけど、弥生賞はいつまでたっても「弥生賞」。春の始まりを感じるレース。
ああ、今年もクラシック・シーズンが始まるなあ……パドックでついニコニコしてしまうレース。
将来有望、待ってました! と心の声をかける馬もいれば、おおーギリギリ間に合ったねえ……肩を叩きたくなる馬もいる。「いよいよ」のレース。
例年なら、心晴れ晴れ、背筋もピーンと伸びて待ち構えるレースなんだけど……ここのところ、世間にいろいろなことがあって、気持ちがモヤモヤややこしい。
馴染みの出版社、「不祥事」のひと言では済まないくらいの不祥事が明るみになって。漫画家でも編集者でもない自分でも、心の行き所をウロウロ探してしまう。
いきなりアメリカとイスラエルがイランに爆撃、戦争を始めて。どうなっちゃうんだ世界、どうなっちゃうんだ未来、どうなっちゃうんだ人類……不安で睡眠も浅くなっている。
日本政府は日本政府で、殺傷能力のある武器輸出容認に動き出す。東洋のイスラエルでも目指しているのか。戦争の火種を産み出そうとしているのか。いったいどこにゴールを設定しているのか。ゾワゾワする胸。
こんな中で、のん気に競馬やったり、漫画の中身を楽しく考えてたり、バカバカしい言葉を綴ったりしていていいのか? なんかのためになるんか? のん気すぎるんじゃないか? おなかの辺りを「ケナガカミツキカメムシ」(昔っから夢に出てくる怖い虫)が這い回っている。
まあそれでもやっぱり、漫画の中身は考えるし、読んでくれる人の愉快そうな顔を想像するし、ドキドキしている表情も考えるし、競走馬が走っている姿を思い浮かべるし、牧場で産まれた仔馬の画像にホヨヨンともするし、そんな感じでふんばる日々。
今日は、次男の卒業式にも行ってきた。高校卒業。
ありがたいことに、次男は友達を家に泊めたがるタイプで。
おかげで、俺も何人かと顔見知りになって、いろいろ話もできた。
友達のうちの一人のお母さんからは、お礼にと手ぬぐいもらったりして。
楽しい三年間だった。みんなおめでとう。
卒業式を見た後、彼らの顔を思い出しながら、駅前のお菓子屋さんで買ったソフトクリームを食べてて。お店の前。
そしたら、車付きのでっかいカゴみたいな集団乳母車に、小さな子供を三人載せてきたお母さんがいて。双子とその妹だろうか。それにプラス、一つ上くらいの男の子もストライダーに跨って、カゴ集団についてきていて。
お母さん、お菓子屋さんに入ろうとするんだけど入れない。小さな店なんだけど、店内で行列している。子供全員連れて入るのは難しい。
行列が少し空いたら入ろうと様子を見てるんだけど、空かない。
別のお菓子でもいいか……という感じで、ちょっと離れたところに出てるワゴンのお店も見に行って、でもやっぱりこっちのお菓子屋さんのほうがいいと戻って来た。
もう一度店内をのぞく。でも、また新しいお客が列に加わる。やっぱり入るタイミングがつかめない。
ソフトクリームを食べ終わった俺は、家に帰ろうと駅に入った。
改札をくぐって、ちょうど電車が来た。
乗ったところで、しまったと思った。
お母さんに声をかけて、買いたいお菓子を聞いて、お母さんの代わりに行列に並んで、注文して、お会計の瞬間バトンタッチして、お母さんにお菓子を購入してもらえば済むことだったのだ。
なんて気が利かないバカなんだろう。すごく反省した。なってないにもほどがある。ぼーっと生きてんじゃねえぞ。チコちゃんに叱られたい。
おなかの中でモゾモゾ動く「ケナガカミツキカメムシ」を感じながら、モヤモヤを消せないかなと明日の弥生賞を想う。
「弥生」と言えば、ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』の長女・弥生を思い出す。演じるのは長山藍子さん。
夫の良(前田吟さん)や娘息子の面倒をみて、専業主婦として暮らしていたが、看護師資格を活かしたいと勤めに出る。
夫や子供たちにひどく反対されながらも、人のために何かしたいとがんばる。
あの「弥生」だったら、お菓子屋さんの前に来たお母さんと4人の子供を見て、躊躇する間もなく、「もしよければ代わりに注文してきましょうか?」そう言っただろう。
「弥生」と言えばもう一人。アニメ『一休さん』の弥生さん。桔梗屋さんの娘さん。
いつも一休さんをやりこめようと、意地悪なことばかり言ってくるけど、実は気のいいお嬢さん。
あの「弥生さん」ならば、お菓子屋さんに入ろうとして入れないお母さんたちを見たら、どうするだろうか。
きっと、「どうしよう、どうしよう、どうしよう」と金切り声で三回くらい繰り返した後、お店の中に入って、「外にお客さんがいるから注文を聞いてあげて!」とお店の人を強引に連れて出てくるだろう。
なぜそんな簡単なことができなかったのか。
今度、そういう時は、長山藍子さんの「弥生」でもいいし、桔梗屋の娘の「弥生さん」でもいいから、普通に動けるようになりたいと思う。
なので、弥生賞は、5番タイダルロックの馬券を買う。
タイダルロックは前走の京成杯で、動くに動けなかった。
たぶん動こうと思ったのだが、その一歩が出ずに、脚を余して4着だった。
だから、今回は出すべき時に一歩を出そうと思っているはずだ。
単勝5番、自分のために買おうと思う。
帰り道、『渡る世間』の弥生でも『一休さん』の弥生さんでも動けそうになかったら、桃井かおりさんになろうと思った。
「なによもう、困ってんだったら、言ってくれればいいじゃない。
お店に入って、お菓子頼んできてって。
遠慮? そういうの嫌いだなあ、わたし。
ほら、ごちゃごちゃ言わないで、とっとと頼む。
えっ? わたし怖い?
わたしじゃ嫌なら、ほらあそこ歩いてる高校生いるから。
学ランの学生。
ああいう男の子っていうのは、なんか頼まれるの待ってるのよ。
そうやってオトナの男になるんだから」
※タイトルの写真は、
卒業式をやってた体育館の
アナウンス室みたいなところ。
ちょっと出てる屋根の上に、
バトミントンの羽根が
たくさん載ってました。
