ベーシックサービスを語るなら、まず財源を語れ
ベーシックサービスという言葉は、美しい。
医療、教育、介護、住居、公共交通。
誰も反対しない。
だが、反対されない言葉ほど危うい。
理由は単純だ。
支出の性格が語られていない。
ベーシックサービスは恒常支出である
医療は毎年必要だ。
教育も止められない。
介護は年々増える。
景気が悪い年でも、
相場が崩れた年でも、
支出は消えない。
ベーシックサービスとは、
毎年必ず発生する恒常支出である。
この一点を外した議論は成立しない。
ジャパンファンドは恒常財源にならない
一部で語られるのが、
政府系ファンド、いわゆるジャパンファンドを
ベーシックサービスの財源にするという発想だ。
だが、運用益は不安定だ。
出る年もある。
出ない年もある。
マイナスの年もある。
これは金融の常識であり、
否定できない事実だ。
不安定な収益は、恒常支出を支えられない。
問題は「悪い年」に起きる
想定すべきは好況ではない。
不況だ。
市場下落だ。
運用益が想定を割る年だ。
その年も、
医療は必要だ。
教育は続く。
介護は止まらない。
では、不足分はどうするのか。
・一般財源で穴埋めするのか
・国債を発行するのか
・サービス水準を下げるのか
この問いに答えない構想は、構想ではない。
切られるのは、現場である
運用益が減っても、
制度は簡単に止められない。
結果どうなるか。
現場が削られる。
人手が減る。
質が下がる。
これは理論ではない。
これまで何度も起きた現実だ。
成長戦略という言葉を使うなら
ベーシックサービスが成長を促すのは、
選択と集中が機能した場合だけだ。
無差別に
「皆に同じ最低限」を配る。
成果を問わない。
効率を問わない。
これは成長ではない。
構造として近いのは、
皆で平等に、
低成長を受け入れる社会
である。
安全網が配給に変わる瞬間
本来、ベーシックサービスは
人を底上げし、
次の挑戦につなげるための基盤だ。
だが、
不安定な財源
固定された水準
成長との断絶
この設計では、
生活維持の配給制度になる。
最低限は守る。
それ以上は生まれない。
順番が逆だ
語るべき順番は決まっている。
恒常財源は何か
税か、保険か、一般会計か
不況時の補填方法は何か
この議論を飛ばし、
運用益に期待する。
それは設計ではない。
願望だ。
結論
ベーシックサービスは、
理念で回る制度ではない。
財源がすべてだ。
ジャパンファンドの運用益は、
補助的には使えても、
主財源にはなり得ない。
それを主軸に据える構想は、
不安定さを社会に組み込む。
ベーシックサービスを語るなら、
まず財源を語れ。
次に、失敗した年の話を語れ。
それができない構想は、
優しさではない。
無責任だ。
